後天性抗第V因子インヒビター(4)診断、血液凝固検査
後天性抗第V因子インヒビター(3)病態より続く。
後天性抗第V因子インヒビター(4)診断、血液凝固検査
<診断> 血液検査所見
このような場合第X・V・II因子活性を測定し、FV活性の低下を認めた場合、次にPTならびにAPTTクロスミキシング試験(交差混合試験)を行います。
正常血漿の添加により、延長した凝固時間が短縮されれば先天性FV欠損症、短縮されなければ抗FVインヒビターの存在を考えます(参考:後天性血友病)。
FVIIIに対するインヒビターの反応は通常2時間の加温が必要ですが(遅延型)、抗FVインヒビターは15分以内でFVを不活化する即時型が多いです。
しかし、筆者らは遅延型の抗FVインヒビターを経験しており、実際には0時間と37℃2時間加温後の両方でクロスミキシング試験を実施することが望ましいです。
診断の確定は、抗FVインヒビターの検出であり、Bethesda法にて力価を測定します。
文献検索にて症例報告(ウシトロンビン起因性は除去)をまとめた総説によりますと、ピークインヒビター力価の中央値は19BU(0.5-1500 BU)、FV活性中央値は1%(1-20%)でした。
Franchini M, Lippi G: Acquired factor V inhibitors: a systematic review. J Thromb Thrombolysis 314:449-457, 2011.
インヒビター力価は、FV活性レベルや出血の重症度とは全く相関しませんでしたが、FV活性値は出血の重症度と相関しました。
このような結果はAngらの結果とも一致しています。
出血群のFV活性中央値が1%(0-23)に対して、非出血群では3%(0-20.8)(P=0.068)で、APTTも出血群で有意に延長していました(P=0.032)。
Ang AL, Kuperan P, Ng CH, et al: Acquired factor V inhibitor. A problem-based systematic review. Thromb Haemost 101:852-859, 2009.
したがって、診断時にFV活性が1%未満の患者に対しては出血症状の出現について慎重に経過観察する必要があります。
一方、インヒビター力価については、その強さよりもむしろ性状が出血の重症度と関連するといわれています。
インヒビターの血小板α顆粒中に含まれるFVに対する反応性の違いや、FV C2ドメイン上のエピトープに対する認識力の違いが、出血症状の程度の差となります。
Nesheim ME, Nichols WL, Cole TL, et al: Isolation and study of an acquired inhibitor of human coagulation factor V. J Clin Invest 77: 405-415, 1986.
(続く)後天性抗第V因子インヒビター(5)治療:止血治療へ
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
金沢大学血液内科・呼吸器内科HPへ
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログへ
研修医・入局者募集へ
参考:血栓止血の臨床(日本血栓止血学会HPへ)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:50| 出血性疾患