第58回呼吸器学会学術講演会:金沢大学より
第58回呼吸器学会学術講演会が、4月27日〜4月29日に大阪国際会議場/リーガロイヤルホテル大阪にて開かれました。
当施設からも多数の参加、演題発表を行いました。
最新の知見を得るとともに新たな課題も見つかりました。
来年の学会に向けてより一層がんばろうと思いました。
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皮下出血と薬物:医師国家試験
医師国家試験再現問題と解説です。
68歳の女性.
左下腿の腫脹を主訴に来院した.
3日前に転倒し左下腿を打撲した.徐々に腫脹が強くなり,心配になって受診した.
脂質異常症,高血圧症,糖尿病および心房細動で内服治療中である.
現在服用中の薬剤は,スタチン,カルシウム拮抗薬,アンジオテンシンII受容体拮抗薬,ビグアナイド薬およびワルファリンである.
左下腿後面の写真を別に示す(省略:左下腿の腫脹、皮下出血)。
この病変に関係しているのはどれか.
a スタチン
b ワルファリン
c ビグアナイド薬
d カルシウム拮抗薬
e アンジオテンシンII受容体拮抗薬
(解説)
画像から、皮下出血です。
筋肉内血腫も合併しているかも知れません。
深部静脈血栓症とは異なり、末梢までの腫脹はないです。
内服薬にワルファリンが含まれており、易出血状態にあったことがうかがわれます。
.
a スタチンは、高コレステロール血症に処方されます。
b ワルファリンは、心房細動、深部静脈血栓症、肺塞栓などに処方されます。
出血の副作用に注意が必要です。
c ビグアナイド薬は、糖尿病治療薬です。
d カルシウム拮抗薬は、高血圧治療薬です。
e アンジオテンシンII受容体拮抗薬は、高血圧治療薬です。
(ポイント)
ワルファリンの適正コントロールのために、PT-INRが用いられますが、適正コントロール内であっても、打撲などにより出血をきたすことがあります。
疾患や年齢によっても多少異なりますが、PT-INR 2〜3くらいでコントロールすることが多いです。
ワルファリンは、ビタミンKの拮抗薬であり、4つのビタミンK依存性凝固因子(半減期の短い順番に、VII、IX、X、II)を低下させます。
なお、プロテインC、プロテインSもビタミンK依存性蛋白です(国試既出)。
(正解) b
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急性前骨髄球性白血病のDIC:医師国家試験
医師国家試験再現問題と解説です。
50歳の女性.
全身の皮下出血と鼻出血とを主訴に来院した.
特に誘引なく右肩の紫斑が出現した.
その後大腿や下腿にも紫斑が出現し,今朝から鼻出血が止まらないため受診した.
5年前に乳癌に対して手術と抗癌化学療法とを受けた.
血液所見:
赤血球278万,Hb 8.8g/dL,Ht 25%,白血球700,血小板5.1万,
PT-INR 1.2(基準0.9〜1.1),APTT 30.6秒(基準対照32.2),血漿フィブリノゲン74mg/dL(基準200〜400),血清FDP 110μg/mL(基準10以下),Dダイマー9.6μg/mL(基準1.0以下).
骨髄血塗抹May-Giemsa染色標本(省略)を別に示す(アズール顆粒、アウエル小体、Faggotを有する異常細胞(芽球)が多数).
この患者に対する治療薬として適切なのはどれか.
a 抗エストロゲン薬
b 全トランス型レチノイン酸
c トラネキサム酸
d ドセタキセル
c ヘパリン
(解説)
全身性の出血症状が見られています。
特徴的な凝固異常所見と骨髄像があります。
汎血球減少症の存在から血液疾患の存在が疑われます。
骨髄像では特徴的な芽球が守られており、急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukemia:APL)(FAB分類:M3)と診断されます。
血小板数は5.1万と低値ですが、それだけでは著明な出血症状をきたすほどではありません。
出血症状をきたしている主因は、播種性血管内凝固症候群(DIC)(線溶亢進型DIC)の合併です。
a 抗エストロゲン薬は乳癌の治療に用いられますが、本例での乳癌の既往は今回のエピソードとは無関係です、
b 全トランス型レチノイン酸(all-trans retinoic acid:ATRA)は、APLの分化誘導治療薬として用いられ明日。
c DICに対してトラネキサム酸を単独で投与しますと、全身性の血栓症を誘発することがあります。特に、APLに対してATRAを投与している場合は、APLの線溶活性化が抑制されるために、トラネキサム酸は絶対禁忌です(死亡例の報告があります)。
d ドセタキセルは、乳癌、非小細胞肺癌、胃癌、卵巣癌などに用いられます。
e APLに合併したDICに対して昔はヘパリンが投与された時代もありましたたが、かえって出血を助長することもあり、現在は使用されることはあまりないです。APLに対する ATRA療法そのものに抗DIC効果が期待されます。
(正解) b
播種性血管内凝固症候群(DIC)
<概念>
1. 基礎疾患の存在
・三大疾患:急性白血病、固形癌、敗血症
・産科合併症:常位胎盤早期剥離,羊水塞栓
・大動脈瘤、膠原病(血管炎を伴う),外傷,熱傷 など。
2. 全身性&持続性の血管内における著明な凝固活性化状態(微小血栓の多発)
3. 二次線溶:ただし,その程度は症例により様々。
4. 消費性凝固障害(consumption coagulopathy):血小板や凝固因子の低下。
5. 出血症状,臓器症状 (DICの2大症状)
<診断のための検査所見>
1. 血小板数の低下:ただし造血器悪性腫瘍のようにDICとは無関係に血小板数が低下する場合にはDIC診断には用いません。
2. 血中FDPおよびD-ダイマーの上昇
3. 血中フィブリノゲンの低下
4. プロトロンビン時間(PT)の延長:進行例ではAPTTの延長もみられることがありますが、本症例のように延長しないことも多いです。
<病態把握のための検査所見>
1. アンチトロンビン (AT)の低下
2. プラスミノゲンの低下、α2プラスミンインヒビター(α2PI)の低下。
3. トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)の上昇
4. プラスミン-α2PI複合体(PIC) の上昇
<DICの病型分類>
凝固活性化と線溶活性化は平行して進行してますが,両者のバランスは基礎疾患により相当異なります。
線溶抑制型DIC
・敗血症など。
・線溶活性化が軽度のため,微小血栓が溶解されにくいです。
・出血症状<臓器症状
・TATは上昇しますが,PICの上昇は軽度です。
・線溶阻止因子であるPAI-1 は,著増します。
線溶亢進型DIC
・急性前骨髄球性白血病(APL)、大動脈瘤、前立腺癌など。
・線溶活性化が高度のため,微小血栓が溶解されやすい。
・出血症状>臓器症状
・TAT,PICともに上昇。
・線溶阻止因子であるPAI-1は,正常。もう一つの線溶阻止因子α2PI は著減。
(ポイント)
線溶亢進型DICでは、本症例のように、フィブリノゲン著減、FDP著増が特徴です。
D-ダイマーも上昇しますが、FDPほどの上昇はないために、FDPとD-ダイマーの間に乖離現象が見られます。
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免疫性血小板減少性紫斑病(ITP):医師国家試験
医師国家試験再現問題と解説です。
免疫性血小板減少性紫斑病〈ITP〉について正しいものはどれか.
a 先天性疾患である.
b 骨髄の巨核球が減少する.
c 皮下出血を起こしやすい.
d 関節内出血を起こしやすい.
e 筋肉内出血を起こしやすい.
(解説)
免疫性血小板減少性紫斑病〈ITP〉は、従来は「特発性血小板減少性紫斑病」と言われてきました。
現在は、両方の用語が使用されていますが、徐々に「免疫性血小板減少性紫斑病」の呼称の方が多くなると思います。
a ITPは後天性疾患です。
b 典型例では、骨髄の巨核球は上昇します。
c 紫斑病の名前のごとく、皮下出血は見られやすいです。点状出血も特徴的です。
d 関節内出血をきたすのは、血友病です。
e 筋肉内出血は、(先天性)血友病、後天性血友病などで見られます。
なお、(先天性)血友病では関節内出血が特徴的ですが、後天性血友病では関節内出血は稀です。
(正解) c
<免疫性血小板減少性紫斑病〈ITP〉>
【概念】
ITPは、血小板に対する自己抗体が産生され、脾での血小板の破壊が亢進し、血小板寿命は短縮し出血傾向をきたします。
小児科領域では,先行感染を伴った急性型が多いのに対して(しばしば自然治癒)、内科領域では、先行感染のない慢性型が多いです(女性に多いです)。
【症状】
点状出血、粘膜出血など。
【検査&診断】
・血小板数の低下(PT&APTTは正常)。
・他血液疾患の除外(除外診断)。特に,MDSは確実に否定。
・骨髄巨核球の増加。
・血小板結合性IgG(PAIgG)の上昇。
【治療】
必ずしも早期診断・治療が当てはまりません。
1)血小板数が数万以上では無治療で経過観察。
2)ピロリ菌の除菌療法。
3)血小板数が2-3万以下で出血があれば、副腎皮質ステロイド。
4)ステロイド無効例では,摘脾術を考慮。摘脾術に際して,免疫グロブリン大量療法を先行。
5)トロンボポエチン受容体作動薬
ITPと抗リン脂質抗体症候群(APS)の合併もあり、摘脾術時の術後血栓症に注意が必要です。
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金沢大学血液・呼吸器内科(第三内科)welcome party 2018
金沢大学血液・呼吸器内科welcome party 2018(5)
(2018年4月21日:ANAクラウンプラザホテル金沢)
1)中尾眞二教授のあいさつ & 笠原寿郎准教授の乾杯
2)先輩医師や金沢大学病院スタッフ
3)和気あいあいと
4)宴会が進んで
5)楽しく、飛躍へ
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(2018年4月21日:ANAクラウンプラザホテル金沢)
今回掲載できなかった方も大勢いらっしゃいます。ごめんなさい。
幹事さん、ごくろうさまでした。
最後は、大竹茂樹先生(大学病院理事)によるご挨拶で締めくくりました。
金沢大学血液・呼吸器内科の2018年度が始まりました。
本年度も、どうぞよろしくお願いいたします。
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2018年4月21日:ANAクラウンプラザホテル金沢にて開催されました。
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中尾眞二教授のあいさつ
笠原寿郎准教授の乾杯
今回は、新たに12名の新入局員を迎えることができました。
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血便、焼肉、血小板低下(医師国家試験)
医師国家試験の再現問題です。
10歳の女児。血便を主訴に父親と来院した。
6日前に家族と焼肉を食べに行った。
3日前から水様下痢が出現し、昨日からは血便になり激しい腹痛を自覚するようになったため受診した。
身長135cm、体重32kg。体温37.2℃ 。脈拍84/分、整。血圧120/70mmHg。
血液所見:
赤血球250万、:Hb8.2g/dL、Ht25%、自血球9,000(得状核好中球10%、分葉核好中球70%、リンパ球20%)、血小板8.0万。
末柏血塗休May―Giemsa染色標本を別に示す(省略:砕赤血球の存在)。
この患者が合併しやすいのはどれか。
a 急性腎障害
b 急性肝不全
c 潰瘍性大腸炎
d 自己免疫性溶血性貧血
e 播種性血管内凝固 (DIC)
(解説)
・「小児」、「焼肉を食した」、「血便」はポイントになっています。
・貧血、血小板数低下、末梢血液像での破砕赤血球の存在は、血栓性微小血管障害症(TMA)を想起します。
・TMAには、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、溶血性尿毒症症候群(HUS)、HELLP症候群(妊娠合併症)、造血幹細胞移植後などがあり、これらの疾患が鑑別に上がります。
・近年は、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)も話題になっていますが、まだ医師国家試験レベルではないでしょう。
・小児、焼肉、血便、血液検査(赤血球破砕像、貧血、血小板数低下)から、溶血性尿毒症症候群(HUS)と診断されます。
a 急性腎障害は、HUSの特徴の一つです。
b 急性肝不全は、HELLP症候群で見られます。
c 潰瘍性大腸炎は、本症例では血便以外には一致した所見はありません。ただし、潰瘍性大腸炎では、深部静脈血栓症を合併しやすいことは知っておきたいです。
d 自己免疫性溶血性貧血を示唆する所見はありません。
e DICの診断のためには、血小板数以外に、FDP(またはD-ダイマー)、フィブリノゲン、プロトロンビン時間などの情報が必須です。
(正答) a
(備考)
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)
<本態>
微小血管内皮障害および血小板活性化により微小な血小板血栓が多発し、血小板数低下に伴う出血傾向とともに、動揺する精神症状をきたします。
<発症機序>
von Willebrand因)切断酵素(ADAMTS13)に対する自己抗体が出現し、この酵素活性が著減。その結果、unusually large vWFが出現し血小板凝集が進行。
<五主徴>
1.血小板数減少
2.溶血性貧血(赤血球破砕像)
3.動揺する精神症状
4.腎障害
5.発熱
<検査>
・血小板数減少、赤血球破砕像(+)
・溶血性貧血の所見:間接ビリルビンの上昇、LDHの上昇、ハプトグロビンの低下。
<治療>
血漿交換、新鮮凍結血漿輸注、副腎皮質ステロイド。
濃厚血小板は禁忌。
溶血性尿毒症症候群(HUS)
<本態>
(TTPとの相違点)腎不全の合併。小児に多いです。
<発症機序>
ADAMTS13に対する自己抗体の出現はありません。
病原性大腸菌の産生するVero毒素が原因となることが多いです。
<三主徴>
1. 血小板数減少
2. 溶血性貧血(赤血球破砕像)
3. 急性腎不全。
<検査>
TTPと同じ + 腎不全の所見。
<治療>
腎不全の治療、血漿交換など。
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深部静脈血栓症、プラスミノゲン活性化抑制因子1(医師国家試験)
医師国家試験の再現問題です。
深部静脈血栓症の発症リスクとなるのはどれか.2つ選べ.
a アンチトロンビン欠乏症
b 第XIII因子欠損症
c フィブリノゲン欠乏症
d プラスミノゲン活性化抑制因子1欠損症
e プロテインS欠乏症
(解説)
a アンチトロンビンは、プロテインC、プロテインSとともに、生理的な凝固阻止因子です。
b 第XIII因子は、フィブリンを架橋結合して安定化させます。第XIII因子の著明な低下は出血症状をきたします。
c フィブリノゲンは止血の最終段階で、トロンビンの作用によりフィブリンに転換します。フィブリノゲンの低下は出血傾向となります。
d プラスミノゲン活性化抑制因子1(plasminogen activator inhibitor 1:PAI-1)は、組織プラスミノゲンアクチベーター(tissue plasminogen activator:t-PA)と1対1結合することで、線溶阻止的に作用します。
e 先手性プロテインS欠乏症(日本人では1/55人の発症頻度)が知られていますが、プロテインSは経口避妊薬、妊娠、炎症など後天的にも低下します。経口避妊薬の血栓傾向の理由として、プロテインSの低下があげられます。
(備考)
・血栓性素因は、先天性として、先天性アンチトロンビン・プロテインC・プロテインS欠損症など、後天性として抗リン脂質抗体症候群などがあります。
・深部静脈血栓症
1)罹患血管は深部静脈。上肢よりも下肢の方が、はるかに多いです。
2)原因:長期臥床、悪性腫瘍、先天性&後天性凝固異常など。
3)症状:片下肢の腫脹、疼痛。
4)肺塞栓:合併すると致命症になる場合があります。
5)治療:抗血栓療法。急性期はヘパリン類(未分画ヘパリンなど)、慢性期はワルファリンを使用。ただし、近年は、新規経口抗凝固薬(NOAC)(直接経口抗凝固薬(DOAC)とも言う)で、急性期〜慢性期の治療を通して行われることも多くなりました。
・プラスミノゲン活性化抑制因子1(plasminogen activator inhibitor 1:PAI-1)
1) 血管内皮からt-PAが産生されると、t-PAはプラスノゲンをプラスミンに転換します。
2) プラスミンが血栓(フィブリン)を分解すると、血栓の分解産物であるFDP(D-ダイマー)が形成されます。
3) PAI-1は、t-PA同様に血管内皮から産生され、t-PAと1:1結合することで、線溶を阻止します。
4) PAIが上昇した症例においては、線溶に抑制がかかり、血栓傾向となります。
5) 例えば敗血症に合併したDICにおいては、PAI-1が著増するために血栓が溶解されにくく、微小循環障害に起因する臓器障害をきたしやすいです。
(正解) a、e
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血栓、赤血球新生、鼻血(CBT)
CBTの再現問題です。
血栓ができやすいのはどれか
A. 血小板の粘着能低下
B. プラスミン活性低下
C. フィブリノゲン減少
D. 第VIII因子活性低下
E. α2プラスミンインヒビター活性低下
(解説)
血栓症になりやすい病態、出血をきたしやすい病態を、それぞれ理解しておきたいところです。
A. 血小板粘着能が低下しますと、出血しやすくなります。von Willebrand病、Bernard-Soulier症候群では、血小板粘着能が低下します。
B. プラスミン活性が低下しますと、線溶能が低下します(血栓が溶解しにくくなります)。つまり、易血栓状態になります。
C. フィブリノゲン(第I因子ということもあります)が減少すると、出血しやすくなります。
D. 第VIII因子活性が低下すると、出血しやすくなります。具体的には、血友病Aやvon Willebrand病では第VIII因子活性が低下します。
E. α2プラスミンインヒビター(α2PI)活性が低下しますと、線溶能が亢進します。止血血栓まで溶解することで出血しやすくなります。線溶亢進型DICでは、α2PI活性が低下します。
(備考)
血栓の形成には3つの要因(ウィルヒョウの三要素)が存在します。
1. 血管内皮細胞障害:喫煙、高脂血症、高血圧、糖尿病などが原因で血管内皮細胞の機能が低下します。
2. 血流の状態(鬱帯):長期臥床、大動脈瘤、心房細動(心内の血液滞留:心原性脳塞栓の原因となります)など。
3. 血液性状の変化(粘稠度の増加、線溶能低下、凝固亢進状態など):脱水、感染症(線溶阻止因子であるPAIの上昇)、先天性アンチトロンビン欠損症、先天性プロテインC欠損症、先天性プロテインS欠損症など
(正解) B
赤血球の新生を促進しないのはどれか。
A. エリスロポエチン
B. 出血
C. 迷走神経刺激
D. 高地トレーニング
E. メテノロン
(解説)
A. エリスロポエチン(Erythropoietin)は、赤血球産生を促進する造血因子の一つです。腎性貧血の治療に用いられることがあります。
B. 出血後には、赤血球の新生が盛んになります。
C. 迷走神経刺激は関係ありません。
D. 高地トレーニングなど、慢性の低酸素状態になると腎臓でのエリスロポエチン産生が亢進します。
E. 蛋白同化ステロイドの酢酸メテノロンは、再生不良性貧血の治療に用いられることがあります。
(備考)
赤血球の新生に必要な因子:エリスロポエチン(腎臓で産生)、ビタミンB12、葉酸、鉄など。
(正解) C
2歳の男児。鼻血が止まりにくいことを主訴に来院した。
膝関節に腫脹を認める。
幼児期からよく皮下出血をきたしていた。
祖父に同様のエピソードがあったという。
出血時間3分(基準2〜5)、PT12秒(基準10〜15)、APTT 50秒(基準 30〜40)。
最も考えられるのはどれか。
A. von Willebrand病
B. アレルギー性紫斑病(IgA血管炎)
C. 血小板減少性紫斑病
D. 血小板無力症
E. 血友病
F. 抗リン脂質抗体症候群
G. 再生不良性貧血
H. 全身性エリテマトーデス
I. 多発性骨髄腫
J. ビタミンK欠乏症
(解説)
出血しやすくなる病態には、以下の5つがあります。
1)血小板数の低下(骨髄での産生低下、末梢での破壊や消費、血小板の分布異常)
2)血小板機能の低下
3)凝固異常
4)過線溶状態
5)血管壁の脆弱性。
まず、本症例は出血時間が正常です。
出血時間は、血小板数の低下、血小板機能の低下、血管壁の脆弱性のいずれかで延長します。
上記の1)2)は不定されます。
次に、PTは正常ですが、APTTのみが延長しています。
XII、XI、IX、VIII因子のいずれかに問題があると考えられます。
APTTが延長する出血性疾患は、血友病A(先天性の第VIII因子活性低下)、血友病B(先天性の第IX因子活性低下)、von Willebrand病(von Willebrand因子<VWF>は第VIII因子のキャリアー蛋白であり、VWFが低下すると第VIII因子も低下)が知られています。
膝関節に腫脹がみられており関節内出血が疑われます。
幼少時から皮下出血がみられ先天性の出血性疾患が疑われます。
祖父に同様のエピソードがあったため、伴性劣性遺伝を示唆しています。
以上より、血友病Aまたは血友病Bと考えられます(上記の3)に属する出血性疾患)。
なお、von Willebrand病では、出血時間もAPTTも延長します。
von Willebrand病では、出血症状も関節内出血などの深部出血ではなく、鼻出血、過多月経などの粘膜出血がみられやすいです。
(正解) E
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出血時間延長,PT 正常,APTT 延長(CBT)
CBTの再現問題です。
出血時間は延長,PT は正常,APTT は延長を示す疾患で,低下がみられる凝固因子はどれか。
A 第I因子
B 第II因子
C 第III因子
D 第IV因子
E 第V因子
F 第VII因子
G 第VIII因子
H 第IX因子
I 第X因子
J 第XI因子
K 第XII因子
L 第XIII因子
<出血時間が延長する病態>
1) 血小板数低下:特発性血小板減少性紫斑病、急性白血病、再生不良性貧血、肝硬変など。
2) 血小板機能低下:血小板無力症(Glanzmann病)、Bernard-Soulier症候群、von Villebrand病、アスピリンなどのNSAID内服、尿毒症など。
3) 血管壁の脆弱性
(注意)血友病A&B、ビタミンK欠乏症、ワルファリン内服中などの凝固因子に関連した出血性疾患では、出血時間は正常です。
<PTが延長する病態>第VII、X、V、II、I因子のいずれかの活性が低下した場合
1) ビタミンK欠乏症、ワルファリン内服中(ワルファリンはビタミンKの拮抗薬)
2) 肝不全、肝硬変などの肝疾患
3) 先天性第VII因子欠損症 など。
<APTTが延長する病態>第XII、XI、IX、VIII、X、V、II、I因子のいずれかの活性が低下した場合
1) 血友病A&B:それぞれ、第VIII因子、IX因子の先天性欠損症
2) von Villebrand病:von Villebrand病では、von Villebrand因子(VWF)が低下しています。VWFは、第VIII因子のキャリアー蛋白でもあり、VWFが低下すると第VIII因子も低下します。
3) 先天性第XII因子欠損症、先天性第XI因子欠損症
4) ビタミンK欠乏症(重症例):軽症例では、PT延長のみのことも多いです。ビタミンK依存性凝固因子(半減期の短い順番に、VII、IX、X、II)の中で、ビタミンK欠乏で最初に低下するのは、半減期の短い第VII因子です。
5) ヘパリン投与中 など。
<本症例>
・出血時間という血小板関連検査が延長し、APTT という凝固関連検査も延長しています。
・von Villebrand病では、血小板粘着能(血小板機能)が低下するために出血時間が延長します。
・VWF低下に伴い第VIII因子活性も低下するために、APTTも延長します。
・PTは正常です。
・なお蛇足ながら、第VI因子は欠番であり存在しません。
(正解) G 第VIII因子
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免疫チェックポイント阻害薬と辺縁系脳炎
松岡寛樹大学院生の症例報告
「Nivolumab-induced Limbic Encephalitis with Anti-Hu Antibody in a Patient with Advanced Pleomorphic Carcinoma of the Lung」
が、Clinical Lung Cancer誌に採択されました。
現在、免疫チェックポイント阻害薬のひとつであるニボルマブは、既治療IV期非小細胞肺癌に対する標準治療の一つです。
今回は、ニボルマブ投与により辺縁系脳炎を発症した症例を報告しました。
免疫チェックポイント阻害薬の有害事象として辺縁系脳炎を発症する頻度は低いものの、発症した場合に重篤となるため広く周知させる必要があると考えられます。
これまでに免疫チェックポイント阻害薬による辺縁系脳炎に関する詳細は明らかではありませんでしたが、今回の症例報告では、ニボルマブ投与前から辺縁系脳炎発症後、死亡時までの画像所見や治療効果、剖検所見など臨床情報を詳細に提示しています。
また、ニボルマブ治療前と辺縁系脳炎発症後に採取された検体から傍腫瘍性神経症候群関連抗体を測定し、辺縁系脳炎発症前から抗Hu抗体が検出されました。
無症候性の抗Hu抗体陽性が免疫チェックポイント阻害薬による神経関連有害事象の発症予測因子となりうる可能性を示しました。
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