血友病A患者におけるデスモプレシンの反応
論文紹介です。
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「第VIII因子活性<0.10IU/mLの血友病A患者におけるデスモプレシンの反応」
著者名:Stoof SCM, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 12: 110-112, 2014.
<論文の要旨>
デスモプレシン(D薬)は、血管内皮からのvon Willbrand因子(VWF)放出を促し、それに伴い第VIII因子(FVIII)も3〜5倍上昇するため、VWDや軽症〜中等症の血友病患者の治療選択肢となります。
著者らは、今までのFVIIIの最低値が<0.10IU/mLの症例(最低値でもFVIIIを測定可能な症例)で、D薬の反応を後方視的に調査しました。
検討症例では48例であり、65%は軽症、35%は中等症でした。
43例では経静脈的に、5例では径鼻的に投与されていました。
D薬投与前のFVIIIの平均は0.09IU/mLであり、ピークは0.42IU/mLに達し、3時間後に0.28IU/mL、6時間後に0.22IU/mLとなりました。
軽症の外傷や小手術ではFVIII≧0.30IU/mLが必要とされていますが、著者らが検討対象とした症例では大部分の症例で、D薬により少なくとも3時間後まで維持されました(6時間後まで維持される例は少数でした)。
D薬によるFVIII上昇は短時間の維持ではあるものの、今までのFVIII最低値が0.10IU/mL未満の症例では、小手術などに対する治療選択肢と考えられました。
D薬は第VIII因子製剤よりも安価であり、インヒビター発症の懸念もありません。
非重症血友病A患者においては、D薬による治療の可能性を評価するために全例で試験投与を推奨してもよいかもしれません。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:53| 出血性疾患