FIXa/FX認識バイスぺシフィック抗体ACE910と血友病A治療
論文紹介です。
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「FIXa/FX認識バイスぺシフィック抗体による新規血友病A治療」
著者名:嶋緑倫
雑誌名:臨床血液 56: 623-631, 2015.
<論文の要旨>
血友病Aの未解決の課題は、頻回の経静脈投与、インヒビター陽性例の治療と高額な医療費です。
これらの課題を解決するためにヒト型バイスぺシフィック抗体(ACE910)が開発されました。
本抗体は一方がFIXa、もう一方がFXを認識して両因子を反応しやすい位置関係に維持することによりFVIII代替作用を有します。
サル後天性血友病AモデルにおいてACE910は進行中の出血のみならず自然関節出血に対しても有効でした。
ACE910の薬物動態、薬効および安全性を明らかにするために健常人計64名、血友病A患者18名を対象に第1相臨床試験が我が国で実施されました。
半減期は約30日で、ACE910に関連する重篤な有害事象は見られませんでした。
さらに、ACE910の週1回の皮下投与により出血回数はインヒビターの有無にかかわらず激減しました。
ACE910は長時間作用するために1〜2週毎の皮下投与で、インヒビターの有無に関係なく出血を予防できる長所があるため、血友病患者のQOLが著明に向上する可能性があります。
バイスぺシフィック抗体、ACE910は皮下投与が可能で、半減期が30日と従来のFVIII製剤に比して著明に長く、1〜2週毎の皮下投与で関節内出血が予防できます。
しかもインヒビターの存在下でも同様の効果を呈し、インヒビター出現の危険性もありません。
また、投与の便宜性も高く、出血回数の減少のみならず患者のQOLを各段に向上することが期待されます。
したがって、本製剤は診断後早期から第一選択の治療製剤として使用することが期待されます。
現時点で製剤に起因する有害事象はみられていませんが、抗ACE910抗体が発生する可能性は他の抗体製剤と同様に否定できません。
しかしながら、抗ACE910抗体が発生した場合でも血液凝固機能に影響は与えず、従来のFVIII製剤による補充療法は有効です。
今後の大規模かつ長期間の臨床試験の成績が待たれます。
なお、バイスぺシフィック抗体はカニクイザルを用いた後天性血友病Aの出血モデルで有効性が確認されたことからも後天性血友病Aの新たな治療製剤としての臨床応用も期待されます。
<リンク>
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:31| 出血性疾患