2013年06月04日
医師国家試験:APTT延長、筋肉内出血
医師国家試験対策
13歳の男子
左殿部の痛みを主訴に来院した。2日前、運動後に左殿部の痛み自覚し、その後同部に腫れも出現した。同様のエピソードは過去に経験したことがないという。
意識は清明。体温36.2℃。脈拍54/分、整。血圧116/72mmHg。左殿部は硬く腫脹し、圧痛を認める。発赤と皮診とを認めない。
血液所見:赤血球375万、Hb11.2g/dl、Ht35%、白血球6,800、血小板38万、PT11.0秒(基準10〜14)、APTT56.0秒(基準対照32.2)、フィブリノゲン220mg/dl(基準200〜400)、血清FDP12μg/dl(基準10以下)。CRP0.3mg/dl。
【ポイント】
運動後に左臀部の痛みが見られた13歳の男子です。
痛みの部位に腫れを伴っていて、圧痛があります。
特に打撲した訳ではないにもかかわらず、左臀部に痛みを伴う腫脹を生じてきた点が特徴です。
確定診断のためにはCTが必要ですが、筋肉内出血が疑われます。
出血症状の中には、部位が疾患に特徴的なものがあり、診断を絞り込んでいける場合があります。
特徴的な出血部位からのアプローチ
1) 関節内出血:血友病A&B。
2) 筋肉内出血:血友病A&B、後天性血友病(第VIII因子インヒビター)。
3) 粘膜出血(鼻出血など): von Willebrand病。
4) 四肢末梢(特に下肢)の左右対照性紫斑:アレルギー性紫斑病。
5) 臍帯出血:先天性第XIII因子欠損症。
6) 高齢者で前腕伸側、手背の紫斑(赤紫色で境界明瞭):老人性紫斑
7) タール便(黒色便):胃、十二指腸などからの出血。
【病態】
血液検査では、APTTの明らかな延長が見られています。血小板数正常、PT正常であることも押さえておく必要があります。
FDPがごく僅かに上昇しているが、筋肉内血腫のためではないかと推測されます。FDPは血栓や血腫中に存在するフィブリンが分解されると形成されます。本症例では血腫中に形成されたFDPの一部が流血中に入ったと考えられます。
APTT延長、筋肉内血腫、男性とくれば、血友病です。
確定診断のためには、凝固因子活性の測定が必要です。第VIII因子活性が低下していれば血友病A、第IX因子が低下していれば血友病Bです。
Von Willebrand病でもAPTTの延長がみられますが、粘膜出血(鼻出血など)が特徴的です。
なお本症例ではみられていませんが、血友病では筋肉内血腫以上に有名なのが関節内出血です。
血友病は伴性劣性遺伝するために、男性のみの疾患です。
後天性血友病(第VIII因子に対する自己抗体が出現する)も完全に否定はできませんが、本疾患は男性では高齢者に発症しやすいです(女性では妊娠、出産を契機に発症することがあります)。
後天性血友病においても筋肉内出血がみられますが、不思議なことに関節内出血はまずみられません。
APTTの延長する疾患
(I)出血性疾患
1. 血友病A:第VIII因子活性低下
2. 血友病B:第IX因子活性低下
3. von Willebrand病:von Willebrand因子(VWF)低下。VWFは第VIII因子のキャリア蛋白でもあり、第VIII因子も低下してAPTTが延長する。
4. ビタミンK欠乏症:ただし、PTの延長の方が遥かに目立つ(PTは半減期の短い第VII因子も反映するため)。
5. 先天性X、V、II因子欠損症:PTも延長する。
6. 先天性XI因子欠損症:出血症状がないことも多い。
(II)血栓性疾患
1. 抗リン脂質抗体症候群(APS):ループスアンチコアグラントが陽性の場合にAPTTが延長しやすい。
2. 先天性XII因子欠損症:不思議なことに出血症状ではなく血栓傾向になる。
【治療】
血友病の出血に対しては、血液凝固因子製剤が有効です。
血友病Aでは第VIII因子製剤、血友病Bでは第VIII因子製剤を用いるために、血友病AなのかBなのかの診断がなされていないと治療できません。
【参考】
筋肉内出血をきたした男子です。APTTの延長が見られている点が注目されます。
<リンク>
痛みの部位に腫れを伴っていて、圧痛があります。
特に打撲した訳ではないにもかかわらず、左臀部に痛みを伴う腫脹を生じてきた点が特徴です。
確定診断のためにはCTが必要ですが、筋肉内出血が疑われます。
出血症状の中には、部位が疾患に特徴的なものがあり、診断を絞り込んでいける場合があります。
特徴的な出血部位からのアプローチ
1) 関節内出血:血友病A&B。
2) 筋肉内出血:血友病A&B、後天性血友病(第VIII因子インヒビター)。
3) 粘膜出血(鼻出血など): von Willebrand病。
4) 四肢末梢(特に下肢)の左右対照性紫斑:アレルギー性紫斑病。
5) 臍帯出血:先天性第XIII因子欠損症。
6) 高齢者で前腕伸側、手背の紫斑(赤紫色で境界明瞭):老人性紫斑
7) タール便(黒色便):胃、十二指腸などからの出血。
【病態】
血液検査では、APTTの明らかな延長が見られています。血小板数正常、PT正常であることも押さえておく必要があります。
FDPがごく僅かに上昇しているが、筋肉内血腫のためではないかと推測されます。FDPは血栓や血腫中に存在するフィブリンが分解されると形成されます。本症例では血腫中に形成されたFDPの一部が流血中に入ったと考えられます。
APTT延長、筋肉内血腫、男性とくれば、血友病です。
確定診断のためには、凝固因子活性の測定が必要です。第VIII因子活性が低下していれば血友病A、第IX因子が低下していれば血友病Bです。
Von Willebrand病でもAPTTの延長がみられますが、粘膜出血(鼻出血など)が特徴的です。
なお本症例ではみられていませんが、血友病では筋肉内血腫以上に有名なのが関節内出血です。
血友病は伴性劣性遺伝するために、男性のみの疾患です。
後天性血友病(第VIII因子に対する自己抗体が出現する)も完全に否定はできませんが、本疾患は男性では高齢者に発症しやすいです(女性では妊娠、出産を契機に発症することがあります)。
後天性血友病においても筋肉内出血がみられますが、不思議なことに関節内出血はまずみられません。
APTTの延長する疾患
(I)出血性疾患
1. 血友病A:第VIII因子活性低下
2. 血友病B:第IX因子活性低下
3. von Willebrand病:von Willebrand因子(VWF)低下。VWFは第VIII因子のキャリア蛋白でもあり、第VIII因子も低下してAPTTが延長する。
4. ビタミンK欠乏症:ただし、PTの延長の方が遥かに目立つ(PTは半減期の短い第VII因子も反映するため)。
5. 先天性X、V、II因子欠損症:PTも延長する。
6. 先天性XI因子欠損症:出血症状がないことも多い。
(II)血栓性疾患
1. 抗リン脂質抗体症候群(APS):ループスアンチコアグラントが陽性の場合にAPTTが延長しやすい。
2. 先天性XII因子欠損症:不思議なことに出血症状ではなく血栓傾向になる。
【治療】
血友病の出血に対しては、血液凝固因子製剤が有効です。
血友病Aでは第VIII因子製剤、血友病Bでは第VIII因子製剤を用いるために、血友病AなのかBなのかの診断がなされていないと治療できません。
【参考】
筋肉内出血をきたした男子です。APTTの延長が見られている点が注目されます。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:48| 医師国家試験・専門医試験対策