先天性凝固異常症(2)先天性フィブリノゲン欠乏症
先天性凝固異常症(1)RBDより続く。
先天性凝固異常症(2)先天性フィブリノゲン欠乏症
先天性 Fbg欠乏症(無Fbg血症)/異常症
先天性無フィブリノゲン(Fbg)血症は、Fbgの合成障害により量的欠損をきたす出血性疾患で、発症頻度は100万人に1人と推定されます。
一方、先天性Fbg異常症はFbg構造異常により機能障害をきたし、これまでに世界で300症例以上の家系が報告されています。
症状
無Fbg血症の出血症状は、新生児期の臍出血から始まり、成長すると鼻出血、口腔内出血、過多月経、関節内出血などがしばしば認められます。
重篤な出血として頭蓋内出血をきたし、致死的となる場合もあります。
また、自然流産の原因となります。
Fbg異常症の約半数は無症候であり、約25%に出血傾向、約15%に血栓傾向を認め、一部には両者の合併例もあります。
まれに、出血・血栓・創傷治癒不全を示す症例もあります。
出血症状は軽度であり、鼻出血、過多月経、術後出血がみられます。
検査所見
無Fbg血症では、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、トロンビン時間(TT)はすべて著明に延長し、血小板粘着能やADP惹起血小板凝集も障害されます。
血漿中Fbg量は、凝固学的測定法(活性)と免疫学的測定法(抗原量)を比較し、同等に低下している場合は欠乏症と診断し、乖離している場合は異常症と診断します。
無Fbg血症では血漿Fbg量は10 mg/dl未満となります。
治療
止血治療には、Fbg製剤を用います。
通常Fbgの止血レベルは50 mg/dl以上ですが、安全に手術を行うために、100 mg/dl以上を止血・創傷治癒が完了するまで維持します。
Fbg製剤の半減期は2-4日ですが、手術時や出血時には消費により半減期が短縮することを考慮する必要があります。
また、妊婦や頭蓋内出血の既往がある患者には、Fbg製剤の定期的補充投与が推奨されます。
しかし、Fbg製剤の投与は血液由来感染症、血栓傾向、反復投与による抗体産生、アナフィラキシーショックなどの危険性があり、十分注意が必要です。
Fbg異常症で血栓症を発症した症例では、半永続的な経口抗凝固療法を行います。
(続く)先天性凝固異常症(3)先天性プロトロンビン低下/異常症へ
<リンク>:臨床に直結する血栓止血学
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
金沢大学血液内科・呼吸器内科HPへ
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログへ
研修医・入局者募集へ
参考:血栓止血の臨床(日本血栓止血学会HPへ)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:56| 出血性疾患