血友病/凝固異常と大腿コンパートメント症候群
論文紹介です。
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「未診断の軽症血友病Bにおける軽外傷後の急性コンパートメント症候群」
著者名:Jones G, et al.
雑誌名:Lancet 382: 1678, 2013.
<論文の要旨>
2013年3月に、25歳の男性が前日のサッカーで相手選手と空中衝突して右大腿を外傷したということで来院しました。
打撲の跡は不明でしたが、右大腿下部が腫脹しており、膝関節の高度な可動域制限がみられました。
骨折もなく一旦退院となりました。
しかし、5日後に右大腿腫脹と疼痛の悪化および麻痺の出現のため再入院になりました。
この時点で急性コンパートメント症候群が疑われました。
Hb8.0g/dlと低下しており、CTでは血腫(2.27L)が確認されました。
緊急に筋膜切開術が行われましたが、腫脹軽減のみられるまでの9日間、切開部は開放状態でした。
また、一旦退院になりましたが6日後に大腿の再腫脹がみられ、切開創は、また開放状態になりました。
患者は再入院となり、2回の血腫除去術や輸血が行われました。
血液検査ではAPTTおよび第VIII因子は正常でしたが、第IX因子27.2%と低下していたため、軽症血友病Bと診断された。
本症例では大腿腫脹軽減のために筋膜切開術を行ったことが、致命的出血と診断の遅れにつながりました。
最近のシステマティックレビューでは、大腿のコンパートメント症候群の21%は凝固異常を有していると報告されています。
以上、大腿のコンパートメント症候群に遭遇した場合には、筋膜切開術の前に凝固異常の有無をチェックすべきと考えられました。
<リンク>
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
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参考:血栓止血の臨床(日本血栓止血学会HPへ)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:49| 出血性疾患