金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2015年03月11日

血友病患者の関節置換術と静脈血栓塞栓症の発症頻度

論文紹介です。

「関節置換術を行った血友病患者の症候性静脈血栓塞栓症の発症頻度」

著者名:Perez Botero J, et al.
雑誌名:Thromb Res 135: 109-113, 2015.

<論文の要旨>


静脈血栓塞栓症(VTE)は関節置換術の合併症として知られており、出血性素因のない患者では通常は予防治療が行われます。

しかし、血友病患者では出血リスクの問題があり薬物による予防治療をどうするか一定の見解はありません。

著者らは、インヒビターを保有していない血友病患者における膝関節または股間節置換術後の症例性VTE発症、VTE予防治療の有無との関連について検討しました。


対象は、71回の股関節または膝関節置換術後が行われた血友病AまたBの42症例(39年間)です。


全症例で術後6週間まで弾性ストッキングが装着されていました。

また、評価可能な57症例中6例(10.5%)では、間欠的空気圧迫装置が使用され、2例(2.8%)では術後に低分子ヘパリンの投与が行われました。

低分ヘパリンの投与を受けた1例(1.4%)では、外傷性骨折に対して股関節置換術が行われた10日後に、症候性の下肢深部静脈血栓症を発症しました。

他の70回の手術では術後3ヶ月にわたって症候性VTEはみられませんでした。

文献的な検討では、関節置換術を行った血友病患者における症候性VTEの発症率は、0.5%でした。


以上、血友病患者では、薬物的VTE予防を行わなくても血栓塞栓症を増加させることなく、関節置換術を行えると考えられました。

薬物的VTE予防は、その他のVTEリスクがある場合に限って考慮されるべきでしょう。


<リンク>
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参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:22| 出血性疾患