ITPへのTPO受容体作動薬と骨髄線維症、慢性骨髄性白血病
論文紹介です。
「ITPに対するTPO受容体作動薬治療中に発症した慢性骨髄性白血病」
著者名:服部英喜、他。
雑誌名:臨床血液 55: 2429-2432, 2014.
<論文の要旨>
近年、難治性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)に対してトロンボポエチン(TPO)受容体作動薬が新たな治療薬として注目をあびています。
しかしその一方で長期使用による骨髄線維症、造血器腫瘍等の発症も懸念されています。
今回著者らは難治性ITP患者にエルトロンボパグを導入し、約19か月後に慢性骨髄性白血病(CML)が出現した症例を報告しています。
ITPに対するエルトロンボパグの安全性に関して、半年から3年の使用においては線維化、造血器腫瘍発症のリスクは低いという報告があります。
しかしその一方で、TPO受容体は多能性幹細胞やすべての血球の前駆細胞に発現しているため、従来よりTPO受容体作動薬投与については、造血器腫瘍や骨髄線維症の発症などが懸念されています。
低リスクMDSに対するロミプロスチム使用例における急性骨髄性白血病(AML)の発症が報告され、さらに最近、OshimaらはITPに対するロミプロスチム、エルトロンボパグ使用に際してのAML発症率およびそのオッズ比は、それぞれ1.74%、1.52%、および10.5倍、5.9倍であることを報告しています。
また重症再生不良性貧血に対するエルトロンボパグ使用に対して染色体異常を認めたとの報告もあり、TPO受容体作動薬がclonal evolutionを引き起こす可能性が問題となりつつあります。
本症例はPSLおよびエルトロンボパグ開始時の骨髄像はITPのそれと矛盾せず、染色体検査では正常核型を示していたため、CMLの発症はエルトロンボパグ開始時以降と考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:53| 出血性疾患