血友病におけるインヒビター発症と濃縮製剤の種類
論文紹介です。
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「血友病におけるインヒビター発症と濃縮製剤の種類:欧州血友病安全性監視(EUHASS)プロジェクト4年間の結果」
著者名:Fischer K, et al.
雑誌名:Thromb Haemost 113: 968-975, 2015.
<論文の要旨>
インヒビター発症は、血友病治療の最も深刻な副作用です。
使用する製剤によってインヒビター発症率が異なるかどうかは、臨床的に関心のあるところです。
著者らは、重症血友病AとBにおいて、凝固因子製剤によってインヒビター発症率が異なっているかどうか検討しました。
製剤ごとの有害事象全体をモニターするために、欧州血友病安全性監視(EUHASS)が立ち上げられました。
2008年10月から、インヒビターについては少なくとも年4回報告されました。
治療をうけている患者数は毎年報告され、インヒビターの発症なく50回の投与(未治療患者(PUPs))を完了した患者数を特定しました。
68センターにおいて、2008年10月1日から2012年12月31日までのデータが分析されました。
インヒビターは、重症血友病A PUPsの 108/417(26%)で発症して、重症血友病B PUPsの5/72(7%)で発症しました。
既治療患者(PTPs)に関しては、重症血友病Aでは17,667治療・年で26例のインヒビター発症がみられ、重症血友病Bでは1/2,836のインヒビター発症がみられました。
血漿由来製剤と遺伝子組換え製剤間の差違、各種遺伝子組換え製剤間の差違も検討されました。
結論としては、PUPsとPTPsでインヒビター発症率を確認したところ、製剤の種類による違いは観察されませんでした。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:24| 出血性疾患