金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2013年05月03日

後天性抗第V因子インヒビター(5)治療:止血治療

後天性抗第V因子インヒビター(4)診断、血液凝固検査より続く。

後天性抗第V因子インヒビター(5)治療:止血治療


<治療
> 

後天性FVインヒビターの治療の原則は、出血のコントロールとインヒビターの除去です。


止血治療

通常、無症候性の場合は治療の必要はありません。

出血症例に対しては、新鮮凍結血漿(FFP)、血小板製剤(PC)、活性型プロトロンビン複合体製剤(APCC:ファイバR)、遺伝子組換え活性型凝固第VII因子製剤(rFVIIa、ノボセブンR)など、様々な製剤が止血治療に用いられています。

しかしながら、FFP中に含まれているFVは少量でインヒビターにより容易に不活化されてしまいますので、FFPの止血効果は期待できません。

PCは、少なくとも活性化して脱顆粒するまではα顆粒中のFVはインヒビターから保護されているため、臨床的に効果があると考えられます。

Kalafatis M, Simioni P, Tormene D, et al: Isolation and characterization of an antifactor V antibody causing activated protein C resistance from a patient with severe thrombotic manifestations. Blood 99:3985-3992, 2002.


PC輸注は約7割の症例で有効でしたが、全ての症例に効果があるわけではなく、またPC輸注量や輸注回数なども定まったものはありません。

Franchini M, Lippi G: Acquired factor V inhibitors: a systematic review. J Thromb Thrombolysis 314:449-457, 2011.

Ang AL, Kuperan P, Ng CH, et al: Acquired factor V inhibitor. A problem-based systematic review. Thromb Haemost 101:852-859, 2009.

近年はバイパス製剤としてrFVIIaが重症出血に使用されるようになってきており、良好な止血効果を得ています。

残念ながら、現時点では抗FVインヒビターの出血に対して確立した治療法はありません。

Angらは(エビデンスは全くありませんが)、第一選択としてPC輸注を行い、頻回のPC輸注でも出血がコントロールできない場合は第二選択としてrFVIIaを90 μg/kg投与することを薦めています。



(続く)後天性抗第V因子インヒビター(6)治療:免疫抑制療法


<リンク>
血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集

参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:32| 出血性疾患