遺伝性出血性毛細血管拡張症(オスラー病)の妊娠転帰
論文紹介です。
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「遺伝性出血性毛細血管拡張症(オスラー病)患者における妊娠の転帰」
著者名:de Gussem EM, et al.
雑誌名:Obsted Gynecol 123: 514-520, 2014.
<論文の要旨>
トロント遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)データベースを用いて、HHT女性(18〜55歳)の妊娠経過について後方視的検討を行いました。
対象はHHT女性87症例の244妊娠です。
その結果、流産は20%にみられました。
HHT関連の合併症としては、2回の妊娠での喀血(1.1%)、4回の妊娠での血胸(2.1%)がありました。
血胸をきたした1例では、前回の妊娠時に一過性脳虚血発作(奇異性血栓によると考えられる)をきたしていました。
脳内出血をきたした1例、心不全をきたした1例もありました。
これらの合併症は、それまでに動静脈奇形の精査や加療の行われたことのない女性でみられました。
HHTと直接関連しない合併症としては、深部静脈血栓症(n=1)、肺塞栓(n=1)、心筋梗塞(n=1)、狭心症(n=1)がありました。
多くの例で妊娠中に鼻出血の回数が増加したり、新しい毛細血管拡張の出現を自覚していました。
185出産中92回(50%)で硬膜外麻酔または脊椎麻酔が行われて合併症はありませんでしたが、麻酔前に脊椎動静脈奇形の有無についてスクリーニングされていませんでした。
以上、動静脈奇形チェックのされたことのないHHT女性は、重症の妊娠合併症のリスクが高いと考えられました。
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参考:血栓止血の臨床(日本血栓止血学会HPへ)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:00| 出血性疾患