ビタミンK欠乏症の原因:血液凝固検査入門(20)
PT-INRとPIVKA-II:血液凝固検査入門(19)から続く。
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ビタミンK欠乏症では、重症の場合には全身各部からの出血が見られます。本来であれば、そうならないように定期的にPT(PT-INR)を測定して早期診断すべきなのですが、残念ながら診断が遅れてしまうことがない訳ではありません。
さて、どういう場合にビタミンK欠乏症になりやすいのでしょうか?
ビタミンK欠乏症になりやすいTriasが知られています。
1) 食事摂取量の低下:
これは分かり易いと思います。食事摂取量が低下しますと、ビタミンKの摂取量も低下するからです。
2) 抗生剤の投与:
実はビタミンKは、自分の体内も供給源になっています。腸内細菌がビタミンKを産生してくれているのです。抗生剤が投与されますと、腸内細菌が死滅するために、ビタミンKの供給が低下してビタミンK欠乏症になりやすくなります。
3) 閉塞性黄疸:
ビタミンKは脂溶性ビタミンですので、その吸収には胆汁を必要とします。閉塞性黄疸では、胆汁が腸内に排泄されなくなりますので、ビタミンKの吸収ができなくなるのです。
上記の3つがそろいますと、最もビタミンK欠乏症になりやすくなります。
たとえば、胆石嵌頓(かんとん)で閉塞性黄疸をきたし、胆嚢炎を合併していて抗生剤を投与している、高熱のため食事をとれないと言った場合です。
上記の3つの要素はいずれも重要だと思いますが、管理人の経験では、抗生剤の投与は必ず要素として含まれていた症例がほとんどだったと思います。
換言しますと、抗生剤投与中の患者さんでは、定期的にPT(PT-INR)を含めて凝固検査を行っておく方が良いと言えます。
(続く)
PT-INRは、以下の記事も御参照いただければと思います。
・ PIC
・ アンチトロンビン
・ PT(PT-INR)とは?
・ PT(ワーファリン)&トロンボテスト
・ APTT
・クロスミキシング試験
・ Dダイマー
・ DICの病態、診断、治療:リンク先から更に他のヘパリン類やDIC関連記事がリンクされています!
・NETセミナー:血栓症と抗血栓療法のモニタリング
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 03:35 | 凝固検査 | コメント(0) | トラックバック(0)
PT-INRとPIVKA-II:血液凝固検査入門(19)
PT-INRとワーファリン:血液凝固検査入門(18)から続く。
前回の記事でも書かせていただいたように、ビタミンK欠乏状態(後天性出血性素因の一つ)で最初に低下する凝固因子は、第VII因子です。ですから、ビタミンK欠乏症のスクリーニング検査は、APTTではなく、プロトロンビン時間(PT:PT-INRも同義)です。
PTの延長でビタミンK欠乏症が疑われた場合には、次にPIVKA-IIを測定して陽性であることを確認します。PIVKA-IIは、protein induced by vitamin K absence-IIの略称です。文字通り、ビタミンK欠乏状態で誘導される蛋白であるプロトロンビン(II)です。
ただし、注意が必要です。PIVKA-IIは、ビタミンK欠乏状態でも血中に出現しますが、肝細胞癌の腫瘍マーカーとしても知られています。
また、逆の意味での注意も必要です。ワーファリン内服中の場合には、PIVKA-IIは著増しますが、もちろんこれは肝細胞癌の存在を意味する訳ではありません。もっとも、ワーファリン内服中の患者さんでPIVKA-IIを測定すること自体ナンセンスですが。。。
また、ビタミンK欠乏症の診断は、しばしば治療診断が有効です。ビタミンKを補充することにより(通常は経静脈的に投与)、延長していたPTが、半日程度で速やかに是正されます。
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・ PIC
・ アンチトロンビン
・ PT(PT-INR)とは?
・ PT(ワーファリン)&トロンボテスト
・ APTT
・クロスミキシング試験
・ Dダイマー
・ DICの病態、診断、治療:リンク先から更に他のヘパリン類やDIC関連記事がリンクされています!
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