金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2014年07月11日

全身性ALアミロイドーシス合併多発性骨髄腫と第X因子欠乏症

論文紹介です。

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クロスミキシングテスト


「全身性ALアミロイドーシスを合併した多発性骨髄腫に対する自家移植4年後に発症した後天性第X因子欠乏症」

著者名: 竹村兼成 他。
雑誌名:臨床血液 55: 558-592, 2014.


<論文の要旨>

68才女性。

2007年、多発性骨髄腫(IgA-κ型、Bence Jones蛋白-κ型)及び全身性ALアミロイドーシスと診断されました。

VAD療法3コース、自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法を施行され、部分寛解となり、以後、病勢の進行を認めませんでした。

2011年12月から、PT17.6秒と延長を認めました。

2012年1月、直腸癌を併発し、外科で低位前方切除術及び人工肛門造設術を施行されました。

術中に新鮮凍結血漿輸注を施行しましたが、周術期の出血傾向を認めました。

2012年2月、人工肛門閉鎖術を施行するにあたり、出血傾向の原因精査を依頼されました。

クロスミキシング試験では、PTで凝固因子欠乏パターンを示し、第X因子活性が低下していたことから、後天性第X因子欠乏症と診断しました。

FFP10単位を輸注し、人工肛門閉鎖術を終了しました。

多発性骨髄腫に合併した後天性第X因子欠乏症の発症は稀です。


本症例は、多発性骨髄腫は部分寛解であったことから、自家末梢血幹細胞移植を併用した大量化学療法を施行後も残存する骨髄腫細胞に由来するアミロイド沈着により、先天性第X因子欠乏症を発症したものと考えられます。

そして、移植後に明らかな多発性骨髄腫の再燃が無くても後天性第X因子欠乏症を発症したということは、多発性骨髄腫及び全身性ALアミロイドーシスに対して一定の治療効果を認めていても治療後に凝固障害を起こす可能性があると考えられます。



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参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:31| 出血性疾患