僧帽弁閉鎖不全と後天性von Willebrand症候群(VWS)
論文紹介です。
「僧帽弁閉鎖不全におけるずり応力関連の後天性VWD」
著者名:Blackshear JL, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 12: 1966-1974, 2014.
<論文の要旨>
僧帽弁閉鎖不全症(MR)は、後天性に止血異常をきたすことが知られています。
著者らはMR症例における後天性von Willebrand症候群(VWS)の頻度と重症度を検討しました。
心エコー検査でMRの確認された53症例について、出血に関するアンケート調査、凝血学的検査を行いました。
僧帽弁手術の行われた症例では術後に検査がくり返されました。
心エコー検査の結果、軽症MR13例、中等症MR14例、重症MR26例でした。
最高分子量のvon Willebrand因子(VWF)マルチマー欠損は、軽症、中等症、重症でそれぞれ8%、64%、85%にみられ、platelet function analyzer collagen APD clousure time (PFA-CADPs)の中央値はそれぞれ84秒、156秒、190秒であり、VWFの活性/抗原比はそれぞれ0.92、0.85、0.79でした。
9例では臨床的に有意な出血がみられ、7例では小腸の血管異形成と輸血依存性の胃腸出血(Heyde症候群)がみられました。
僧帽弁の修復のされた13例または置換術の行われた7例では、術後に上記のVWF機能検査は全て正常化しました。
以上、中等症〜重症MRにおける高ずり応力の病態は、高頻度にVWFの活性を低下させると考えられました。
この病態では後天性VWSを発症しますが、僧帽弁手術によって回復すると考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:48| 出血性疾患