金沢大学・血液内科・呼吸器内科
※記事カテゴリからは過去の全記事をご覧いただけます。
<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2014年12月31日

血友病Bと長時間作用型第IX因子・Fc融合蛋白(rFIXFc):周術期治療

論文紹介です。

関連記事:APTT血友病後天性血友病第V因子インヒビター第VIII因子インヒビターPT-INR

クロスミキシングテスト


「血友病Bに対する長時間作用型遺伝子組換え第IX因子・Fc融合蛋白(rFIXFc)による周術期治療(第3相B-LONG試験)

著者名:Powell JS, et al. 
雑誌名:Br J Haematol 168: 124-134, 2014.

<論文の要旨>

第3相B-LONG試験(血友病B症例に対する遺伝子組換え第IX因子・Fc融合蛋白(rFIXFc)において、rFIXFcは遺伝子組換え製剤(rFIX)と比較して重症血友病B患者での半減期が長いことが証明され、出血の予防や治療として用いるときに安全かつ有効であることが示されました。

このB-LONG試験のサブ解析では、大手術が必要となった症例における有効性が検討されました。

投与回数は主治医の判断によることとしました。

評価項目は、投与回数、製剤消費量、出血・輸血量、止血反応です。


12症例が14回の大手術(11回の整形外科手術を含む)を受けました。

ほとんどの症例(11/12症例)が、術前にrFIXFc予防知治療を受けていました(期間:2週間〜12ヶ月間)。

主治医(執刀医)による止血反応評価は、極めて良好(n=13)、良好(n=1)でした。

ほとんど(85.7%)の手術において、術前の投与から手術終了までを通してrFIXFc1回の輸注で止血が維持されました。

出血量は、非血友病患者における類似の手術の場合と同程度でした。

また、手術はrFIXFcの薬物動態に影響を与えませんでした。

安全性にも問題なく、インヒビターの発症もみられませんでした。


以上、血友病B患者の周術期におけるrFIXFcの投与は、安全かつ有効であり、輸注間隔を延長させ、製剤消費量を減少させるものと考えられました。

また、手術はrFIXFcの薬物動態に影響を与えませんでした。


<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集

参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:30| 出血性疾患