凝固と炎症のクロストーク2:血小板と血栓/ヒストン
凝固と炎症のクロストーク1:敗血症モデル より続く。
凝固と炎症のクロストーク(ヒストン関連)ー インデックス ー
関連記事:ISTH/DIC部会(SSCシンポジウム)ーインデックスー
今回紹介させていただく論文は、前回論文(Nat Med. 2009 Nov;15(11):1318-21)から続いて細胞外ヒストンの話題です。
細胞外ヒストンによるトロンビン(血栓)形成は、血小板の関与が大きい(血小板のTLR2 and 4)が関与しているという報告です。
Extracellular histones promote thrombin generation through platelet-dependent mechanisms: involvement of platelet TLR2 and 4.
Semeraro F, Ammollo CT, Morrissey JH, Dale GL, Friese P, Esmon NL, Esmon CT.
Blood. 2011 Jun 14. [Epub ahead of print]
壊死細胞からのヒストンの遊離は、細小血管における血栓形成と関連しています。ヒストンは血小板を活性化する作用があるため、血小板を介した機序である可能性があります。
著者らは、ヒストンのヒト多血小板血漿(platelet rich plasma: PRP)の向凝固活性に対する影響を検討しました。
その結果、ヒストンは、用量依存性にPRPのトロンビン形成能を亢進させました(calibrated automated thrombinographyで評価)。
この作用は、接触相のブロックの如何とは無関係でした。
凝固活性化は活性化血小板の存在を必要としましたが、血小板組織因子とは関係ありませんでした。
一方、フォスファターゼでポリリン酸塩(polyphosphate)を処理しますと、トロンビン形成量は低下しました(FXIIがブロックされたり非存在の条件であっても)。
実際、ヒストン存在下において、ポリリン酸塩はXII因子非依存性にトロンビン形成を誘導しました。
また、ヒストンは血小板凝集、P-セレクチン・フォスファチジールセリン・FV/Vaの発現、プロトロンビナーゼ活性の上昇をもたらしました。
モノクローナル抗体を用いて血小板のtoll-like receptors (TLRs) 2&4をブロックしますと、活性化血小板の比率が低下し、PRPにおけるトロンビン形成量が減弱しました。
以上、ヒストンで活性化された血小板は向凝固活性を有しトロンビン形成をきたすこと、そしてTLR2&4が重要な役割を果たしていることが明らかになりました。
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| DIC
凝固と炎症のクロストーク1:敗血症モデル
凝固と炎症のクロストーク(ヒストン関連)ー インデックス ー
関連記事:ISTH/DIC部会(SSCシンポジウム)ーインデックスー
京都で国際血栓止血学会(ISTH)が行われました。
注目すべきテーマ、話題がいくつもありましたが、その中でヒストンの話題が興味ありました。
金沢に戻って、PubMedで検索しましたら、発表内容の多くが既にインターネット上で閲覧することができましたので、少しずつ紹介させていただきたいと思います。
興味を持ったきっかけは、State-of-the-Art Lecture
Crosstalk between hemostasis and inflammation(by Dr. Esmon)です。
いわゆる「凝固と炎症のクロストーク」です。
Extracellular histones are major mediators of death in sepsis.
Xu J, Zhang X, Pelayo R, Monestier M, Ammollo CT, Semeraro F, Taylor FB, Esmon NL, Lupu F, Esmon CT.
Nat Med. 2009 Nov;15(11):1318-21.
ヒストンは、細胞内でDNAを結合させるタンパクとして知られています。このヒストンは過剰な炎症反応により細胞が壊死すると細胞外へ放出されますが、放出されたヒストンの役割は知られていませんでした。
敗血症に代表されますように、過剰な炎症反応は疾患へつながっていきます。
著者らは、敗血症における細胞外へのヒストンの遊離が、血管内皮障害、臓器障害、最終的には死に寄与していることを究明しています。このヒストンのマイナスの作用は、抗ヒストン抗体や活性化プロテインC(APC)によって制御することが可能でした。
著者らの実験結果によりますと、抗ヒストン抗体は、LPS、TNF、盲腸結紮(&穿刺)で誘発されたマウス敗血症モデルにおける死亡率を有意に低下させました。
細胞外ヒストンは、血管内皮を障害させ(in vitro)、マウスを致命症としました。
In vivoでヒストンを投与しますと、好中球遊走化、血管内皮の空胞化、肺胞内出血、大血管および小血管の血栓をきたしました。
ヒヒに対してE.coliを投与しますと、血中にヒストンが出現し、血中ヒストン濃度の上昇は腎障害を伴うことが明らかになりました。
活性化プロテインC(APC)はヒストンを分解して、ヒストンの毒性を低下させました。
ヒヒに対して、E.coliとともにAPCを投与したり、またはマウスにヒストンとともにAPCを投与しますと、死亡率は有意に低下しました。
非致死量のLPSモデルにおいてプロテインCの活性化をブロックしますと致命症になりましたが、ヒストンに対する抗体を投与することで回復させることができました。
以上、敗血症やその他の炎症疾患において、ヒストンを制御することは有効な治療戦略になる可能性があります。
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| DIC
後天性von Willebrand症候群とRituximab(リツキシマブ)
von Willebrand病と言えば、血友病とならんで有名な先天性出血性素因です。
しかし、最近は後天性von Willebrand病が話題になりやすいです。
今回紹介させていただく論文は、後天性von Willebrand症候群に対してRituximabが有効であった症例の報告です。
関連記事:
先天性血栓性素因と病態、血友病、後天性血友病、抗リン脂質抗体症候群、止血剤の種類、臨床検査からみた血栓症、血液凝固検査入門、深部静脈血栓症/肺塞栓
「後天性von Willebrand症候群及びSjögren症候群を併発し、 Rituximabが有効であった胸腺原発MALTリンパ腫」
著者名:岩渕多光子 他。
雑誌名:臨床血液 52: 210-215, 2011.
<論文の要旨>
53歳、女性。2007年、心窩部痛と背部痛にて来院しました。
胸部CT画像上、前縦隔に不均一な軟部種瘤陰影及び右肺に多発する結節を認め、拡大胸腺摘出術及び右肺部分切除を実施しました。
病理結果より胸腺原発MALTリンパ腫と診断されました。
同時期より眼内・口腔内乾燥感・持続する鼻出血が出現し、精査によりSjögren症候群及び後天性von Willebrand症候群(AVWS)と診断されました。
肺の残存病変に対しRituximabを投与したところ、病変の縮小とともにSjögren症候群及びAVWSの臨床的・血液学的検査値の軽快を認めました。
Sjögren症候群合併胸腺原発MALTリンパ腫はまれであり、かつAVWSの合併は報告がなく、貴重な症例です。
後天性von Willebrand症候群(AVWS)はこれまでに300程の報告例しかなく、まれな後天性の凝固異常症です。
診断は、既往や家族歴がないにもかかわらず認められる出血症状とvon Willebrand因子活性の低下に基づく出血時間延長とAPTT延長からなされます。
基礎疾患を合併していることも多く、リンパ増殖性疾患(48%)、慢性骨髄増殖性疾患(15%)、悪性腫瘍(5%)、自己免疫疾患(2%)、心血管系疾患(21%)などが知られています。
発症機序は基礎疾患により異なり、リンパ増殖性疾患・自己免疫疾患では抗VWF抗体による特異的抑制、GPIb受容体への結合部位の被覆などによるクリアランスの亢進、悪性腫瘍では腫瘍細胞表面受容体による特異的・非特異的VWFの吸着、慢性骨髄増殖性疾患では高分子マルチマーの蛋白分解亢進による質的異常が病因論として考えらえています。
AVWSにおけるマルチマー解析では抗原・活性ともに認めないType 3様を示すものから、本例のように質的異常であるType 2a様を示すものが知られています。
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| 出血性疾患
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)医局説明会
日時:2011年7月 14 日 (木曜) 午後 6 時
場所:血液・呼吸器内科(旧3内)医局にて
対象:研修医・医学部学生の皆さんへ
上記日程で医局・入局説明会を行います。
少しでも興味のある方は是非、ご参加下さい。
説明会にひきつづき、意見交換会も予定しています。
こちらもふるってご参加ください。
参加を予定される方は、下記にご連絡をお願いします。
血液呼吸器内科医局 076-265-2276
(担当:大倉徳幸) E-mail: nori○med3.m.kanazawa-u.ac.jp(○の部分は@です)
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| 医局内行事・研修医・専門医
血友病A患者の非中和抗体:第VIII因子活性を抑制しない
第VIII因子インヒビターと言えば、第VIII因子活性を抑制する抗体をすぐに想定しますが、第VIII因子活性を阻害しない抗体も知られています。
非中和抗体(non-neutralising antibodies:NNA)と言います。今回紹介させていただく論文はこの点を論じています。
関連記事:
先天性血栓性素因と病態、血友病、後天性血友病、抗リン脂質抗体症候群、止血剤の種類、臨床検査からみた血栓症、血液凝固検査入門、深部静脈血栓症/肺塞栓
「血友病A患者における非中和抗体の出現率とその認識部位」
著者名:Lebreton A, et al.
雑誌名:Thromb Haemost 105: 954-961, 2011.
<論文の要旨>
血友病A患者における抗第VIII因子抗体の出現は、医原性合併症として大きな問題です。
この抗体にはインヒビターと非中和抗体(non-neutralising antibodies:NNA)があります。
インヒビターは第VIII因子活性を低下させるのに対して、NNAは非機能部位を認識しています。
著者らは、インヒビターを保有していない血友病A 210症例(仏人)におけるNNAの出現率を解析し、また抗体の認識部位を検討しました。
NNAは38/210例(18.1%)でみられましたが、出現率は血友病の重症度とは無関係でした。
NNAを有していた38症例のうち、73.7%の症例では重鎖を認識する抗第VIII因子抗体が存在し、13.2%は軽鎖を認識し、13.2%は両方を認識しました。
このように、血友病Aの重症度とは無関係に、NNAの認識部位は重鎖が優勢でした。
NNAのうちBドメインを認識したのは18.4%(7/38)でした。
多変量解析の結果、NNAの出現率は、遺伝子組換え第VIII因子製剤であるか血漿由来第VIII因子製剤であるか無関係でした(19.6% vs 14.9%;P=0.53)。
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| 出血性疾患
von Willebrand病(VWF代謝亢進例)に対するデスモプレシン
von Willebrand病の一部症例では、von Willebrand因子のクリアランス亢進がVWF活性低下の原因と考えられるようになりました。
このようなタイプのvon Willebrand病に対する止血治療を論じた論文を紹介させていただきます。
関連記事:
先天性血栓性素因と病態、血友病、後天性血友病、抗リン脂質抗体症候群、止血剤の種類、臨床検査からみた血栓症、血液凝固検査入門、深部静脈血栓症/肺塞栓
「von Willebrand病(VWF代謝亢進例)に対する止血治療」
著者名:Castaman G, et al.
雑誌名:Thromb Haemost 105: 647-654, 2011.
<論文の要旨>
von Willebrand病(VWD)の一部の症例においては、von Willebrand病(VWF)のクリアランスが早まっていることがVWF活性低下の原因と考えられるようになりました。
これらの患者の出血頻度や治療法は明らかになっていません。
著者らは、VWFクリアランスが著明に亢進しているVWD60例(VWF遺伝子変異;R1205H<VWD-VI>)および23例(C1130F)を対象に検討を行いました。
71ヶ月間の観察期間中、VWD-VI65%、C1130F61%において治療が必要となりました。
治療が必要となった自然出血はC1130Fでは7.5/100人・年、R1205Hでは1.9/100人・年でした。
女性の方がより出血が多い結果でした(過多月経のため)。
生殖可能年齢のVWD-VIではわずかに3/15(20%)、C1130Fでは8/9(89%)において月経に対する治療(鉄剤、女性ホルモン製剤、トラネキサム酸)が必要でした。
ほぼ全ての抜歯、小手術、出産は、デスモプレシンで管理可能でした。
大手術ではVIII/ VWF製剤が必要でしたが、一部の症例ではデスモプレシンでも充分でした。
以上、VWD1型と同様に、VWFクリアランスが早くなるタイプのVWDにおいてもデスモプレシンは有効と考えられた。
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| 出血性疾患
ベラプロスト(プロサイリンなど)の今後
今回は、ベラプロストナトリウム(以下ベラプロスト)(商品名:プロサイリン、ドルナーなど)に関する記事です。
多少、独断と偏見になることをお許しいただき、管理人らの考えを書かせていただきたいと思います。
血栓症の最近の話題
術後の静脈血栓塞栓症(VTE)予防薬(クレキサン、アリクストラ)や播種性血管内凝固症候群(DIC)の新治療薬(リコモジュリン),さらには半世紀ぶりの経口抗凝固薬(プラザキサ)の上市など,近年の血栓症領域は話題が尽きません。
プロスタグランジンI2(PGI2)誘導体であるベラプロストナトリウム(以下ベラプロスト)(商品名:プロサイリンなど)は、慢性閉塞性動脈硬化症などに20年近い使用実績があります。ベラプロストは、血管拡張作用を合わせ持つ抗血小板薬ですが、抗炎症作用も期待されています。
血管内皮は抗血栓薬の宝庫
日本人の死因の3分の1が脳梗塞や心筋梗塞といった血栓症であることはよく知られています。現代人は出血よりも血栓症で命を落とすことの方が多いのです。
そもそも,生体には出血に対しては幾重にも止血機構が備えられている反面,血栓症に対する凝固阻止機構は少なく,線溶カスケードの増幅システムも貧弱です。血栓症は,現代に生きる人間が克服すべき重大な疾患です。
血栓形成を防ぐ上で重要な役割を果たしているのが血管内皮です。血管内皮は,抗血栓性物質の宝庫です。
現在分かっているだけでも,トロンボモジュリン,ヘパリン様物質(ヘパラン硫酸),組織プラスミノゲンアクチベータ,PGI2,一酸化窒素(NO)があり,これらによって生体は血栓形成から防御されています。
例えばPGI2は,主に血管内皮細胞から産生される生理活性物質で,生体内物質としてはもっとも強い血管拡張作用や抗血小板作用を有します。
何らかの理由で血管内皮に障害が起きダメージを受けますと,こうした物質の産生・発現に異常が生じ,易血栓傾向あるいは血栓性疾患につながると考えられます。
一方で,これらの物質は医薬品として実用化されています。PGI2誘導体の経口薬(プロサイリンなど)は慢性動脈閉塞症や原発性肺高血圧症に,注射薬は肺動脈性肺高血圧症に使われています。
経口投与可能なPGI2誘導体であるベラプロストは,血小板粘着・凝集抑制などの抗血小板作用,末梢血管拡張作用による血流改善作用に加えて,抗炎症的にも作用することが興味深い点です。
ベラプロストは,慢性動脈閉塞症などに処方されていますが,その作用プロファイルから,他疾患にも応用可能と考えられます。
ベラプロストの抗血栓・抗炎症作用
抗血栓薬の薬効を評価する際,血栓症のモデルとでも言うべき疾患が播種性血管内凝固症候群(DIC)です。DICに効果があれば,それ以外の血栓症にも奏効する訳です。
その代表格がヘパリンです。ヘパリンは、アンチトロンビン(AT)活性の促進が作用機序です。
ATには抗炎症効果も指摘されてきました。それは,ATが血管内皮のヘパリン様物質に結合しますと,内皮におけるPGI2の産生が亢進します。そして、PGI2が抗炎症効果を発揮するという訳です。
そこで私たちはPGI2誘導体であるベラプロストのDICに対する効果を検討しました1)。ラットに炎症惹起物質であるリポポリサッカライドを投与して誘発したDICモデルで,ベラプロストを投与しますと,抗血栓作用として血小板数,フィブリノゲン,TAT(トロンビン-アンチトロンビン複合体),Dダイマーの各凝血学的所見を改善しました。
加えて,抗炎症作用としてTNFやIL-6といった炎症性サイトカイン産生を大きく減少させました。
また,DICモデルに低分子量ヘパリン(LMWH)とベラプロストを併用することで,LMWH単独と比べて凝血学的所見のさらなる改善などの結果が得られています 2)。
これらの結果から,DICに対してLMWHで凝固を抑え,ベラプロストで炎症を抑える併用療法が有望と考えられました。
その他,10代から90代まで幅広い年齢層でみられる自己免疫疾患「抗リン脂質抗体症候群(APS)」にもベラプロストを応用できると考えています。
APS患者は,脳梗塞など動脈血栓症と,深部静脈血栓症(DVT)など静脈血栓症の双方のリスクを抱えています。動脈と静脈双方の血栓形成を抑えることが期待できるベラプロストは,理論的にAPSの血栓症予防に有用と考えらます。
日本人にも多いDVT
2007年と08年に,術後のVTE発症抑制に用いる注射用抗凝固薬が相次いで登場しました。合成Xa因子阻害剤フォンダパリヌクス(商品名:アリクストラ)と,LMWHのエノキサパリン(商品名:クレキサン)です。
従来,DVTは日本人には少ないと言われていましたが,膝関節全置換術(TKR)施行例の約50%に,股関節全置換術(THR)の約30%に発生するとされ 3),欧米人と変わりはありません。TKRやTHRは良性疾患の手術だけに,術後VTEの発症は訴訟のリスクにもなるため,発症抑制が重要です。
エノキサパリンは半減期が約3.2時間で,中和剤としてプロタミン硫酸塩があり,作用の最大60%を中和できます。
一方,フォンダパリヌクスは半減期が約14〜17時間と長いのが特徴で,そのため1日1回の投与で済みます。しかし,フォンダパリヌクスには有効な中和剤はなく,使用には注意を要します。
両剤の使い分けとしては,エノキサパリンは安全性を重視,フォンダパリヌクスは効果を重視するときに使いたいと思っています(おそらく異論はあると思います)。
ただどちらも,投与期間が14日間までに限られています。
入院中にこれらの薬剤を使い,VTEを発症することなく退院しても,抑制策を中止するのに強い懸念を感じることもあります。例えば凝固・線溶両者の活性化を示すFDP(フィブリン・フィブリノゲン分解産物),Dダイマーの上昇が持続している患者です。
そのような場合,今後,退院後にベラプロストでフォローするやり方も考えてよいかもしれません(今後の検討課題です)。PGI2が血管内皮におけるトロンボモジュリンの発現を上昇させるとの報告 4)もあり,ベラプロスト使用の妥当性を裏づけます。
経口抗凝固薬としてワルファリンが有名ですが,他剤との相互作用や凝固能モニタリングの必要性があります。
高齢者のDVTで,血栓はあるもののワルファリンを使うまででもない,あるいはワルファリンを使いたくない・使えない人が一定数おられます。そのような場合にもベラプロストを使用したくなる症例が少なくありません。
なお、深部静脈血栓症の対応についてですが,薬物療法以外の方法も有効です。
具体的には,弾性ストッキング着用などの血栓予防策をすべての人が日常生活で行う、そんな時代がそんなに遠くない将来にくるかも知れません。
文献
1)久保杏奈ほか:血栓止血誌16:372-377,2005
2)新谷美季ほか:日本薬学会第126年会2号,80,2006
3)肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン p55-64,2004
4)Tsutsui K,et al.:Dermatology 192:120-124,1996
関連記事:
先天性血栓性素因と病態、血友病、後天性血友病、抗リン脂質抗体症候群、止血剤の種類、臨床検査からみた血栓症、血液凝固検査入門、深部静脈血栓症/肺塞栓
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| 血栓性疾患
HIV&HCV感染の血友病と生体肝移植
HIV&HCV同時感染の血友病患者において、生体肝移植の治療成績について論じた論文を紹介させていただきます。
関連記事:
先天性血栓性素因と病態、血友病、後天性血友病、抗リン脂質抗体症候群、止血剤の種類、臨床検査からみた血栓症、血液凝固検査入門、深部静脈血栓症/肺塞栓
「HIV&HCV同時感染の血友病患者に対する生体肝移植」
著者名:Tsukada K, et al.
雑誌名:Transplantation 91: 1261-1264, 2011.
<論文の要旨>
HIVに感染した日本人血友病患者のほとんどはHCVに同時感染していますが、そのような患者に生体肝移植(Living donor liver transplantation ; LDLT)を行った場合の生存率、周術期合併症、凝固能の回復具合についてはほとんど不明です。著者らはこの点の検討を行い報告しています。
HIV(+)の血友病患者6例において、HCV関連の進行肝硬変に対して肝移植が行われました。
移植時のCD4陽性T細胞の平均は、376±227/μlでした。
肝移植1、3、5年後の生存率は、それぞれ66、66、50%でした。
血友病と関連した周術期の致命的出血はみらませんでした。
2例では、生着不全のため移植6ヶ月以内に死亡しました。
6ヶ月生存した全例において、HIV感染は充分にコントロールされました。
2例(遺伝子型2a、2+3a)ではウイルスの反応を抑制することができましたが(経過観察の最終時点まで生存)、1例(遺伝子型(a+1b)ではHCV感染症が再燃して移植4年後に非代償性肝硬変のため死亡しました。
以上、HIV&HCV同時感染の血友病患者において生体肝移植( LDLT)は安全に行うことができるものと考えられました。
また、血友病は移植成功後に臨床的には治癒状態となりました。
術後にHCVがインターフェロン&リバビリン併用療法により充分にコントロールできた場合には、良好な予後が期待できるものと考えられました。
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| 出血性疾患
ノボセブン(活性型第VII因子製剤)皮下注への展望
遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(商品名:ノボセブン)は、第VIII因子インヒビター症例の止血治療薬として保険適応となっています。
すぐれた臨床効果を発揮しますが、半減期が短く効果が持続しないのではないかとの指摘もあります。
今回紹介させていただく論文は、本薬の経静脈的投与ではなく、皮下注投与(効果持続時間が延長する期待があります)への道を開く報告です。
関連記事:
先天性血栓性素因と病態、血友病、後天性血友病、抗リン脂質抗体症候群、止血剤の種類、臨床検査からみた血栓症、血液凝固検査入門、深部静脈血栓症/肺塞栓
「遺伝子組換え活性型第VII因子製剤の皮下注の安全性および薬理動態」
著者名:Tiede A, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 9: 1191-1199, 2011.
<論文の要旨>
遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)は、インヒビター保有血友病患者における止血目的で使用されます。rFVIIaの皮下注は、血中半減期を延長させ、予防投与を安易にする期待があります。
著者らは、血友病患者に対してrFVIIaを投与した場合の安全性と薬理病態を検討しました。rFVIIa 90μg/kgの静注と、rFVIIa 45、90、180、270、360μg/kgの皮下注を比較検討しました。
血友病AまたはB 60例(各用量につき12例)が登録されました。
rFVIIaを皮下注した場合には、最高血中濃度の平均は低くなり、FVII活性の維持が延長しました(皮下注:Cmax 0.44-5.16IU/mL、半減期 12.4h、Tmax 5.6h; 静注Cmax 51.7IU/mL、半減期 2.7h、Tmax<10min)。
用量依存性は、2倍用量まではみられたが、全濃度にわたってはみられませんでした。
血栓症、重篤な副作用、注射部位の高度な反応、中和抗体の出現は、いずれもみられませんでした。
注射部位の軽度〜中等度の反応は、皮下注投与でより高頻度でした。
血友病患者に対するrFVIIaの1回皮下注投与(第I相臨床試験)は、rFVIIaに対する暴露を延長させましたが、安全性に関する懸念はないものと考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:23
| 出血性疾患
金沢大学第三内科:第28回同門会総会・第43回 開講記念会
第28回金沢大学第三内科同門会総会
第43回金沢大学第三内科開講記念会
日時:平成23年6月26日(日)午後1:00より (エクセルホテル東急)
<インデックス>
・プログラム
・新入医局員
・優秀研究賞
・鎌田洋(特別講演講師)
・懇親会
・中村忍先生と中尾教授
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| その他
血漿止血効果と血小板マイクロパーティクル(MP)
凝固因子の補充、止血目的で、新鮮凍結血漿(FFP)が用いられることは多いです。
FFPの解凍後、通常は速やかに使用されると思いますが、そうできないこともあります。
今回紹介させていただく論文は、解凍後に血漿製剤の止血効果は減弱するけれども、その理由は血小板マイクロパーティクル(MP)が減少するためと報告しています。
関連記事:
先天性血栓性素因と病態、血友病、後天性血友病、抗リン脂質抗体症候群、止血剤の種類、臨床検査からみた血栓症、血液凝固検査入門、深部静脈血栓症/肺塞栓
「保存血漿の止血効果の減弱は血小板マイクロパーティクルの減少による」
著者名:Matijevic N, et al.
雑誌名:Thromb Res 128: 35-41, 2011.
<論文の要旨>
外傷救命センターでは、止血目的に解凍血漿(thawed plasma:TP)が用いられます。
1〜6℃で保存された場合には、TPは5日間まで使用が許可されています。
しかし、保存に伴い血小板マイクロパーティクル(MP)(血漿の止血作用に重要)がどうなるか不明です。
著者らは、TP初日(FFP-0)と、5日後(FFP-5)を比較検討しました。
FFP-0においては残存細胞のほとんど(94%)は血小板でしたが、MPs 4408×103/Lも含まれました。
FFP-5ではMPは50%に低下し、向凝固活性は29%に低下しました。トロンビン形成能も54%に低下し、トロンボエラストグラフによる凝固反応も緩徐でした。
MPをろ過して除去するとトロンビン形成能は低下しましたが、MPを補充すると復活しました。
以上、FFP-0と比較してFFP-5の止血能は低下しますが、その原因としてMPが低下するためと考えられました。
解凍血漿(TP)中の血小板マイクロパーティクル(MP)の存在は、血漿製剤が止血効果を発揮するのに有効と考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:55
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TTPに対する遺伝子組換えADAMTS13製剤
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の病態に、ADAMTS13活性や抗ADAMTS13抗体が重要な役割を演じていることが明らかになるに伴い、TTPの治療薬としてのADAMTS13に期待が集まっています。
今回紹介させていただく論文は、遺伝子組換えADAMTS13の可能性を論じた報告です。
関連記事:
先天性血栓性素因と病態、血友病、後天性血友病、抗リン脂質抗体症候群、止血剤の種類、臨床検査からみた血栓症、血液凝固検査入門、深部静脈血栓症/肺塞栓
「遺伝子組換えADAMTS13はTTP患者血漿のVWF切断活性を正常化する」
著者名:Plaimauer B, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 9: 936-944, 2011.
<論文の要旨>
後天性TTPにおいてはVWF切断酵素であるADAMTS13の高度欠損がみらます(ADAMTS13に対する自己抗体が出現します)。
TTP症例における血漿交換は、この自己抗体を除去し、欠損した酵素(ADAMTS13)を補充するという意味での意義を有しています。
著者らは、TTP患者に対する遺伝子組換えADAMTS13(rADAMTS13)による治療の可能性を探るために、ADAMTS13に対するインヒビターが存在する血漿において同薬がVWF分解活性を正常化するかどうか検討しました。
TTP患者36例より血漿検体を得て、rADAMTS13を加えることでADAMTS13活性が復活するかどうか評価しました。
その結果、中和自己抗体存在下の血漿において、インヒビターの力価とVWF切断活性を回復させるために必要なrADAMTS13量には相関関係がみられました。
以上、後天性TTPに対するrADAMTS治療は、本疾患における付加的な治療法として今後検討すべき価値があるものと考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:27
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小児血友病Aの予防治療:無作偽臨床試験(ESPRIT試験)
成人血友病における予防治療の有用性は明らかになっていますが、小児における有用性は不明でした。今回紹介させていただく論文は、小児の重症血友病Aにおける予防治療の有用性について論じています。
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「小児血友病Aにおける予防治療の無作偽臨床試験(ESPRIT試験)」
著者名:Gringeri A, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 9: 700-710, 2011.
<論文の要旨>
血友病治療の大きな目標は、関節症の発症を阻止することです。
成人血友病における予防治療の有用性は明らかになっていますが、小児における有用性は不明です。
著者らは、小児の重症血友病A(FVIII<1%)に対して、予防治療または出血時治療を行い、血友病性関節症の進展や画像学的関節障害への影響を検討しました。
登録時に臨床的または画像学的関節傷害がなく、最近6ヶ月間に少なくとも1回以上の関節内出血がみられた小児重症血友病45症例(1〜7才;中央値4才)を、A群(遺伝子組換え第VIII因子製剤25IU/kgを3回/週予防投与)またはB群(出血時に25IU/kgを完全止血が得られるまで12〜24時間ごとに輸注)に分類しました。
A群は21症例、B群は19例となりました。
A群においてはB群と比較して、関節内出血は有意に少なく(0.20 vs 0.52回/患者/月;P<0.02)、X線評価による関節障害は有意に少なかったです(29% vs 74%;P<0.05)。
早期(36ヶ月以下)に予防治療が開始された場合には、関節内出血が低頻度であり、X線による所見がみられていない症例においてより有効でした。
以上、小児重症血友病Aにおいて、特に早期に開始された場合には、予防治療は、関節内出血や関節症を阻止するのに有効と考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:15
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慢性肝炎インターフェロン療法と第VIII&IX因子インヒビター
慢性C型肝炎患者に対してベク化インターフェロン&リバビリンによる抗ウイルス療法を行ったところ、第VIII&IX因子の両者に対するインヒビターが出現したという、ちょっとビックリする報告です。
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「慢性C型肝炎に対するペグ化インターフェロン&リバビリン療法に伴う第VIII&IX因子インヒビター」
著者名:Campos-de-Magalhaes M, et al.
雑誌名:Hematology 16: 80-85, 2011.
<論文の要旨>
凝固因子に対する自己抗体の出現は、きわめてまれです。しかし、一旦出現すると致命的な出血をきたすことがあります。
凝固因子に対する自己抗体は第VIIIに対するものが最も多く、他の凝固因子に対してはまれです。
第VIII&IX因子に対するインヒビターは、血友病A&Bに対して補充療法を行った場合に多いです。
著者らは、血友病ではない慢性C型肝炎患者に対してベク化インターフェロン&リバビリンによる抗ウイルス療法を行ったところ、第VIII&IX因子に対するインヒビターが出現した症例を報告しています。
第VIII&IX因子活性はともに1%未満となり、高力価の自己抗体が検出されました。
抗ウイルス療法による持続した効果が得られた後に、副腎皮質ステロイドとアザチオプリンによる免疫抑制療法が行われました。
その結果、インヒビターは消失しました。
慢性C型肝炎に対する抗ウイルス療法とインヒビター発症との関連は明らかでありませんが、凝固異常が進行するHCV感染者(特に治療と関連した血小板数低下がみられた場合)に遭遇した際に、凝固因子インヒビターの可能性を鑑別に加えるべきと考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:05
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先天性および後天性第V因子欠損症
先天性および後天性第V因子欠損症に関する総説論文を紹介させていただきます。
第V因子欠損症に関する記事
・先天性第V因子欠損症と出血傾向
・先天性第V因子欠損症における出血症状が軽症である理由
・後天性第V因子インヒビター(PT&APTT延長)
・後天性凝固第V因子インヒビター
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「先天性および後天性第V因子欠損症」
著者名:Lippi G, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 22: 160-166, 2011.
<論文の要旨>
第V因子(FV)は、肝およびおそらく巨核球において合成されます。
FVは、向凝固および抗凝固の両面において重要な役割を演じています。
FVは、向凝固としてはプロトロンビナーゼ複合体の重要なコファクターであり、抗凝固としてはFVIIIの不活化に関与しています。
F5の遺伝子変異による第V因子欠損症はまれな先天性の凝固異常であり、出血症状は、皮下出血、外傷や術後の止血困難、重症の関節内出血と、軽度〜高度まで多彩です。
FVとFVIII両者の欠損症(F5F8Dとして知られる)は劣性遺伝し(FV欠損症とFVIII欠損症の合併ではありません)、LMAN1とMCFD2遺伝子を含む変異により、FVとFVIIIの細胞内でのプロセスに欠損があります。
一般的には、F5F8Dの症例は、出血頻度や出血程度の点で、FV欠損症、FVIII欠損症より重症ということはなく、むしろ出血傾向は軽度です。
第V因子に対するインヒビター症例は、幅広い年齢層でみられ、臨床症状も種々です。
この総説論文では、先天性&後天性第V因子欠損症の病態、診断、治療法について論じています。
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重症血友病Aにおける第VIII因子インヒビター発症率
英国の重症血友病A全患者における第VIII因子インヒビター発症率の検討が、Blood誌に報告されました。
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「重症血友病Aにおける第VIII因子インヒビター発症率(英国)」
著者名:Hay CR, et al.
雑誌名:Blood 117: 6367-6370, 2011.
<論文の要旨>
著者らは、英国の重症血友病A全患者における第VIII因子インヒビター発症率を検討しました(1990年〜2009年)。
重症血友病A 2,528例のうち、315例においてインヒビターが新たに出現したと、国立血友病データベースに報告されていました(経過観察期間の中央値は12年)。
これらの患者のうち160例(51%)は、5才以上で発症していました(経過観察の中央値は6年)。インヒビターの新たな発症率は、5才未満では64.29/100治療・年、10〜49才では5.31/1000未満・年でしたが、60才以上では10.49/治療・年と上昇しました。
重症血友病Aにおける第VIII因子インヒビター発症は全生涯にわたってみられますが、発症率は二峰性になり、小児早期に最も大きなピークがあり、また高齢者にもピークがみられました。
HIVの感染があった場合には、新たなインヒビターの出現は有意に低率でした。
HIV陽性患者におけるインヒビター発症率は、HIV陰性患者における発症率の0.32倍でした。
高齢となって第VIII因子インヒビター発症した患者の転帰や、治療歴のある患者におけるインヒビター発症の他の危険因子については、今後の検討課題です。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:45
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金沢大学第三内科同門会総会・開講記念会:中村忍先生
金沢大学第三内科の同門会総会・開講記念会が行われました。
第28回金沢大学第三内科同門会総会
第43回金沢大学第三内科開講記念会
日時:平成23年6月26日(日)午後1:00より (エクセルホテル東急)
従来は土曜日に開催されてきたのですが、今年は日曜日の開催になりました。
この効果だと思いますが、従来より多くの先生方にご出席いただき、盛会になりました。
懇親会では、
中村忍先生に乾杯をしていただきました。
中村先生は、金沢大学第三内科の准教授から、奈良県立医科大学総合診療部の教授に就任された先生で、第三内科の大先輩です。
定年退職された後、2年間は奈良で過ごされた後、この4月から金沢にお戻りになられました。
管理人は、中村先生の名講義で、血液内科に大きな興味をいだくようになり、入局させていただきました。そういう意味でも、恩人の先生になります。
写真は、当科の中尾教授と中村忍先生を収めさせていただいた、貴重なショットです。
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