後天性血友病(AHA)の寛解と生存に関する予後因子
論文紹介です。
「後天性血友病(AHA)の寛解および生存に関する予後因子:GTH-AH 01/2010試験の結果より」
著者名:Tiede A, et al.
雑誌名:Blood 125: 1091-1097, 2015.
<論文の要旨>
後天性血友病(AHA)は、第VIII因子に対する自己抗体が形成される疾患です。
免疫抑制療法(IST)による寛解率は60〜80%です。
ISTでは、感染症(死亡の主因となる)などの副作用が高頻度にみられます。
寛解までの期間を予知することができればISTの強度を調節するのに役立ちますが、その方法は確立されていません。
著者らは統一されたISTプロトコールで治療されたAHA 102症例を対象に、予後因子の検討を行いました。
その結果、部分寛解(PR:活動性の出血がないこと、第VIII因子活性の50IU/dL超への回復、24時間超の止血治療の中止)は、83%で達成されました(中央値31日:7〜362日)。
第VIII因子の前値が1%未満の症例ではPR率が低くかつPRまでに期間を要した(77%、43日)のに対して、1%以上の症例では、89%、24日でした。
その他の背景因子を一致させたところ、第VIII因子活性の低値が持続することは、PRが低いことと関連していました。
一方、第VIII因子の前値が1%以上かつインヒビター力価が<20 BU/mLの症例では、ステロイド単独で21日以内にPRを達成できることが多かったです(オッズ比11.2、P<0.0001)。
第VIII因子の低値は、完全寛解率の低値と低い生存率とも関連していました。
以上、AHA症例におけるIST治療を計画する上で、第VIII因子活性とインヒビター力価の情報はきわめて重要と考えられました。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
金沢大学血液内科・呼吸器内科HPへ
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログへ
研修医・入局者募集へ
参考:血栓止血の臨床(日本血栓止血学会HPへ)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:00| 出血性疾患