【金沢大学血液内科進級試験過去問題解説】兼:医師国家試験・専門医試験対策
金沢大学血液内科進級試験過去問題(2006年)
(設 問)
患者:23歳女性。
抜歯後の止血困難の精査目的に来院した。血液検査は下記の通りであった。Hb 9.6 g/dL,血小板数 22.9万/μL,出血時間13分,PT11.0秒,APTT 71.2秒,フィブリノゲン 238 mg/dL,FDP 3.5 μg/mL.妹は、幼少時から頻回に鼻出血がみられる。この患者にたいする止血治療として正しいのは下記のうちどれか。
a. 第IX因子の投与
b. 第XIII因子の投与
c. 第VIII因子の投与
d. フィブリノゲンの投与
e. デスモプレシン(DDAVP)の投与
(ポイント)
設問本文は、2005年での出題内容(1つ前の記事)と全く同じである。ただし、選択肢は全て差し替えられており、2005年は検査に関連した選択肢、2006年は治療に関する選択肢である。この設問での診断は、1つ前の記事での記載の通り、von Willbrand病である。
a. 第IX因子濃縮製剤が投与されるのは、血友病Bである。
b. 第XIII因子濃縮製剤が投与されるのは、先天性第XIII因子欠損症、術後の縫合不全や瘻孔、シェーンライン・へノッホ紫斑病における腹部症状,関節症状に対してである。
c. 第VIII因子濃縮製剤が投与されるのは、血友病Aである。
d. フィブリノゲン製剤は、現在ほとんど使用されない。現在、フィブリノゲンを補充したい場合には新鮮凍結血漿(fresh frozen plasma:FFP)が使用される。
e. 抗利尿ホルモンDDAVPは、血管内皮からvon Willbrand因子を放出させる作用があるため、von Willbrand病の止血目的に使用される【国家試験既出】。ただし、DDAVPは連用すると効果が減弱する。またコンファクトF(精製度が低いためにvon Willbrand因子も含有された血漿由来第VIII因子製剤)も、von Willbrand病の止血目的に使用される。遺伝子組換え第VIII因子製剤は、von Willbrand因子が含有されていないため、von Willbrand病に対して無効である。
(医師国家試験対策 & 内科専門医試験対策)
von Willebrand病:出血時間&APTTの延長。PTは正常。vWF&第VIII因子活性が低下する。最も多いtype Iは、常染色体優性遺伝。粘膜出血(鼻出血など)が特徴的。
治療:vWF含有の血漿由来第VIII因子濃縮製剤、DDAVP。
血友病A: APTTの延長。出血時間&PTは正常。第VIII因子活性が低下する。伴性劣性遺伝。関節内出血が特徴的。
治療:第VIII因子濃縮製剤
(血液専門医試験対策)
von Willebrand病のサブタイプによっては禁忌治療があることを理解しておく必要がある。
(答)e
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 16:49 | 医師国家試験・専門医試験対策 | コメント(0) | トラックバック(0)
【金沢大学血液内科進級試験過去問題解説】兼:医師国家試験・専門医試験対策
金沢大学血液内科進級試験過去問題(2005年)
(設 問)(一部改変)
患者:23歳女性。
抜歯後の止血困難の精査目的に来院した。血液検査は下記の通りであった。Hb 9.6 g/dL,血小板数 22.9万/μL,出血時間13分,PT11.0秒,APTT 71.2秒,フィブリノゲン 238 mg/dL,FDP 3.5 μg/mL.妹は、幼少時から頻回に鼻出血がみられる。この患者の検査所見として正しいのは下記のうちどれか。
a. 凝固第VIII因子 98 %
b. 凝固第IX因子 6 %
c. 血小板凝集能のリストセチン凝集の低下
d. 血小板凝集能のADP一次凝集の低下
e. 血小板膜糖蛋白GPIb/IXの発現低下
(ポイント)
本症例では、出血時間の延長と、APTTの延長が特徴的所見である。また、妹も幼少時から鼻出血がみられており、先天性の出血性素因が疑われる。貧血が見られているが、鼻出血のためかも知れない。
疾患は、von Willebrand病が強く疑われる。なお、出血時間&APTTともに延長する先天性出血液素因はvon Willebrand病のみである。
a. von Willebrand病では、von Willebrand因子(vWF)が低下している。vWFは、第VIII因子のキャリアー蛋白であるため、von Willebrand病では第VIII因子も低下する。
b. 凝固第IX因子活性が低下する先天性出血性素因は、血友病Bである。
c. 血小板凝集能のリストセチン凝集の低下はみられるのは、2疾患のみである。von Willebrand病と、Bernard-Soulier症候群である。
d. 血小板凝集能のADP一次凝集の低下がみられるのは、血小板無力症である。
e. 血小板膜糖蛋白GPIb/IXの発現低下がみられるのは、Bernard-Soulier症候群である。なお、血小板膜糖蛋白GPIIb/IIIaの発現低下がみられるのは、血小板無力症である。
(医師国家試験対策 & 内科専門医試験対策)
von Willebrand病:出血時間&APTTの延長。PTは正常。vWF&第VIII因子活性が低下する。最も多いtype Iは、常染色体優性遺伝。粘膜出血(鼻出血など)が特徴的。
血友病A: APTTの延長。出血時間&PTは正常。第VIII因子活性が低下する。伴性劣性遺伝。関節内出血が特徴的。
(血液専門医試験対策)
von Willebrand病のサブタイプ分類が出題されることがある。
(答)C
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 16:19 | 医師国家試験・専門医試験対策 | コメント(0) | トラックバック(0)
【金沢大学血液内科進級試験過去問題解説】兼:医師国家試験・専門医試験対策
金沢大学血液内科進級試験過去問題(2005年)
(設 問)(一部改変)
血栓止血関連疾患の治療に関する記載として正しいのはどれか。
a. 肺塞栓症例の再発予防としては、アスピリンによる抗血小板療法が有効である。
b. 偽性血小板減少症に対しては、副腎皮質ステロイドの投与が半数例で有効である。
c. 単純性紫斑病の若年女性に対しては、ビタミンCの投与が半数例で有効である。
d. 閉塞性黄疸を合併したビタミンK欠乏症に対しては、ビタミンKの内服が有効である。
e. インヒビターを有する血友病A症例の出血に対しては、活性型第VII因子製剤が有効である。
(ポイント)
a. 深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓(PE)の発症(再発)予防目的としては、ワルファリンによる抗凝固療法が有効である。
b. 偽性血小板減少症とは、EDTA採血管内で、血小板の凝集が起きるために、血小板数が実際よりも少なくカウントされてしまうartifactである(血算は通常EDTA採血管を使用)。自動血球計算機で血小板数を測定する際に、凝集した血小板は大きな固まりとなってしまうために自動血球計算機では血小板と認識されないのである。もちろん、偽性血小板減少症は治療の必要はない。なお、クエン酸ナトリウム採血管またはヘパリン採血管で採血することでこのartifactの現象は消失することが多い。
c. 単純性紫斑病は、若年女性でみられやすい。全ての血栓止血関連検査は正常である。放置して支障ない。参考:老人性紫斑
d. 閉塞性黄疸を合併したビタミンK欠乏症に対して、ビタミンKの内服を行っても吸収されないため無効である。ビタミンKを点滴で、経静脈的に投与する必要がある。ビタミンKは脂溶性ビタミンであるため、吸収されるためには胆汁が必要である。
e. インヒビターを有する血友病A症例の出血に対してはバイパス製剤を投与する。近年、活性型第VII因子製剤(商品名:ノボセブン)の使用頻度が増加している。
(医師国家試験対策)
ビタミンK欠乏症になりやすいTrias
1) 食事摂取量の減少:ビタミンKの摂取も低下するため。
2) 抗生剤投与:ビタミンKは腸内細菌から産生されているが、抗生剤投与により腸内細菌が死滅する。
3) 閉塞性黄疸:胆汁が出なくなるために、脂溶性ビタミンであるビタミンKが吸収されなくなる。
ビタミンK依存性凝固因子:VII、IX、X、II
その他のビタミンK依存性蛋白:プロテインC、プロテインS、オステオカルシンなど。
(内科専門医試験対策)
アスピリンとワルファリンの使い分けは理解している必要がある。
・抗血栓療法、抗血小板療法、抗凝固療法
・抗血小板療法 vs. 抗凝固療法
(血液専門医試験対策)
インヒビターを発症した血友病A症例の診断、治療は出題されやすい。
後天性血友病も頻出である。
クロスミキシング試験を解釈できる必要がある(参考記事 ← クリック)。
(答)e
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 07:03 | 医師国家試験・専門医試験対策 | コメント(0) | トラックバック(0)