第VIII因子の生合成およびVWFとの相互作用
論文紹介です。
「FVIIIの生合成およびフォン・ヴィレブランド因子との相互作用に関する最新の知見」
著者名:志田泰明、他
雑誌名:日本血栓止血学会誌 26: 49-56, 2015.
<論文の要旨>
第VIII因子(FVIII)の主要産生部位は、血管内皮細胞です。
血管内皮細胞の中でもとくに肝類洞内皮細胞(liver sinusoidal endolthelial cells: LSECs)が重要です。
FVIIIのフォン・ヴィレブランド因子(VWF)との主要な結合部位はVWFD′ドメインに存在します。
FVIIIの安定化のためにはVWFD′D3ドメイン全体が必要です。
VWFのD′ドメインに存在するtrypsin-inhibitor-like(TIL′)領域の構造が特にFVIIIとの結合に重要です。
FVIIIの産生部位の特定が進められ、LSECsを中心とした血管内皮細胞が主要な部位であることが明らかになりました。
他の凝固因子が肝細胞で産生されるなか、重要なFVIIIという凝固因子だけが別の細胞で産生されるのは非常に興味深いです。
FVIIIの重要なパートナーであるVWFも全身の血管内皮細胞で産生されることは無関係ではないでしょう。
このシステムは肝細胞内での不必要な凝固促進を防止するためのものであるかもしれないし、あるいは局所でFVIIIとVWFを共に速やかに動員することで止血を有効に行うためのものであるのかもしれません。
最近明らかになった柔軟なVWFD′ドメインの立体構造は、VWFにおけるFVIII結合という重要な機能を理解する上で重要な一歩であると考えられ注目したいです。
D′D3フラグメントによる血中FVIIIレベルの最適化はVWF-/-マウスにおいては魅力的な結果であり、VWFの担体機能を調整することでFVIIIを安定化できる可能性が示唆されました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:00| 出血性疾患