血友病患者の外来診療とクリニカルパス
論文紹介です。
「血友病患者の外来診療におけるクリニカルパスの検討」
著者名:長尾梓、他。
雑誌名:日本血栓止血学会誌 25: 738-741, 2014.
<論文の要旨>
血友病医療は凝固因子製剤の進歩と定期補充療法の普及により、出血が予防されて関節障害が少なくなり、QOLが著しく改善している。
わが国では血友病専門施設が少なく、施設間格差、地域格差が問題になている。
標準治療を構築するツールとしてクリニカルパスが様々な分野で開発されており、血友病の分野でも必要である。
血友病医療においては止血管理のみならず、整形外科やリハビリ、感染症の管理など包括的な管理が必要とされる。
それらを多職種間で円滑に管理するため当院で治療経過クリニカルパスを考案した。
いずれの施設においても個々の患者を漏れなく経過観察できるよう構成されており、製剤の投与管理、関節評価や治療、今後血友病高齢者の管理まで可能なクリニカルパスを基本として地域携帯クリニカルパスへの応用などを検討していきたい。
血友病患者において関節評価は非常に重要なポイントである。
レントゲン、関節可動域測定、必要に応じてMRIなどで関節評価を定期的に行う。
若年者であれば入学、就職などの節目でチェックすると決めておくと漏れがない。
成人においては輸注記録票のチェックで関節出血を繰り返している場合など適宜検査を行い所見の悪化などがあれば適宜整形外科へコンサルトする。
小児科・内科的にはで出血時補充療法を行っている患者であれば定期補充療法導入を検討し、定期補充療法をしていて出血を繰り返すならば投与間隔・投与量を見直す必要がある。
とくに今後は複数の製薬会社から長期作用型凝固因子製剤の発売が予定されており、血友病Aでは最長週に1回、血友病Bにおいては最長2週に1回の定期補充療法の有効性が報告されていることから積極的な定期補充療法の導入を考慮すべきであろう。
今後、血友病患者の高齢化の進行に伴い高血圧、糖尿病、慢性腎臓病、C型肝炎、肝硬変の管理、頭蓋内出血の増加等の問題が生じ、血友病診療医は「かかりつけ医」としての役割を担う場面が増えてくると予想される。
つまり患者の包括的な診療が必要となってくる。
よって、生活習慣病のチェックは必須である。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
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参考:血栓止血の臨床(日本血栓止血学会HPへ)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:05| 出血性疾患