金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2017年03月10日

CBT(コアカリキュラム)/PT/PT-INRについて

CBT(コアカリキュラム)の復元問題と解説です。

プロトロンビン時間〈PT〉が延長している.活性が低下しているのはどれか.

a 第IV因子
b 第V因子
c 第VI因子
d 第VII因子
e 第VIII因子


(ポイント)
PTは外因系凝固活性化機序を反映した検査です。

血液凝固第VII、X、V、II(プロトロンビン)、I因子(フィブリノゲン)活性の低下で延長します。

(選択肢解説)
a 第IV因子は死語に近いですが、カルシウムイオンを指しています。
カルシウムイオンがないと血液凝固は進行しません。
カルシウムイオンが低下すると純学問的にはPTは延長しますが、問題の文意から第IV因子はナンセンス選択肢と判断します。

b 血液凝固第X、V、II(プロトロンビン)、I因子(フィブリノゲン)活性が低下している場合には、PTもAPTTも延長します。

c 第VI因子は欠番です。ナンセンス選択肢です。

d 第VII因子活性が低下している場合には、PTは延長します(APTTは正常)。

e 第VIII因子活性が低下している場合には、APTTは延長します(PTは正常)。



(正解)b、d

(PT/PT-INRについて)

PT(prothrombin time):プロトロンビン時間

PT-INR(PT-international normalized ratio):プロトロンビン時間国際標準比



正常値

PT:用いる試薬により異なりますが、通常は、10〜12秒程度。
PT-INR:正常値は1.0。ワーファリンコントロール時には、INR 2〜3でコントロールすることが多いです。



意義
PTは、外因系凝固活性化機序を反映する検査です。

すなわち、凝固VII、X、V、II(プロトロンビン)、I(フィブリノゲン)因子の活性低下で、PTは延長します(INRは上昇します)。

PTが延長することと、INRが上昇することは同義です。



INR
ISI:PT試薬ごとに国際感受性指標 (International Sensitivity Index:ISI)が設定されています。
ISIが、1.0に近いPT試薬が好まれます。

PTが延長する(=INRが上昇する)病態
1) ワルファリン内服中:ワルファリンはビタミンKの拮抗薬。ビタミンK欠乏状態に伴い、VII、IX、X、IIの順番で凝固因子活性が低下します。VII因子が最も半減期が短いため、最初に低下します。そのため、ビタミンK欠乏症では、APTTよりもPTの方が先に延長します。


2) ビタミンK欠乏症:同上。


3) 肝不全:凝固因子は肝臓でできるため、肝不全ではPTやAPTTが延長します。
特に、半減期の短い第VII因子を反映するPTは、敏感に延長します。


4) 凝固第VII、X、V因子、プロトロンビン、フィブリノゲンの欠損症または、これらの凝固因子に対するインヒビター。



<リンク>
血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

金沢大学血液内科・呼吸器内科HP

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:31| 医師国家試験・専門医試験対策