ITP診断時リンパ球数:ピロリ菌除菌療法の効果
論文紹介です。
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「ITP治療における診断時リンパ球数の意義:ピロリ菌感染患者におけるリンパ球数と治療成功との関係」
著者名:Nagata A, et al.
雑誌名:Int J Hematol 101: 268-272, 2015.
<論文の要旨>
免疫性血小板減少症(ITP)は、血小板数減少、血小板破壊の亢進、特異的自己抗体による血小板産生の阻害によって特徴付けられる後天性疾患す。
以前の研究では、ピロリ菌の除菌療法を行うと、ITPは改善すると報告されています。
著者らは、ITPの初期治療と、診断時リンパ球数との関係を検討しました。
対象は、成人ITP患者52例です(1998年3月〜2013年3月)。
標準的なピロリ除菌療法が31人の患者に行われ、この治療の前後のリンパ球数を比較しました。
ITP診断時には、ピロリ菌感染患者におけるリンパ球数は、ピロリ菌陰性患者に比べて有意に高い結果でした(1.92±0.68×109/ L vs.1.42±0.67×109/ L; p = 0.010)。
除菌療法は6/11例(54.5%)で成功し、血小板数は除菌療法が行われた4/11例(36.4%)で増加しました。
一方、除菌療法はピロリ菌感染のない15例でも行われ、9/15例で反応がみられました。
また、除菌療法によってITP完全寛解とならなかった患者よりも完全寛解となった患者で、リンパ球数は有意に高かったです(2.4±0.59×109/ L vs. 1.37±0.60×109/ L、P = 0.0023)。
以上、ITP患者における初期治療の反応性は、診断時のリンパ球数を測定することによって予測可能と考えられました。
リンパ球サブセットやサイトカインネットワークに関しては、今後の検討課題です。
<リンク>
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:15| 出血性疾患