金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2015年08月21日

骨髄腫に対するレナリドマイドと後天性血友病A

論文紹介です。

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クロスミキシングテスト


「MMに対するlenalidomide投与中に発症した後天性血友病A

著者名:佐分利益穂、他。
雑誌名:臨床血液 56: 496-500, 2015.


<論文の要旨>

症例は67歳、女性。2009年に貧血、骨病変を認め、症候性多発性骨髄腫IgA-λと診断。Bortezomib, DEX療法後に再発し、2012年にlenalidomide (Len), DEX, CPAで治療を行いました。

10日目に血清クレアチニンが上昇し、Lenを休薬しましたが、APTTが治療開始前の33.7秒から89.5秒に延長していました。

Mixing test でinhibitor patternを示し、FVIII 2%、FVIII inhibitor(INH) 4.85 BU/mlであり後天性血友病Aと診断。

PSLを投与し、INH 1.09BU/mlまで低下しました。

Lenの休薬で血清Crは改善し、Lenの投与を再開したが、INHが再上昇しました。

Lenを中止し、PSL増量、CPA併用でINHは4ヶ月後に消失しました。

Len開始と共にINHが出現し、再投与でINHが上昇した経過からLenによる薬剤性後天性血友病A(AHA)が疑われました。

AHAは重篤な出血を来す自己免疫疾患であり、これまでLen投与と関連が疑われた報告例はなく、稀ながら注意すべき病態です。


薬剤性に関しては、penicillinなどの抗菌薬、phenytoinなどの抗痙攣薬、fludarabine、interferon αなどの報告があります。

これまでLenとの関連が疑われた報告はなく、本例ではLen投与前に正常であったAPTTが投与開始10日後に延長し、PSL投与でINHは低下しましたが、Len再投与でINHは再上昇しました。

免疫抑制療法を中止後、MMが無治療で病勢が進行した後にINHが上昇しなかった経過からも、MMがAHAの原因となった可能性は低く、また他に原因となりうる薬剤の開始や他の悪性腫瘍の合併はなく、Lenによる薬剤起因性のAHAである可能性が高いと考えられました。

実際に、Lenに伴う自己免疫疾患の報告は、血小板減少性紫斑病、心筋炎、バセドウ病、自己免疫性溶血性貧血、寒冷凝集素症など多岐に渡り、Len開始後1ヶ月以内の発症が多いとされています。


AHAは致死的出血を来す病態であり、Len内服中、特に内服開始後1ヶ月以内は慎重に凝固系のスクリーニングを行い、また原因不明の出血症状を来した際にはAHAの可能性も考慮する必要があります。


<リンク>
血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:24| 出血性疾患