非重症血友病Aにおけるインヒビター発生率と死亡率
論文紹介です。
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「非重症血友病Aにおけるインヒビター発生率と死亡率」
著者名:Eckhardt CL, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 13: 1217-1225, 2015.
<論文の要旨>
非重症の血友病A(HA)患者の平均余命は、非血友病者の平均寿命と同等です。
しかし、インヒビターを発症した場合の、死亡率や血友病関連死因に対する影響に関するデータは不足しています。
非重症HA患者にインヒビターを発症すると、出血性合併症が重症となるために、臨床転帰は劇的に変化します。
著者らは、非重症HA患者におけるインヒビター発症と死亡率との関連を評価しました。
臨床データは、ヨーロッパとオーストラリアの34医療機関で1980年から2011年の間に治療を受けた非重症HA患者2709名(インヒビター保有者107名)から収集しました。
インヒビター保有の有無で患者死亡率を比較しました。
その結果、追跡期間64,200人・年の間に、148人の患者が死亡しました(死亡率:2.30/1000人・年、中央値年齢:64歳)。
62名(42%)の死因は血友病関連でした。
インヒビター保有患者16名が、中央値年齢71歳で死亡しました。
10名では死亡時にインヒビターが存在していました(7例は重症出血が死因でした)。
インヒビター保有患者での全死因の死亡率は、非保有患者と比較して5倍以上でした。
以上、非重症血友病におけるインヒビター発症は、死亡率の増加と関連していました。
また、非重症血友病において血友病関連の死亡率が高いことは、非重症血友病でも決して軽症と言う訳ではなく、これらの患者でも注意深い経過観察が必要と考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:43| 出血性疾患