閉塞性肥大型心筋症と後天性VWD
論文紹介です。
「閉塞性肥大型心筋症に起因する後天性VWDに対する心筋中隔切除術後に再発性胃腸出血が寛解した1例」
著者名:Blackshear JL, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 13: 191-196, 2015.
<論文の要旨>
胃腸出血はvon Willebrand病(VWD)の重大な合併症と考えられています。
肥大型心筋症(HCM)に高度な胃腸出血をきたした場合の後天性VWDの治療法は確立されていません。
HCM77症例(中央値67才、女性49%)において、VWFマルチマー構造解析が行われ、出血の既往につき聴取されました。
出血の既往は27症例(36%)(中央値74才、女性74%)でみられ、胃腸出血は20症例にみられました(輸血依存性の女性11例が含まれます)。
この女性11例における輸血依存性期間の中央値は36ヶ月であり、輸血回数の中央値は25回でした。
2症例では腸管切除術が行われ、そのうち1例では2回行われました。
7症例では血管異形成がみられましたが、他の症例では内視鏡上の所見はみられませんでした。
11症例中10例では、腸管手術、内視鏡治療、HCMに対する薬物療法後も出血が再燃しました。
2症例では中隔心筋切開切除術が行われ、6症例ではアルコール中隔焼灼術が行われました。
中隔心筋切開切除術が行ったあとも圧較差が残存した1例を除いて、手術治療後に出血は再燃しなくなり輸血も不要になりました。
以上、HCMでは後天性VWDは高頻度にみられるものと考えられました。
内視鏡的治療を行っても胃腸出血をくり返すことが多いですが、心臓の構造を修復することで出血はみられなくなるものと考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:42| 出血性疾患