後天性血友病A:原発性骨髄腺維症、急性骨髄性白血病
論文紹介です。
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「後天性血友病Aを合併し、急性骨髄性白血病へ転化した原発性骨髄腺維症」
著者名:黒田裕行他。
雑誌名:臨床血液 54: 2192-2198, 2013.
<論文の要旨>
症例は77歳、男性。
原発性骨髄腺維症(PMF)に対してthaidomideとprednisolone(PSL)の治療で良好な経過であったが、顔面•体幹•四肢の広範な皮下出血のため再診した。
APTT延長と第VIII因子活性低下およびインヒビターを認め、後天性血友病A(AHA)と診断した。
入院時よりPSLとcyclophosphamideを併用したが、免疫抑制療法後まもなく右大腿四頭筋内出血を認め、活性型プロトロンビン複合体製剤により止血した。
このためrituximabを投与したが、咽頭蓋血腫を合併して呼吸困難となり、遺伝子組み換え型活性型第VII因子製剤とステロイドパルス療法を行った。
Rituximab併用免疫抑制療法によりAHAは改善したが、Pneumocystis肺炎のため死亡した。
剖検でPMFから急性骨髄性白血病への転化を確認した。
本邦ではAHAの基礎疾患として悪性腫瘍が17%を占めるが、造血器腫瘍にAHAを合併した報告は少ない。
1984年から30年間で、AHAの基礎疾患としてAMLは3例で、著者らの自験例を含め骨髄腺維症は3例であった。
AHA治療の基本方針は止血・免疫抑制療法に加えて原疾患の治療とされているが、原病に対する化学療法のみでAHAが改善したのはMeekらの報告したAML1例のみであった。
その他の症例では第VIII因子活性やインヒビター力価は様々であったが、止血・免疫抑制療法により骨髄腺維症の1例を除き全例でAHAの緩解が得られていた。
一方で原病であるAMLの増悪による死亡も認められ、AHAに対しては奏効が得られても原疾患の治療が困難な症例は予後不良である。
本症例はバイパス療法と免疫抑制療法によりAHAの緩解が得られたが、骨髄腺維症は改善しなかった。
さらにAMLへの急性転化と免疫抑制療法のため感染症を続発して致死的転帰をたどった。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:40| 出血性疾患