金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2013年01月22日

フィブリノゲン(Fbg)とは

フィブリノゲン(Fbg)


【基準値】

200〜400mg/dL

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【測定法】
クエン酸ナトリウム入りの凝固専用採血管から得た血漿検体に対して、トロンビンを添加して、フィブリン析出するまでの時間を測定し、フィブリノゲン濃度既知の検体による標準線からフィブリノゲン量を求めます(トロンビン時間法)。

フィブリン析出を検出する方法は、検査機器によって異なります。


【検査の意義】

血中フィブリノゲン濃度(通常のトロンビン時間法であれば活性を測定しています)を測定します。


【異常値となる疾患・病態】

高値:炎症反応時(感染症、膠原病、悪性腫瘍など)、妊娠、血栓症急性期など。

低値播種性血管内凝固症候群(DIC)、一次線溶亢進(線溶療法時、u-PA産生腫瘍など)、異常(・低・無)フィブリノゲン血症、肝不全(肝硬変、慢性感性など)、L-アスパラギナーゼ投与、巨大血栓症、大量出血など。


【異常値となる機序】
高値:肝での産生が亢進するためです。

低値:肝不全、L-アスパラギナーゼ投与は肝での産生低下によります。DIC、一次線溶亢進、巨大血栓症、大量出血は消費によります。

 
【注意点】
1)    新規経口抗凝固薬の一つであるダビガトラン(商品名:プラザキサ)内服中の患者でフィブリノゲンが著減と測定されることがあります。これは、ダビガトランの抗トロンビン効果に伴うartifactであす(プラザキサとフィブリノゲン)。DICと誤診してはいけないです。

2)    DICの中でも線溶亢進型DIC(APL、大動脈瘤、巨大血管腫、前立腺癌、血管関連腫瘍など)ではフィブリノゲンが低下しやすいですが、線溶抑制型DIC (敗血症など)ではフィブリノゲン低下は稀です。フィブリノゲン低下がないからと言って、DICを否定できません。


【検査プラン】

1)    炎症反応の有無をチェックする目的に、CRPとともに赤沈値が頻用されています。

赤沈亢進は、1)ヘマトクリット低下、2)γグロブリン上昇、3)フィブリ ノゲン上昇(3所見ともに炎症時にみられます)を総合的に反映しています。赤沈亢進の一因としてフィブリノゲン上昇を知っておきたいところです。

2)    患者の重篤化にもかかわらず赤沈が遅延した場合、DICを疑うべきと言われた歴史があります。DICではフィブリノゲンが低下するためです(現在は直接フィブリノゲンを測定するためこのような赤沈の利用はしていません)。

3)    フィブリノゲン低下でDICを疑った場合は、FDPDダイマーTATPIC、α2PI、可溶性フィブリン(SF)などで診断を確定します。


【備考】

凝固線溶関連疾患で「異常」の用語が登場する疾患がいくつかありますが、タンパク量(抗原量)は正常であるにもかかわらず、アミノ酸配列に問題があるため活性が低下している疾患・病態を意味しています。

異常フィブリノゲン血症は、トロンビン時間法(通常はこの方法を用いています)によるフィブリノゲン値は低値ですが、抗原量を測定すると正常です(血栓止血エキスパートにコンサルトするのが良いです)(先天性凝固因子異常症1先天性凝固因子異常症2)。



 <リンク>

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:54| 凝固検査