von Willebrand病の臨床検査診断と診断基準による差違
論文紹介です。
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「von Willebrand病(1型)の臨床検査診断と用いる診断基準による差違」
著者名:Quiroga T, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 12: 1238-1243, 2014.
<論文の要旨>
著者らは、von Willebrand病(VWD)1型の診断に用いる診断基準の影響について評価しています。
5年間に臨床検査に提出された4,298例を対象としました。
(1) National Heart, Lung, and Blood Institute recommendationでは、VWF抗原とVWFリストセチンコファクター活性(VWF:RCo)<30IU/dLでVWD1型と診断され、VWF値30〜50 IU/dLでVWD疑いとされます。
(2) つ目の診断基準では、VWF抗原、VWF:RCo、VWFコラーゲン結合能(VWF:CB)の3パラメータのうち2つで≦2.5パーセントで診断され、同じくパーセンタイル設定でVWD疑いと診断されます。
(3) つ目の診断基準(EUVWD)では、VWF:RCo(またはVWB:CB)≦40 IU/dLで診断されます。
(4) つ目の診断基準(ZPMCBVWD)では、VWF抗原またはVWF:RCo≦40 IU/dLで診断されます。
3つの測定法は高い相関がみられ、<120 IU/dLでは優れた一致率を示しました。
(1) の診断基準では、122例(2.8%)がVWD1型と診断され、704例(16.4%)がVWD疑いと診断されました。
(2) の診断基準(パーセンタイルを使用)では、VWD1型は280例(6.5%)まで診断される者が増加し、169例(3.9%)がVWD疑いと診断されました。
(3) と(4) の診断基準では、VWDの診断がそれぞれ339例(7.9%)、357例(8.3%)まで増加しました。
同じデータを用いても診断基準に何を用いるかによってVWD(1型)診断率に3倍の開き(2.8〜8.3%)があるものと考えられました。
この理由は、VWF値のカットオフ値をどのレベルに設定(<30〜約40 IU/dL)するかに依存しているものと考えられました。
VWDの臨床検査診断については、更に診断基準を吟味することが重要と考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:11| 出血性疾患