APTTの延長:血液凝固検査入門(22)
電撃性紫斑病とワーファリン:血液凝固検査入門(21)から続く。
第21回日本検査血液学会学術集会(金沢2020年):血栓止血関連プログラムも豊富です。
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前回までの記事では、プロトロンビン時間(PT)のテーマを扱ってきました。今回は、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)です。
APTTの延長するのは、凝固XII、XI、IX、VIII、X、V、II(プロトロンビン)、I(フィブリノゲン)因子活性の低下した場合です。
APTTの延長する有名な疾患(病態)が多数知られています。箇条書きで書かせていただきます。
APTTの延長する疾患(代表的疾患のみ)
1) 血友病A:先天性第VIII因子欠損症です。
2) 血友病B:先天性第IX因子欠損症です。
3) von Willebrand病(フォンヴィレブランド病):先天性von Willebrand因子(vWF)欠損症です。vWFは、第VIII因子のキャリアー蛋白です。ですからvon Willebrand病では、第VIII因子を産生することはできますがvWFがないために第VIII因子は安定して血中に存在できません。von Willebrand病でAPTTが延長するのは、血中第VIII因子活性が低下しているためです。
4) 後天性血友病(第VIII因子インヒビター):第VIII因子活性が低下します。
5) ビタミンK欠乏症:この疾患では、ビタミンK依存性凝固因子である、凝固VII、IX、X、II因子活性が低下します。まず半減期の短い第VII因子が低下しますので、PTの延長が目立ちますが、さらに進行しますとAPTTの延長も目立つようになります。ワーファリン内服も同じです。
6) ループスアンチコアグラント(LA):LA陽性ですと、APTTが延長することがあります。LAは抗リン脂質抗体症候群の診断に不可欠な検査です。ただしLA陽性でも、APTTが延長しないことも多々ありますので、抗リン脂質抗体症候群を疑った場合には、ダイレクトにLA検査を行う必要があります。
7) 肝不全:肝不全ではほとんど全ての凝固因子産生が低下しますので、PT&APTTが延長します。初期には半減期の短い第VII因子をひっかけるPTの延長が目立ちますが、進行しますとAPTTの延長も目立つようになります。
8)検体へのヘパリンの混入:意外と多いです。いわゆるartifactです。ヘパリンロック部位からの採血、透析回路からの採血、動脈留置カテーテルからの採血などでみられることがあります。
(続く)
PT-INRは、以下の記事も御参照いただければと思います。
・PT(PT-INR)とは? 正常値、ワーファリン、ビタミンK欠乏症
・PT-INRとは(正常値、PTとの違い、ワーファリン)?
・ PIC
・ アンチトロンビン
・ PT(PT-INR)とは?
・ PT(ワーファリン)&トロンボテスト
・ APTT
・クロスミキシング試験
・ Dダイマー
・ DICの病態、診断、治療:リンク先から更に他のヘパリン類やDIC関連記事がリンクされています!
・NETセミナー:血栓症と抗血栓療法のモニタリング
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:09 | 凝固検査 | コメント(0) | トラックバック(0)