金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2017年07月16日

血栓止血関連疾患の検査・治療

平成29年度 血液内科学系統講義試験

平成29年7月12日 水曜日 試験時間 16時00分〜17時00分 (60分間)

問27.    血栓止血関連疾患の検査・治療に関する記載のうち誤っているのはどれか。1つ選べ。

a.    妊娠により血中プロテインS活性が低下する。
b.    健常人は、PT-INR 1.0前後である。
c.    肺塞栓(PE)の再発予防としては直接経口抗凝固薬(DOAC、新規経口抗凝固薬 NOACとも言う)内服が有効である。
d.    オスラー病(遺伝性出血性毛細血管拡張症、遺伝性出血性末梢血管拡張症とも言う)の出血に対しては遺伝子組換え第XIII因子製剤が有効である。
e.    von Willebrand病の出血に対しては血漿由来第VIII因子製剤(コンファクトF)が有効である。





(解説) 
a.    妊娠や、ピルなどの女性ホルモン剤により、血中プロテインS活性が低下します。血栓傾向の原因になります。

b.    健常人は、PT-INR 1.0前後です。ワルファリンコントロール時は、年齢や疾患によって異なりますが、INR2〜3程度でコントロールすることが多いです。

c.    肺塞栓(PE)の再発予防としては直接経口抗凝固薬(DOAC、新規経口抗凝固薬 NOACとも言う)やワルファリンの内服が有効です。アスピリンは無効です。

d.    オスラー病(遺伝性出血性毛細血管拡張症、遺伝性出血性末梢血管拡張症とも言う)の出血に対しては、根治的な治療法はなく、対症療法になります。
第XIII因子製剤は無効です。
なお、
第XIII因子製剤は、IgA血管炎には用いられることがあります。

e.    von Willebrand病の出血に対しては血漿由来第VIII因子製剤(コンファクトF)が有効です。
コンファクトFは、 第VIII因子製剤ですが純度が悪いために、VWFも豊富に含まれます。
なお、
遺伝子組換え第VIII因子製剤には、VWFは含まれませんので、von Willebrand病の出血には無効です。


(正答)   d


 <リンク>
血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:25| 医師国家試験・専門医試験対策