金沢大学呼吸器グループ研究室紹介(2)
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会原稿(平成26年度)からです。
金沢大学呼吸器グループ研究室紹介(インデックス)
「呼吸器グループ研究室紹介」(2)
肺癌グループ
肺癌グループの活動は基礎研究から臨床に近づいてきました。
EGFR遺伝子変異が日常臨床に欠かすことができなくなり、ALK融合遺伝子検査も活発に行われるようになりました。
それに比例して分子生物学的知識が必要となり、基礎研究の知識・経験が臨床にも必要になってきています。
このような現状で肺癌の診療は年々変化しているということを日々実感します。
このような中で行われる臨床研究の一つのスタイルとしてglobal studyがあります。
現在のglobal studyにおける日本の立ち位置ですが、研究全体の10%強を日本の症例で行うというのが主流です。
たとえば1000例規模のstudyがあるとすると日本の症例はその10分の1強、100例ちょっと、ということになります。
金沢大学呼吸器内科では数多くの臨床試験に参加できるようになりました。
本邦で行われている大規模臨床試験の約半分の研究には参加しています。
個別の臨床試験のエントリー数でも国立大学病院としてはトップクラス、治験によってはトップ争いができるところまで来ました。
これは病棟を担当している研修医、指導医、教官、外来担当医がすべて一致協力してくれた賜物と思っています。
またin house(グループ主導)の臨床試験として、EGFR遺伝子変異陰性非小細胞肺癌に対するErlotinibの有用性予測因子を探索する第II相試験が終了、近々曽根先生がデータをまとめて発表・論文化してくれると思います。
そのほか高齢者非小細胞肺がんに対するPEMとPEM+ベバシズマブの無作為化第II相試験、TS-1の維持療法の第II相試験など進行してきています。
肺癌化学療法は個別化医療へと向かっていると考えられますので、我々独自のデータを発信できるように皆、頑張っています。
我々の研究として木村先生が肺癌のバイオマーカー研究を再開しました。
我々は従来から腫瘍代替組織としての血液に注目しており流血中の循環DNAを収集しEGFR遺伝子変異の解析してきました。
最近はEGFR-TKIに対する耐性遺伝子の研究を行い血中でも耐性遺伝子を検出できるようになって来ています。
これをさらに進展させて、流血中の循環腫瘍細胞を採取し検討する、 liquid biopsyの研究を進めています。
これはなかなかライバルも多く大変ですが、実りの多い楽しみなプロジェクトですが、みんなで頑張っていきたいと思います。
米田先生は酒井先生が行ったcMet蛋白の過剰発現とTopoisomerase Iの関連についてさらに研究を発展させています。cMet蛋白発現とTopoisomerase I蛋白発現は一部の細胞株だけではなくて、ほぼ普遍的に関連しているようです。これだけでは単なる現象論ですので基礎実験としてはこの二つの繋ぐ知見が必要となってきます。彼は非常に馬力がありますので期待できるでしょう。
西川先生はさらに多くの仕事が重なっており、彼が以前から行ってきた肺癌におけるエステロゲン受容体の病態解明の研究とliquid biopsyの実験を行っています。
金沢大学呼吸器グループ研究室紹介(インデックス)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:18| 呼吸器内科