DIC臨床検査所見、PT、APTT、出血時間(CBT)
CBTの再現問題と解説です。
DICでみられるのはどれか.
a 出血時間正常,PT正常,APTT正常
b 出血時間正常,PT正常,APTT延長
c 出血時間正常,PT延長,APTT正常
d 出血時間正常,PT延長,APTT延長
e 出血時間延長,PT正常,APTT正常
f 出血時間延長,PT正常,APTT延長
g 出血時間延長,PT延長,APTT正常
h 出血時間延長,PT延長,APTT延長
(解説)
DICの診断には、血液凝固検査の評価が不可欠です。
本問には登場しませんが、FDP、D-ダイマーはもっとも重要なマーカーです。
(正解)h
(ポイント)
播種性血管内凝固症候群(DIC)の臨床検査所見
1.基礎疾患の存在.
2.出血症状の存在.
3.臓器症状の存在.
4.血小板数の低下
5.血中FDP(D-ダイマー)の上昇
6.血中フィブリノゲンの低下
7.プロトロンビン時間(PT)の延長(進行例でのみAPTTの延長もみられることあり)
8.アンチトロンビン (AT)の低下:消費性凝固障害の一環として、活性型凝固因子と1:1結合。
9.プラスミノゲンの低下、α2プラスミンインヒビター(α2PI)の低下。消費性凝固障害の一環として、二次線溶に伴い消費される。特に、線溶亢進型DICの典型例では、α2PIは著減する。
3. トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)、可溶性フィブリン(SF)の上昇。
4. プラスミン-α2PI複合体(PIC) の上昇。特に、線溶亢進型DICの典型例では、PICは著増。
(備考)
本問では、APTTの延長を正解にして良いですが、実臨床ではAPTTの延長しないDICも多いです。
DICの病型分類
線溶抑制型DIC:敗血症などの重症感染症。臓器症状がみられやすいです。
線溶亢進型DIC:急性前骨髄球性白血病(APL)、大動脈瘤、巨大血管腫、前立腺癌など。出血症状がみられやすいです。
線溶均衡型DIC;固形癌など(ただし一部の癌は線溶亢進型DIC)。
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DICの基礎疾患(CBT)
CBTの再現問題と解説です。
DICの基礎疾患として誤っているのはどれか.
a 敗血症
b 羊水塞栓症
c 重症急性膵炎
d 腹部大動脈瘤破裂
e ビタミンK欠乏症
(解説)
DICでは多くの基礎疾患が存在します。
三大基礎疾患は、敗血症、固形癌、急性白血病です。
その他、産科合併症、大動脈瘤、急性膵炎など。
a 敗血症は、線溶抑制型DICを合併します。臓器症状が見られやすいです。
b 産科合併症の、常位胎盤早期剥離や羊水塞栓症などでは、線溶亢進型DICを合併します。
大出血が見られやすいです。
c 重症急性膵炎は、DICの基礎疾患の一つです。
d 大動脈瘤、解離性大動脈瘤では、線溶亢進型DICを合併します。
e ビタミンK欠乏症はPT延長が見られる出血性疾患ですが、DICとは無関係です。
(正解)e
(ポイント)
DICの基礎疾患
1. 感染症:敗血症、その他の重症感染症
2. 造血器悪性腫瘍:急性前骨髄球性白血病(APL)、その他の急性白血病、悪性リンパ腫など
3. 固形癌(通常は転移を伴った進行癌)
4. 組織損傷:外傷、熱傷、熱中症、横紋筋融解症
5. 手術後
6. 血管関連疾患:大動脈瘤、解離性大動脈瘤、巨大血管腫
7. 肝障害:劇症肝炎、急性肝炎、肝硬変
8. 急性膵炎
9. ショック
10. 溶血、血液型不適合輸血
11. 蛇咬傷
12. その他
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鼻出血、紫斑、血小板低下(CBT)
CBTの再現問題と解説です。
21歳の女性.
学生.鼻出血が止まらないため来院.
下肢に紫斑が見られる.
検査の結果,赤血球360万,白血球6000,血小板2万,PT・APTT正常.骨髄穿刺像を示す.
この疾患で見られるのはどれか.
(骨髄像:巨核球の増加)
a 補体上昇
b フェリチン上昇
c 直接ビリルビン値上昇
d 抗血小板抗体
e 破砕赤血球の出現
(解説)
a 本症例は、特発性血小板減少性紫斑病(ITP:近年は免疫性血小板減少性紫斑病、免疫性血小板減少症ともいう)です。補体の変化は見られません。
b フェリチンの低下する代表的疾患は鉄欠乏性貧血など、増加する代表的疾患はヘモクロマトーシス、血球貪食症候群などです。
ITPでは出血のために、鉄欠乏性貧血を合併することがあります。
c 直接ビリルビン値は、肝胆道系疾患などで上昇します。間接ビリルビン値は、溶血などで上昇します。
d ITPでは血小板に対する自己抗体が出現して、脾臓で血小板が破壊されます。
e 破砕赤血球は、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、溶血性尿毒症症候群、HELLP症候群などで出現します。
(正解)d
(ポイント)
特発性血小板減少性紫斑病(免疫性血小板減少性紫斑病:ITP)
血小板に対する自己抗体が産生され、血小板の破壊(脾で)が亢進し、血小板寿命は短縮し出血傾向をきたします。
小児科領域では,先行感染を伴った急性型が多いのに対して(しばしば自然治癒)、内科領域では、先行感染のない慢性型が多いです(女性に多いです)。
【症状】
点状出血、粘膜出血など。
【検査&診断】
・血小板数の低下(PT&APTTは正常)。
・他血液疾患の除外(除外診断)。特に,MDSは確実に否定。
・骨髄巨核球の増加:末梢での血小板破壊に対する反応。
・血小板結合性IgG(PAIgG)の上昇。
【治療】
1)血小板数が数万以上では無治療で経過観察。
2)血小板数が2-3万以下で出血があれば、副腎皮質ステロイド。
3)無効例では,摘脾術を考慮。摘脾術に際して,免疫グロブリン大量療法。
4)ピロリ菌の除菌療法:ピロリ菌陽性の場合はまず考慮。
5)トロンボポエチン受容体作動薬
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血友病とビタミンK欠乏症の鑑別(CBT)
CBTの再現問題と解説です。
血友病とビタミンK欠乏症の鑑別に有用な値はどれか.
a APTT
b PT
c フィブリノゲン濃度
d 血小板数
e 出血時間
(解説)
a 血友病A(第VIII因子の先天性欠損)、血友病B(第IX因子の先天性欠損)のいずれであっても、APTTは延長します(PTは正常)。
ビタミンK欠乏症では、重症例ではPTのみならずAPTTも延長します。
ただし、軽症例ではPTのみ延長が見られ、APTT延長は見られないことも多いです。
b 血友病ではPT延長は見られません。ビタミンK欠乏症では、PT延長が特徴的です。
c 血友病とビタミンK欠乏症ともに、フィブリノゲン濃度は正常です。
d 血友病とビタミンK欠乏症ともに、血小板数は正常です。
e 血友病とビタミンK欠乏症ともに、出血時間は正常です。
出血時間が延長するのは、
1)血小板数の低下
2)血小板機能の低下
3)血管壁の脆弱性の存在
の3つの場合のみです。
(正解)b
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PT正常,APTT延長,出血時間延長(CBT)
CBTの再現問題と解説です。
PT正常,APTT延長,出血時間延長.考えられる疾患はどれか.
a 血友病
b von Willebrand病
c 特発性血小板減少性紫斑病
d 血小板無力症
e 溶血性尿毒症症候群
(解説)
PT、APTT、出血時間それぞれの検査で、延長する疾患・病態を理解の上、記憶しておく必要があります。
a 血友病A(第VIII因子の先天性欠損)、血友病B(第IX因子の先天性欠損)のいずれであっても、APTTは延長しますが、出血時間は正常です(PTも正常)。
b von Willebrand病では、von Willebrand因子(VWF)が先天性に低下して血小板粘着能が低下する(血小板機能が低下する)ために、出血時間は延長します。
VWFは第VIII因子のキャリアー蛋白でもあり、von Willebrand病では第VIII因子活性も低下します。
そのために、APTTも延長します(PTは正常)。
c 特発性血小板減少性紫斑病(近年は免疫性血小板減少性紫斑病、免疫性血小板減少症ともいう)では、血小板数が低下するために、出血時間は延長します。PT、APTTは正常です。
d 血小板無力症は、血小板凝集能が低下する(血小板機能が低下する)先天性疾患です。
出血時間は延長しますが、PT、APTTは正常です。
e 溶血性尿毒症症候群は、血小板数が低下するために、出血時間は延長します。PT、APTTは正常です。
(正解)b
(ポイント)
<出血時間の延長する代表的疾患など>
1) 血小板数の低下:特発性血小板減少性紫斑病(ITP)ほか多数。
2) 血小板機能の低下:血小板無力症、von Willebrand病、Bernard-Soulier症候群、尿毒症、非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAID)内服、抗血小板薬内服時など。
3) 血管壁の脆弱性の存在
<PTの延長する代表的疾患など>
(VII、X、V、II(プロトロンビン)、I(フィブリノゲン)因子の低下で延長します)
1) ワルファリン内服中:ワルファリンはビタミンKの拮抗薬です。ビタミンK欠乏状態に伴い、VII、IX、X、IIの順番で凝固因子活性が低下します。VII因子が最も半減期が短いために、最初に低下します。そのため、ビタミンK欠乏症では、APTTよりもPTの方が先に延長します。
2) ビタミンK欠乏症:同上。
3) 肝不全(肝硬変、劇症肝炎、慢性肝炎など):凝固因子は肝臓でできルため、肝不全ではPTやAPTTが延長します。特に、半減期の短い第VII因子を反映するPTは、敏感に延長します。
4) 凝固第VII、X、V因子、プロトロンビン、フィブリノゲンの欠損症または、これらの凝固因子に対するインヒビター。
<APTTの延長する代表的疾患など>
(XII、XI、IX、VII、X、V、II、I因子の低下で延長します)
1)血友病Aまたは第VIII因子インヒビター
2)血友病Bまたは第IX因子インヒビター
3)von Willebrand病(vWD)
4)先天性第XII、XI因欠損症。または、これらの凝固因子に対するインヒビター。
5)凝固第X、V因子、プロトロンビン、フィブリノゲンの欠損症または、これらの凝固因子に対するインヒビター(この場合は、PTも延長)。
6)ループスアンチコアグラント(LA):抗リン脂質抗体症候群の診断に必要。血栓傾向となります。
7)ヘパリン投与時。
8)ワルファリン(ビタミンK拮抗薬)内服中またはビタミンK欠乏症(ただし、PTの記事も参照)
9) 肝不全 (ただし、PTの記載内容も参照)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:40
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第7回 北陸血栓止血検査研究会
<第7回 北陸血栓止血検査研究会>
日時:2018年3月17日(土)
場所:石川県地場産業振興センター 本館
特別講演
「DICの病態を再考する」
福島県立医科大学 血液内科学教授 池添隆之 先生
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北陸凝固異常研究会2018
<北陸凝固異常研究会2018>
日時:2018年3月31日 (土)15:00〜18:00
場所:ANAクラウンプラザホテル金沢
【特別講演】
「当院における自己免疫性後天性凝固因子欠乏症の診療経験」
群馬大学医学部附属病院 血液内科 小川 孔幸 先生
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