金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2015年05月07日

出血性疾患の種類と治療(4)凝固異常

<出血性疾患の種類と治療>(4) 凝固異常

出血性疾患の種類と治療:インデックス

血友病A、血友病B
は、それぞれ第VIII因子、第IX因子が先天性に欠損して出血症状をきたす病態です。

不足している凝固因子を補充するというのが治療の基本的な考え方です。

血友病が重症の場合には、出血の有無とは関係なく定期的に不足した凝固因子を補充する定期補充療法が行われます。

先天性の血友病の患者にとっては治療目的に補充される凝固因子は未知の蛋白のため、インヒビター(同種抗体)が出現する場合があります。


後天性血友病は、通常第VIII因子に対するインヒビター(自己抗体)が出現することで、重症の出血症状をきたす後天性の出血性素因です。

高度で活動性の出血を止めるための止血療法(バイパス製剤による治療)と、インヒビターを消失させるための免疫抑制療法(副腎皮質ステロイドなど)が併行して行われます。

特に、免疫抑制療法は早々に開始する必要があります。

従来、100万人に1人の発症頻度と言われてきましたが、筆者らはそれより遥かに多いのではないかと推測しています(桁が違うのではないかと思われます)。

これまでは診断されることなく埋もれていた症例も少なくないのではないかと推測されます。


ビタミンK欠乏症は、ビタミンK依存性凝固因子であるFVII、IX、X、II因子(半減期の短い順)活性が低下することで、全身性の出血症状をきたします。

大人の場合は、食事摂取低下(ビタミンKの摂取が低下する)、抗生剤投与(ビタミンKを産生している腸内細菌を死滅させる)、閉塞性黄疸(胆汁が存在しないために脂溶性ビタミンであるビタミンKの吸収不全状態になる)などが誘因となりやすいです。

PTの延長によって診断されやすいですが、ビタミンKの補充によって速やかに(半日程度でも)PTが正常化するために、治療診断が手っ取り早いです。

ただし、閉塞性黄疸のような病態では、ビタミンKを経口投与しても吸収されないために、経静脈的に投与するのが基本です。

出血性疾患の種類と治療:インデックス

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:13| 出血性疾患