血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)とリツキシマブ
論文紹介です。
参考:血友病、後天性血友病、rFVIIa、血栓止血の臨床(日本血栓止血学会HPへ)
「リツキシマブが奏効した標準治療抵抗性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の1例-リツキシマブ投与のタイミングについての考察 」
著者名:吉井由美、他。
雑誌名:日本内科学会雑誌 102: 147-149, 2013.
<論文の要旨>
症例は36歳、女性です。
著者らはリツキシマブ投与にて寛解に至った標準療法抵抗性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の1例を経験しました。
血漿交換開始後に抗ADAMTS13抗体およびLDの再上昇を認めた時点で難治性と判断し、リツキマブを投与しました。
その結果、第30病日に血漿交換を離脱でき、約18ヶ月にわたり寛解を維持しています。
標準療法抵抗性TTPにおいて血漿交換開始後の抗ADAMTS13抗体価およびLDの上昇が難治性の判断に有用であると考えられました。
TTPの成因はVWFの特異的切断酵素であるADAMTS13の活性低下(多くは抗体の産生による)で、超高分子量VWF多重体(UL-VWFM)がADAMTS13の欠損により切断されないことで血小板血栓を産生します。
標準療法はステロイド投与および血漿交換です。
血漿交換の目的は、以下などです。
1)ADAMTS13抗体の除去
2)ADAMTS13の補充
3)UL-VWFMの除去
4)止血に必要なサイズのVWFの補充
5)炎症性高サイトカイン血症の是正
しかし本例のように血漿交換に抵抗性示す症例が存在し、その原因の一つは過剰な抗体産生下で、血漿中に含まれるADAMTS13により抗体がboostされる(inhibitor boosting)ためと考えられています。
このような症例には血漿交換に加え、抗体を産生するB細胞を直接攻撃するリツキシマブの投与が有効であるとの報告が散見されます。
本例でもリツキシマブの投与後、速やかにLDの低下、意識状態、血小板数の改善を認め、それと同時にADAMTS13抗体価の減少、活性の上昇を認め寛解となりました。
わが国においてリツキシマブはTTPに保険適用がなく、全例に初期から投与するのは現実的ではありません。
そこで本症例のような難治例を見極め、遅滞なく投与することが重要となります。
その判断において、血漿交換開始後のADAMTS13抗体の再上昇が有用であると考えられました。
今回の症例では同時にLDも急上昇を認めており、より日常臨床に即したマーカーとしてLDも有用である可能性が示唆されました。
<リンク>
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参考:血栓止血の臨床(日本血栓止血学会HPへ)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:30| 出血性疾患