金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年3月13日

凝固カスケード(検査室&生体内):血液凝固検査入門(14)

凝固カスケード(PT&APTT):血液凝固検査入門(13)から続く。

 

血液凝固検査14

 

 

血液凝固検査入門(インデックスページ) クリック! 血液凝固検査入門シリーズの全記事へリンクしています。

前回の記事で、凝固カスケードの図を、矢印抜きの簡略型で書かせていただきました(ご批判を覚悟の上で)。

血液凝固活性化の最大の意義は止血(hemostasis)にあります。ただし、この同じ血液凝固活性化によって血栓症(thrombosis)も発症してしまいます。ですから、血液凝固活性化機序は良い事も、悪い事もするということになります。

凝固活性化機序には、内因系と外因系の2つの凝固活性化機序がありますが、止血という生理の観点からも、血栓症という病態の観点からも、外因系凝固活性化機序の方がより大きな役割を果たしていると考えられています。

 

さて、前回の図は、臨床検査室における凝固カスケードであることを強調しておきたいと思います。

実は、人間体内での凝固カスケードは少し異なっています。

 

上図で、外因系凝固活性化機序をご覧いただきたいと思います。
前回記事の臨床検査室では、凝固第VII因子は第X因子を活性化する図にいたしました。しかし、人間体内では、凝固第VII因子は第IX因子を活性化するのです。

具体的な疾患で説明を試みたいと思います。
血友病Aは、先天性に第VIII因子が欠損する病気です。
前回記事のような凝固カスケードであるとしますと、VIII因子が無くても内因系よりも重要な外因系凝固活性化機序で、正常に凝固が進行することになってしまいます。

しかし、実際は、血友病Aの患者さんでは止血障害が見られます。
なぜなら、生体内では今回記事の上図のように、やはりVIII因子や、IX因子なしでは、正常な止血が行われないからなのです。

臨床検査室と、生体内で、外因系凝固活性化機序が異なっているのは、組織因子(TF)の量が、試験管レベル(プロトロンビン時間:PT)では大量であるのに対して、生体内では微量であるためと考えられています。TFの量により、第VII因子によって活性化される凝固因子が、IX因子であったりX因子であったりと変わるのです。

現在進行中の血液凝固検査入門シリーズでは、検査の話を中心にしていますので、前回記事の図に戻した上で、また次回移行の記事を進めていきたいと思います。

 

(続く)

プロトロンビン時間(PT-INR):血液凝固検査入門(15)

 
 
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PIC
アンチトロンビン
PT(PT-INR)とは?
PT(ワーファリン)&トロンボテスト
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:47 | 凝固検査 | コメント(0) | トラックバック(0)

凝固カスケード(PT&APTT):血液凝固検査入門(13)

組織因子(TF)と異物:血液凝固検査入門(12)から続く。

 

推薦図書:「臨床に直結する血栓止血学」凝固カスケードを含む血液凝固が詳述されています。

 

血液凝固検査13
 
 

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内因系凝固活性化機序
は、既に記事にさせていただいたように異物による凝固です。凝固第XII、XI、IX、VIII、X、V、II、I因子が関与しています。
活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)は、この凝固機序を試験管レベルで再現しようとした検査です。

外因系凝固活性化機序
は、組織因子(tissue factor:TF)による凝固です。凝固第VII、X、V、II、I因子が関与しています。
プロトロンビン時間(PT)は、この凝固機序を試験管レベルで再現しようとした検査です。

凝固カスケードは、本来であれば多くの矢印を用いて詳細に記載するのが科学的です。
しかし、この科学的記載方法による凝固のカスケードは、多くの人にとって、血液凝固という学問をとっつきにくくする大きな要因になっているようです。


と言うことで、今回は敢えて凝固のカスケードから全ての矢印を割愛した簡易型の凝固カスケードを上図にさせていただきました。血液凝固の専門家から次々とお叱りを受けそうですが、血液凝固学を少しでもなじみ易くしたいというのが趣旨ですので、どうかご容赦いただければと思います。

この簡易型の凝固カスケードで、II因子はプロトロンビンと言う方が一般的ですし、I因子はフィブリノゲンと言う方が一般的です。

なお、念のためですが、第VI因子は欠番です。

何年か前に、この患者さんは先天性第VI因子が疑われますので精査してくださいというコンサルトを受けたことがありますが、先天性第VI因子欠損症は存在しません。
一発でヤブ医者であることがバレてしまいますね。
 
(続く)

凝固カスケード(検査室&生体内):血液凝固検査入門(14)



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