金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2014年07月01日

血友病A治療における第XIII因子の意義

論文紹介です。

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「血友病A治療における第XIII因子の意義」

著者名: Rea CJ, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 12: 159-168, 2014.


<論文の要旨>

血友病Aにおいて第XIII因子活性を生理的濃度以上に上昇させることで凝血塊を安定化することができるか検討しました。

重症血友病A患者6例より採血してトロボエラストメトリー法(T法)を用いて評価しました。

また、マウスモデルでの実験も行いました。


その結果、血友病患者からの血液に第XIII因子を添加したところ凝血塊の安定性は向上しました(第VIII因子活性が0.1IU/mL未満であってもt-PAによる線溶に対する抵抗性が上昇しました)。

第XIII因子の添加は化学量論的にその活性化を増やし、フィブリン塊の構造を改善し、凝血塊の透過性を低下させ、トロンビン形成を亢進しました。


T法では、第XIII因子は第VIII因子欠乏血漿におけるピークまでの期間とラグ時間を短縮しました。

マウスモデルでは、第XIII因子活性を生理的濃度以上に上昇させても特に問題なく、凝血塊形成までの時間に影響を与えませんでした。


以上、第VIII因子が低濃度であっても、第XIII因子は凝血塊を安定化させ構造を改善させるものと考えられました。

第XIII因子製剤は血友病治療のいろんな局面で有用である可能性があります。

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参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:56| 出血性疾患