金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2014年07月06日

APCC製剤中TFPIとインヒビター保有血友病A患者

論文紹介です。

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クロスミキシングテスト


「aPCC製剤中のTFPIは一部のインヒビター保有重症血友病A患者における治療効果に影響を与える」

著者名: Ogiwara K, et al.
雑誌名:Int J Hematol 99: 577-587, 2014.


<論文の要旨>

インヒビター保有の一部の血友病A患者において活性型プロトロンビン複合体製剤(aPCC)の反応が不良ですが、その機序は不明です。


著者らは後方視的に2症例を検討しました。

症例1では、遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)に変更したところ有効であり、aPCCに対する反応も2週間以内に回復しました。

TFを用いたトロンビン形成試験ではlag-timeが延長し、トロンビン形成のピークが低下しましたが、これはTFPIのためと考えられました。

aPCCの投与により血漿中遊離型TFPI(fTFPI)は上昇しましたが、rFVIIaでは上昇しませんでした。

TFPIは2〜3週間で正常値に復しました。


aPCCに反応不良の患者、aPCCに反応良好の患者、rFVIIaに反応良好の患者からのそれぞれの血漿を調べたところ、aPCC投与の二群ではfTFPIが上昇していましたが、rFVIIa投与群では上昇していませんでした。


aPCCに反応不良の患者ではTFPIの上昇はより高度でした。

検体中にTFPI抗体を添加したところ、aPCC反応不良患者ではトロンビン形成のピーク上昇がより高度でした。


以上、aPCC中のTFPIはトロンビン形成を抑制し、治療効果を減弱させるものと考えられました。


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参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:22| 出血性疾患