急性咳嗽:咳嗽の診断と治療(3)
咳嗽の定義 & 性状:咳嗽の診断と治療(2)からの続きです。
【急性咳嗽】
急性咳嗽(がいそう)の原因疾患を以下に示します。
1.胸部X線で異常を認める重篤な疾患
a. 心血管系疾患: 肺血栓塞栓症、うっ血性心不全
b. 感染症: 肺炎、肺結核
c. 悪性腫瘍: 原発性・転移性肺腫瘍
d. 免疫アレルギー的機序: 各種間質性肺疾患
2.胸部X線で異常を認めない場合のある感染性疾患
普通感冒、急性気管支炎、マイコプラズマ感染、クラミジア感染、百日咳、インフルエンザウイルス感染、慢性気道疾患急性増悪、急性鼻副鼻腔炎、RSウイルス感染、ヒトメタニューモウイルス感染
3.遷延性・慢性咳嗽の原因疾患の初発
気管支喘息、咳喘息、アトピー咳嗽、鼻副鼻腔炎、GERD、ACE阻害薬
4.健常成人ではまれな疾患:誤嚥、気道内異物など
急性咳嗽のアウトラインを以下の図に示します。

急性咳嗽のなかで最も頻度の高いのは、感染性疾患です。その中でも鼻腔から喉頭までの上気道のウイルス感染によるかぜ症候群の頻度が最も高いです。特に治療を行わなくとも自然治癒することが多いです。
その後、咳嗽の持続期間が長くなってきますと、非感染性疾患による遷延性・慢性咳嗽の頻度が増加してきます。
また、急性咳嗽の診療を行う場合には、全ての遷延性咳嗽と慢性咳嗽が発症当初は急性咳嗽の形をとるため、急性咳嗽の診断においても遷延性および慢性咳嗽の原因疾患に対する知識が要求されることになります。
(続く)
【シリーズ】 咳嗽の診断と治療
1)ガイドライン
3)急性咳嗽
5)咳嗽の発症機序
7)咳喘息
10) 胃食道逆流症(GERD)
11)慢性咳嗽&ガイドライン
【関連記事】 好酸球性下気道疾患
2)咳喘息
【関連記事】NETセミナー
慢性咳嗽の診療
非小細胞肺癌治療の最前線
肺がんに気づくサイン
【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:11 | 咳嗽ガイドライン | コメント(0) | トラックバック(0)
咳嗽の定義 & 性状:咳嗽の診断と治療(2)
ガイドライン:咳嗽の診断と治療(1)からの続きです。
「咳嗽に関するガイドライン」に関連した記事を続けます。今回は咳嗽の定義と性状です。
【咳嗽の定義】
<咳嗽の持続期間>
● 急性咳嗽 (acute cough):3週間未満の咳嗽。
● 遷延性咳嗽 (prolonged cough):3週間以上持続する咳嗽。
● 慢性咳嗽 (chronic cough):8週間以上持続する咳嗽。
<咳嗽の性状>
● 乾性咳嗽:
喀痰を伴わない、あるいは少量の漿液性喀痰を伴う咳嗽。
咳嗽そのものが苦痛となる病的咳嗽です。咳嗽そのものが治療対象となります。
● 湿性咳嗽:
喀痰を喀出するための咳嗽。
生体防御機構としての生理的咳嗽です。気道の過分泌が治療対象となります。
● 狭義の慢性咳嗽
8週間以上持続する咳嗽が唯一の症状であり、胸部単純X線検査やスパイログラフィーなどの一般検査や身体所見では原因を特定できない咳嗽です。
(続く)
【シリーズ】 咳嗽の診断と治療
1)ガイドライン
3)急性咳嗽
5)咳嗽の発症機序
7)咳喘息
10) 胃食道逆流症(GERD)
11)慢性咳嗽&ガイドライン
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2)咳喘息
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ガイドライン:咳嗽の診断と治療(1)
【咳嗽ガイドラインの背景】
(日本)
日本呼吸器学会「咳嗽に関するガイドライン」が発刊(2005年9月)。
(欧米)
1998年:ACCPからevidence-based consensus panel reportとして「Managing Cough as a Defense Mechanism and as a Symptom」 が発刊。
2006年:ACCPから改訂版「Diagnosis and management of cough: ACCP evidence-based clinical practice guidelines」が発刊。
2006年:英国で「Recommendations for the management of cough in adults」が発刊。
【慢性咳嗽の主要な原因疾患】各ガイドラインの記載内容

【咳嗽の三大原因疾患】
欧米
1) 鼻・副鼻腔疾患による咳嗽
2) 胃食道逆流による咳嗽
3) 喘息性咳嗽(咳喘息)
日本
1) 咳喘息
2) アトピー咳嗽
3) 副鼻腔気管支症候群
鼻・副鼻腔疾患による咳嗽と胃食道逆流による咳嗽の咳嗽発生機序が明確には解明されていないこと、人種や地域性が異なることなどが欧米と我が国の咳嗽原因疾患の相違の原因となっている可能性があります。
【ガイドライン作成へ】
上記のような背景に基づいて、我が国の実地臨床に役立てることを目的とした独自のガイドラインが作成されました。
これまでにも欧米では咳嗽に関するconsensus reportが執筆されていますし、日本においても用いられてきました。しかし、上記のように本邦の咳嗽患者の原因疾患と欧米のそれとが必ずしも一致しません。
この度のガイドラインは、従来の欧米からの報告にとらわれない、我が国独自のものとなっています。また、呼吸器の専門医のみではなく、むしろ一般臨床医に使用していただくことを目標にしています。ですから、市中の一般病院や診療所においても実施可能な診断的治療をフローチャートで示すことが心がけられているのです。
(続く)
【シリーズ】 咳嗽の診断と治療
1)ガイドライン
3)急性咳嗽
5)咳嗽の発症機序
7)咳喘息
10) 胃食道逆流症(GERD)
11)慢性咳嗽&ガイドライン
【関連記事】 好酸球性下気道疾患
2)咳喘息
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非小細胞肺癌治療の最前線
肺がんに気づくサイン
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