抗IXa/Xバイスペシフィック抗体(ACE910):血友病Aモデル
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
「抗IXa/Xバイスペシフィック抗体(ACE910):血友病Aモデルにおける止血または補充療法として」
著者名: Muto A, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 12: 206-213, 2014.
<論文の要旨>
著者らは抗IXa/Xバイスペシフィック抗体hBS23(第IXa因子&第X因子の適切なエピトープを認識して第VIII因子の機能を代替する抗体)を開発してきました。
本抗体は第VIII因子インヒビター存在下においても第VIII因子様の役割を演じ、後天性血友病Aの動物モデルの出血に対して有効でした。
著者らはhBS23の改良型であるACE910を開発しました。
非ヒト霊長類に対して第VIII因子中和抗体を投与し後天性血友病Aモデルを作成しました。
出血を誘発した後に、ACE910または遺伝子組換えブタ第VIII因子(rpoFVIII)が経静脈投与されました。
rpoFVIIIは翌日以後の2日間も日に2回追投与されました。
出血症状は3日後観察されました。
その結果、ACE910 1 or 3mg/kgの1回静注は、生じている出血に対してrpoFVIII 10U/kg 1日2回静注に匹敵する止血効果を有しました。
ACEの半減期は3週間と長く、皮下注投与であっても100%近い生物学的能を有しました。
薬物動態パラメーターに基づくシミュレーションでは、ACEを週に1回皮下注した場合でも上記の止血能は維持されるものと考えられ、予後投与法も有効と推測されました。
以上、ACE910は、血友病A患者の出血時止血治療としても、定期的な補充療法(予防治療)としても展望があるものと考えられました。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
金沢大学血液内科・呼吸器内科HPへ
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログへ
研修医・入局者募集へ
参考:血栓止血の臨床(日本血栓止血学会HPへ)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:32| 出血性疾患