von Willebrand病における胃腸粘膜の血管形成異常
論文紹介です。
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「von Willebrand病における胃腸粘膜の血管形成異常」
著者名:Franchini M, et al.
雑誌名:Thromb Haemost 112: 427-431, 2014.
<論文の要旨>
von Willebrand病(VWD)(とくに2型、3型)における出血症状のうち胃腸管出血の対策は最も困難です。
解剖学的には、消化管粘膜に血管形成異常を伴うことが背景にあります。
補充療法が止血に有効ではあるものの、胃腸管出血は他部位の止血よりも難渋します。
予防的補充療法を継続することが治療の主体になりますが、費用を要すること、静注を繰り返すことの不便さがあり、しかも毎回有効とは限りません。
VWF含有第VIII因子製剤には、VWF高分子マルチマー分画(血管異形成部分のように高ずり応力下ではとくに重要)が欠如していることも、治療効果が得られない場合の原因となっています。
おそらく、今後登場する遺伝子組換えVWF製剤であればこの問題は解決されます。
VWDにおいて血管形成異常がみられる原因は長年不明でした。
最近の実験では、VWFに血管新生抑制作用があるとも報告されています(VWF欠損では異常な血管が新生されます)。
血管新生抑制作用を有する薬物が数多く知られていますが、臨床的に有用かどうかは不明です。
新しく異常血管が形成された場合にVWF含有製剤の定期補充療法の効果に期待したいですが、臨床経験上は定期補充療法を行っても血管新生は抑制されません。
おそらく、VWF含有製剤の補充療法を行うことで、血管内のVWF活性は上昇しても、血管内皮を含む細胞におけるVWFレベルは変わらないためでしょう。
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播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
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参考:血栓止血の臨床(日本血栓止血学会HPへ)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:17| 出血性疾患