金沢大学第三内科 <血栓止血研究室> 先天性凝固障害
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報からです。
今回は、研究室紹介です。
<血栓止血研究室> 先天性凝固障害
先天性凝固障害の分子病態に関する研究としては、森下および保健学科の学生らを中心に、凝固因子および凝固阻止因子の分子異常について幅広く研究しています。
森下は慶応大学村田満教授を代表とする厚労科研「血液凝固異常症等に関する研究」の「特発性血栓症/先天性血栓性素因」サブグループのグループリーダーとして、先天性血栓性素因を「指定難病」に認定することを目指し、診断基準ならびに重症度分類の作成を行い、昨年10月に厚労省に申請いたしました。
今後、作成した診断基準、重症度分類をさらに検討した後、日本血栓止血学会を通して全国に発信したいと考えております。
さて、先天性血栓性素因の研究面としては、以前から継続しておりますアンチトロンビン(AT)、プロテインC(PC)、プロテインS(PS)などの凝固阻止因子欠乏症の症例の遺伝子解析を行い、その変異部位の同定を行っています。
当研究室が行った141家系204症例の遺伝子解析の結果を図に示します。
変異の割合を見ますと約半数がPS欠乏症であり、日本人ではPS欠乏症、特にPS Tokushima変異が多いとの報告と一致しております。
しかしながら、変異の同定率は33%と極めて悪く、現状の遺伝子解析手法における限界を感じております。
一方、AT欠乏症の変異同定率は91%と良好であります。
PS、PC欠乏症の変異同定率が悪い理由の一つとして、後天性に低下している症例が相当数含まれていることが考えられ、今後は活性値で先天性と後天性とを鑑別できるような手法が必要です。
その一つの方法として、PS Tokushima変異を血漿検体を用いて遺伝子解析をすることなく、ELISA法で検出できる方法を国立循環器病研究センターの宮田先生と共同で開発しました(特許出願済み)。
PS Tokushima変異は一般人口の55人に1人が保因者なので、このキットが今後臨床で有効に利用されることを願っております。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:04| 血栓止血(血管診療)