2013年06月17日
von Willebrand因子(VWF)と癌の関係
論文紹介です。
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「VWFと癌の関係について」
著者名:Franchini M, et al.
雑誌名:Thromb Res 131: 290-292, 2013.
<論文の要旨>
von Willebrand因子(VWF)は人における最も大きな血漿蛋白であり、内皮下基質や血管内皮細胞表面に血小板数が粘着する際に介在します。
また循環血中において第VIII因子のキャリア蛋白としても作用しています。
VWFのこのような止血機序における役割とは別に、VWFは血管新生やアポトーシスを抑制することによって抗腫瘍効果を発揮するという報告もあります。
ただし、VWFが腫瘍の播種を抑制するという実験データがある一方で、VWFの高値は悪性腫瘍患者の予後不良因子という報告もあります。
著者らはこの点を明らかにするためにイタリア血友病センター協会(AICE)による多施設後方視的研究を計画しており、イタリアVWD患者における悪性腫瘍患者のデータを収集中です。
この調査によってVWFと癌との関係に関する有用な情報を提供するでしょう。
驚くべきことに、これまでのVWD患者における癌の報告は3症例しかありませんが、これら疫学調査ではないために上記の検討は有意ではないかと考えられます。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:11| 出血性疾患