金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2013年05月04日

後天性抗第V因子インヒビター(6)治療:免疫抑制療法

後天性抗第V因子インヒビター(5)治療:止血治療より続く。

後天性抗第V因子インヒビター(6)治療:
免疫抑制療法

<治療
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免疫抑制療法

免疫抑制療法としては副腎皮質ホルモン(PSL)が最もよく使用されています。

単独投与あるいはcyclophosphamide、azathioprineなど他の免疫抑制剤との併用で約7割以上が良好な反応を得ています。


最近は、抗CD20抗体であるrituximabの有効性が報告されています。

今後、rituximabは後天性血友病Aと同様に、PSLなどによる効果が不十分な場合の第二選択薬として位置付けるべきでしょう。


血漿交換や免疫吸着療法も、急速にインヒビター力価が低下し効果的な治療法です。

尚、高容量γグロブリン製剤の有効性については、意見が分かれています。


一方、インヒビター除去治療を行なわずとも、約半数の症例で自然に抗体が消失します。

Ang AL, Kuperan P, Ng CH, et al: Acquired factor V inhibitor. A problem-based systematic review. Thromb Haemost 101:852-859, 2009.

 

出血例ではインヒビター除去治療を行った方が行わない場合より抗体消失までの期間が短縮しますが、非出血例では両者にほとんど差がないとの報告されています。


したがって、インヒビター除去治療は、出血症例あるいは出血の危険性が高い症例に対して行うのが望ましいと考えられます。


(続く)後天性抗第V因子インヒビター(7)予後


<リンク>
血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集

参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:48| 出血性疾患