溶血性貧血の診断基準(厚生労働省研究班):溶血性貧血(2)
赤血球寿命:溶血性貧血(1)からの続きです。
【溶血性貧血の診断 】
溶血性貧血の診断は、厚労省特定疾患 特発性造血障害に関する調査研究班(小峰光博班) が作成した診断基準に基づいて行うのが良いでしょう(以下の通りです)。
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溶血性貧血の診断基準(厚労省研究班:平成16年)
1. 臨床所見として、通常貧血と黄疸を認め、しばしば脾腫を触知する。ヘモグロビン尿や胆石を伴うことがある。
2. 以下の検査所見がみられる。
1) ヘモグロビン濃度低下
2) 網赤血球増加
3) 血清間接ビリルビン上昇
4) 尿中・便中ウロビリン体増加
5) 血清ハプトグロビン値低下
6) 骨髄赤芽球増加
3. 貧血と黄疸を伴うが、溶血を主因としない他の疾患(巨赤芽球性貧血、骨髄異形成症候群、赤白血病、congenital dyserythropoietic anemia、肝胆道疾患、体質性黄疸など)を除外する。
4. 1および2により溶血性貧血を疑い、3により他疾患を除外し、診断の確実性を増す。
しかし、溶血性貧血の診断だけでは不十分であり、特異性の高い検査により病型を確定する。
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上記の診断基準にある便中ウリビリン体検査は省略されることが多いです。
診断基準以外では、LDH上昇(1-2型優位)も有用な所見です。
診断基準上は骨髄検査が必須ですが、1)貧血以外に血球数の異常がなく、2)末梢血中に幼若顆粒球・赤芽球がみられないなど血液悪性疾患を支持する徴候がない、3)骨髄検査を安 全に実施できる医師がいない、4)クームズ試験陽性など、条件によっては骨髄検査を留保 する場合もありえます。
なお、フェロキネティクスや赤血球寿命測定は不要です(むしろ 実施可能な施設は少ないです)。
【溶血性貧血】
1)赤血球寿命
2)溶血性貧血の診断基準(厚生労働省研究班)
3)溶血性貧血の病型分類
4)自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の診断
5)発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の診断
6)自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の治療
7)発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療
8)溶血性貧血の治療(海外との比較)
【関連記事】NETセミナー
汎血球減少のマネジメント:特に骨髄不全について
造血幹細胞移植
貧血患者へのアプローチ
輸血後鉄過剰症と鉄キレート療法
血液内科に関する研修医からのQ&A
【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:51 | 溶血性貧血 | コメント(0) | トラックバック(0)
赤血球寿命:溶血性貧血(1)
【溶血性貧血】hemolytic anemia
溶血性貧血とは赤血球(RBC)の破壊亢進により起こる貧血です。
ただし、赤血球の破壊速度が正常の6〜8倍、つまり通常の赤血球寿命120日が短縮しても赤血球寿命が20〜15日までにとどまりますと、骨髄の赤血球造血亢進で代償されるために貧血にはなりません。
換言しますと、これ以上の速度で赤血球の破壊を生じますと、貧血をきたします。
赤血球膜の先天性異常など生来溶血が続きましても、成人になるまで貧血にならないことがあるのはこのためなのです。
この後、溶血性貧血関連のブログ記事をシリーズで、発信してまいりたいと思います。
【溶血性貧血】
1)赤血球寿命
2)溶血性貧血の診断基準(厚生労働省研究班)
3)溶血性貧血の病型分類
4)自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の診断
5)発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の診断
6)自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の治療
7)発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療
8)溶血性貧血の治療(海外との比較)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:50 | 溶血性貧血 | コメント(0) | トラックバック(0)
咳喘息・アトピー咳嗽・非喘息性好酸球性気管支炎の関係:好酸球性下気道疾患(4)
前回記事(アトピー咳嗽 & 非喘息性好酸球性気管支炎:好酸球性下気道疾患(3))より続きます。
関連記事(日本語の表あり):アトピー咳嗽 vs. 咳喘息:咳嗽の診断と治療(8)
【咳喘息・アトピー咳嗽・非喘息性好酸球性気管支炎の関係】
咳喘息(CVA)に関するCorraoらの原著論文には、2つのキーワードがあります。
1)気管支拡張薬が有効な咳嗽
2)気道過敏性が軽度亢進
わが国では「気管支拡張薬が有効な咳嗽」を重要視したために、アトピー咳嗽(AC)(気管支拡張薬が無効な咳嗽)が登場し、欧米では後者を重要視したために非喘息性好酸球性気管支炎(NAEB)(気道過敏性が正常な咳嗽)が登場した歴史があります。
ここで重要なことは、慢性乾性咳嗽の発生機序に少なくとも次の二つがあることです。
1)気管支平滑筋収縮がトリガーとなる咳嗽:咳喘息(CVA)
2)気道表層の咳受容体感受性が亢進して発生する咳嗽:アトピー咳嗽(AC)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬による咳嗽、胃食道逆流症
さらに、咳感受性と気管支平滑筋は全く相互作用を持たないことも重要です。
【咳喘息(CVA)の認識】:気道過敏性と気管支拡張薬の有効性

上図【1】に示したように、気管支拡張薬の有効性を重要視した場合にはArea CとArea Dが、気道過敏性亢進を重要視した場合にはArea AとArea Cが、咳喘息(CVA)と認識されることになります。
そして、それぞれの裏がアトピー咳嗽(AC)(気管支拡張薬無効)と非喘息性好酸球性気管支炎(NAEB)(気道過敏性正常)となります。したがって、気道過敏性亢進と気管支拡張薬の有効性に強い相関があるか否かが、わが国と欧米の咳喘息(CVA)認識の不一致性を大きく左右することになります。

上図【2】に、金沢大学呼吸器内科が診療した慢性乾性咳嗽患者の気管支拡張薬の有効性とメサコリン気道過敏性の関係をプロットしてみました。まず、両者の間には相関を認めないことが明らかです。したがって、気道過敏性亢進が気管支拡張薬の有効性を示さないことになります。
そして問題は、上図【2】に円で囲んだ症例の診断です。日本では咳喘息(CVA)と診断することができますが、欧米ではこのような病態の報告はみられません。なぜならば、気管支拡張薬の有効性を評価していないからです。したがって、咳嗽の発生機序に基づいたわが国における咳喘息(CVA)の認識は、将来の病態的診断への進歩に伴い、より有効な治療法の開発につながる優れたものと考えられます。
【アトピー咳嗽と非喘息性好酸球性気管支炎】
前述したように、咳喘息(CVA)に関する日本と欧米の認識の違いによってアトピー咳嗽(AC)と非喘息性好酸球性気管支炎(NAEB)が生まれました。
以前の記事の表1&2に示したように、非喘息性好酸球性気管支炎(NAEB)は病理学的には咳喘息に類似し、生理学的にはアトピー咳嗽(AC)に類似します。そして予後は咳喘息(CVA)に類似します。
【まとめ】
以上のように咳喘息(CVA)の考え方が日本と欧米で異なるため、日本ではアトピー咳嗽(AC)が、欧米では非喘息性好酸球性気管支炎(NAEB)が慢性咳嗽を呈する好酸球性下気道疾患として認識されています。
現在の慢性咳嗽の診断は治療的に行われていますが、自然軽快やプラセボー効果の問題、特異的治療が効果的でない場合(重症や難治性)には診断が不能となる問題などがあります。
したがって、咳嗽の発生機序を含めた病態的診断法の開発が将来の重要課題と考えられます。
【シリーズ】 好酸球性下気道疾患
2)咳喘息
【関連記事】 咳嗽の診断と治療 <推薦>
1)ガイドライン
3)急性咳嗽
5)咳嗽の発症機序
7)咳喘息
10) 胃食道逆流症(GERD)
11)慢性咳嗽&ガイドライン
【関連記事】
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肺がんに気づくサイン
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:49 | 咳嗽ガイドライン | コメント(0) | トラックバック(0)