金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2013年03月28日

低プロトロンビン血症ループスアンチコアグラント

論文紹介です。

参考:血友病後天性血友病rFVIIa血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)


「低プロトロンビン血症ループスアンチコアグラント症候群の1例における抗ウサギIgG抗体および抗プロトロンビン抗体の検出

著者名:橋本祐樹、他。
雑誌名:日本検査血液学会雑誌 13: 332-337, 2012.


<論文の要旨>

症例は81歳男性、十二指腸出血で入院し、著明な血液凝固能低下を認めました。

ラテックス法によるPIVKA-IIの高値(32〜64μg/mL)および第II因子活性の低値(19%)のため、ビタミンKを投与したが改善しませんでした。

一方、ループスアンチコアグラント(LA)は陽性でCLEIA法による同一検体のPIVKA-IIは基準範囲でした。


ウサギIgGを固相化した直接吸着ELISA法による抗ウサギIgG抗体の検出を試みたところ、患者血清中にIgM型の抗ウサギIgG抗体が検出されました。

よって、ラテックス法によるPIVKA-IIのデータは偽高値である可能性が示唆されました。

さらに、第II因子の性状を二次元免疫電気泳動により解析した結果、第II因子は二峰性ピークを示し、異常ピークは抗IgG抗体で吸収されました。

このことからIgG型の抗プロトロンビン抗体の存在が示されました。


本症例はLAも認められたため、LAに併発した低プロトロンビン血症が出血傾向の一因と考えられ、ステロイド治療により血液凝固能は正常化しました。

本症例では免疫学的な非特異反応が考えられ、測定原理の異なる検査法で確認することが重要でした。




<リンク>

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
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参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:42| 出血性疾患