金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2014年04月03日

外傷性出血に対するフィブリノゲン製剤&rFVIIa

論文紹介です。

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外傷性難治性出血に対するフィブリノゲン製剤及び遺伝子組み換え型活性化第VII因子製剤による止血治療

著者名:藤井輝久他。
雑誌名:臨床血液   55: 234-238, 2014.


<論文の要旨>


症例は30歳代男性。

交通外傷にて本院救命救急センターに搬送された。出血性ショックの状態であり、緊急CTにて骨盤骨折と診断した。赤血球、新鮮凍結血漿の大量輸血にもかかわらず、血圧を含めたバイタルサインが安定せず、検査上も血小板数の低下と凝固障害が継続していたため、出血が持続していると考えた。

通常の補充療法では救命困難と判断し、適応外の使用になるが、止血を得るためにフィブリノゲン製剤と遺伝子組み換え型活性化第VII因子製剤(rFVIIa)を投与した。投与直後から検査値の改善に伴い出血性ショックから離脱した。

重症の外傷による止血困難に対し、海外ではrFVIIaにより難治性出血をコントロールしたという報告も見られるが、本邦では同様な報告が少ない。今回著者らが経験した症例はフィブリノゲン製剤やrFVIIaを使用することにより止血が行われ救命できたと思われる。


外傷や分娩時の過剰出血、あるいは頭蓋内出血や心血管系手術時の出血に対して、海外ではrFVIIaの使用が試されて、多くの報告が有効であった。

rFVIIaが未だに適応外使用である理由としてエビデンスレベルの高い無作為化前向き試験の少なさを挙げられる。

rFVIIaの止血効果が乏しい場合もあり、その原因として、血小板や他の凝固因子特にフィブリノゲンの消費がrFVIIaの効果を減弱させていると想像される。

フィブリノゲン製剤の使用は本邦では先天性無フィブリノゲン症のみの適応のため、第一選択はFFPである。

しかし、FFPでフィブリノゲンの補充を試みてもフィブリノゲ値はなかなか上昇しない。

しかし他の濃縮凝固因子製剤と同様にフィブリノゲンの濃縮製剤で補うことで速やかに目標濃度に達することができる。


本症例では、止血に際し、結局何が最も有効であったかは不明であるが、rFVIIaやフィブリノゲン製剤のみで速やかな止血が得られていないことから、消費性に低下している血小板や他の凝固因子を補充しつつ、両製剤がうまく止血に作用したと想像できる。


<リンク>
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金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
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参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:23| 出血性疾患