後天性抗第V因子インヒビター(5)治療:止血治療
後天性抗第V因子インヒビター(4)診断、血液凝固検査より続く。
後天性抗第V因子インヒビター(5)治療:止血治療
<治療>
後天性FVインヒビターの治療の原則は、出血のコントロールとインヒビターの除去です。
止血治療
通常、無症候性の場合は治療の必要はありません。
出血症例に対しては、新鮮凍結血漿(FFP)、血小板製剤(PC)、活性型プロトロンビン複合体製剤(APCC:ファイバR)、遺伝子組換え活性型凝固第VII因子製剤(rFVIIa、ノボセブンR)など、様々な製剤が止血治療に用いられています。
しかしながら、FFP中に含まれているFVは少量でインヒビターにより容易に不活化されてしまいますので、FFPの止血効果は期待できません。
PCは、少なくとも活性化して脱顆粒するまではα顆粒中のFVはインヒビターから保護されているため、臨床的に効果があると考えられます。
Kalafatis M, Simioni P, Tormene D, et al: Isolation and characterization of an antifactor V antibody causing activated protein C resistance from a patient with severe thrombotic manifestations. Blood 99:3985-3992, 2002.
PC輸注は約7割の症例で有効でしたが、全ての症例に効果があるわけではなく、またPC輸注量や輸注回数なども定まったものはありません。
Franchini M, Lippi G: Acquired factor V inhibitors: a systematic review. J Thromb Thrombolysis 314:449-457, 2011.
Ang AL, Kuperan P, Ng CH, et al: Acquired factor V inhibitor. A problem-based systematic review. Thromb Haemost 101:852-859, 2009.
近年はバイパス製剤としてrFVIIaが重症出血に使用されるようになってきており、良好な止血効果を得ています。
残念ながら、現時点では抗FVインヒビターの出血に対して確立した治療法はありません。
Angらは(エビデンスは全くありませんが)、第一選択としてPC輸注を行い、頻回のPC輸注でも出血がコントロールできない場合は第二選択としてrFVIIaを90 μg/kg投与することを薦めています。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:32| 出血性疾患