後天性凝固因子インヒビター治療:第VIII&V因子インヒビター
論文紹介です。
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「後天性凝固因子インヒビターの治療」
著者名:小山高敏
雑誌名:臨床血液 55: 67-74, 2014.
<論文の要旨>
本邦での血栓止血学会による後天性凝固因子インヒビターの実態調査では、報告全75症例のうち抗FVIII抗体が77%、抗VWF抗体が11%、抗FV抗体が7%でその他は稀である。
後天性血友病の治療目的は、致命的出血の抑制、自己抗体の除去の2つである。
診断後直ちにプレドニゾロン(PSL)単独を中心とした免疫抑制療法を行う。止
血治療は、一般にはバイパス製剤による治療が第一選択である。
バイパス製剤には、遺伝子組換え活性化第VII因子(rFVIIa)製剤、ヒト血漿由来活性型プロトロンビン複合体製剤(APCC)の2種類がある。
輸血感染症に関する安全性とanamnestic effectがない点はrFVIIaの長所だが、rFVIIa製剤は2〜3時間毎のボーラス静注投与が必要であり、最近、インヒビター保有先天性血友病では270μg/kgの高用量ボーラス単回静注も保険適用となった。
APCCは血漿由来製剤であるが、輸血感染症の安全性は現在では極めて高く、8〜12時間毎の投与でよい点が長所である。
PSL中心の免疫抑制療法により大部分の症例でインヒビターは最終的に消失する。
約20%の患者で、免疫抑制療法を中止した後に再発し、追加クールの治療または長期の維持免疫抑制療法を要する。
欧米ではリツキシマブは免疫抑制療法の第二選択薬である。
FVインヒビター症例では、無症状から致命的出血を呈するものまで様々である。
治療は、薬剤など引き金となった因子があれば、それを取り除く。
それだけで自然消失することもある。
止血必要時は、FFP、濃厚血小板の投与を考える。
血小板は豊富なFVを含み、出血部位に集中してインヒビターの効果を受けにくく、標準量のPC輸注が有効である 。
rFVIIaやAPCCが止血に有効との報告もある。
インヒビターが自然消失しない場合は、PSLを中心とした免疫抑制療法が必要となる。リツキシマブ、血漿交換、大量γ-グロブリン療法が有効との報告もある。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
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参考:血栓止血の臨床(日本血栓止血学会HPへ)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:34| 出血性疾患