後天性抗第V因子インヒビター(3)病態
後天性抗第V因子インヒビター(2)発生機序、タココンブより続く。
後天性抗第V因子インヒビター(3)病態
<病態>
抗FVインヒビター保有患者の出血症状は、ウシトロンビンが誘因となった場合はほとんど無症候性ですが、約1/3が出血症状を認め6%で致死的となります。
Streiff MB, Ness PM: Acquired factor V inhibitors: a needless iatrogenic complication of bovine thrombin exposure. Transfusion 42: 18-26, 2002.
一方、それ以外の抗FVインヒビター発生例では7-8割が出血症状を示し、12-17%で致死的となります。
Franchini M, Lippi G: Acquired factor V inhibitors: a systematic review. J Thromb Thrombolysis 314:449-457, 2011.
Ang AL, Kuperan P, Ng CH, et al: Acquired factor V inhibitor. A problem-based systematic review. Thromb Haemost 101:852-859, 2009.
数か所の部位で同時に出血することもまれではありません。
初発出血症状は消化管・泌尿器系・呼吸器系などの粘膜出血が半数以上を占め、中でも血尿の頻度が高いです。
頭蓋内出血や後腹膜出血はまれですが、致死率が高いです。
術後にインヒビターが発生した患者では、術創からの出血が時に致死的となることがありますので、注意深く観察する必要があります。
また、後天性血友病Aと同様に関節内出血はまれです。
一方、興味深いことに血栓症状をきたすこともあり、活性化プロテインCによる活性化FVの不活化あるいはFVの抗凝固阻止作用を、インヒビターが選択的に阻害するためと考えられています。
Kalafatis M, Simioni P, Tormene D, et al: Isolation and characterization of an antifactor V antibody causing activated protein C resistance from a patient with severe thrombotic manifestations. Blood 99:3985-3992, 2002.
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:55| 出血性疾患