金沢大学第三内科「呼吸器研究グループ」紹介(2)
金沢大学第三内科「呼吸器研究グループ」紹介(1)より続く。
呼吸器内科は、専門的に実践しよう(専門呼吸器内科)とすると大変ハードな領域ですので、チーム医療が必要です。
しかし、日本呼吸器学会の調査によると、日本における専門医の数は、循環器、消化器の1/4である一方、入院患者数は循環器、消化器と同じ数であり、極めて厳しい現状にあります。
しかし、見方を変えれば、需要が多い→将来に不安がないことになります。
2009年4月〜2010年3月の1年間の論文業績は,原著16編(英文14,邦文2)と症例報告2編(英文0,邦文2)、著書・総説8編と、3年前から続いた失速と昨年のnadirから回復の兆しが見え始めてきました。
以下に、最近の主な研究成績と進行中のテ−マを紹介します。
気道疾患グループ
慢性咳嗽、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に関して基礎的・臨床的研究を継続しています。
「アトピー咳嗽の確立」と「慢性咳嗽診療の標準化」に取り組み、国内外をリードする我々のグループにとって、各々の疾患における咳嗽の発生機序の解明と治療法の開発は責務となっています。
アトピー咳嗽に関する基礎的研究は、徳田先生が学位研究「アレルギー機序による咳感受性亢進と各種免疫調整薬の影響」によってマクロライドの新作用を発見し、あっという間にPulmonary Pharmacology and Therapeuticsに採用されました(学位論文)。
咳喘息の咳嗽発生機序に関する研究(大倉先生)は順調に進んでいます。
臨床研究では、世界で初めて気管支平滑筋収縮による咳嗽反応に着目し、喘息患者では、平滑筋が収縮しても咳嗽が誘発されにくい(impaired cough response to bronchoconstriction)が、咳喘息患者では本反応が亢進していることが明らかになりつつあります。
この反応は咳喘息の基本病態につながる重要な研究対象です。
誘発喀痰の解析は、気道疾患の病態解析に重要です。徳田先生を中心に喀痰誘発における自己出力音響デバイス(ラングフルート)の有用性を検討しており、この方法が従来の高張食塩水吸入法と同等に有用であることが明らかとなりつつあります。
【関連記事】 咳嗽の診断と治療
1)ガイドライン
2)咳嗽の定義 & 性状
3)急性咳嗽
4)遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽
5)咳嗽の発症機序
6)診断フローチャート
7)咳喘息
8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息
9)副鼻腔気管支症候群(SBS)
10) 胃食道逆流症(GERD)
11)慢性咳嗽&ガイドライン
【関連記事】
慢性咳嗽の診療
非小細胞肺癌治療の最前線
肺がんに気づくサイン
【リンク】
金沢大学 血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:20
| 呼吸器内科
金沢大学第三内科「呼吸器研究グループ」紹介(1)
金沢大学第三内科(血液内科・呼吸器内科)の研究室紹介シリーズを続けたいと思います。
同門会報を出典としています。原稿執筆時点から、月日が経過していますので、現状とは既に異なっている部分もありますが、ご容赦いただければと思います。
今回は、「呼吸器研究グループ」です。
平成22年4月より、渡辺知志先生(金沢大卒3年目)(原稿執筆時点。以下同様です)、酒井珠美先生(北里大卒3年目)、山村健太先生(金沢大卒3年目)、谷まゆ子先生(金沢大卒3年目)、松岡寛樹先生(関西医科大卒2年目)の5名の先生方が、当呼吸器内科の一員に加わってくれました。
渡辺先生と酒井先生は大学にて後期研修を開始しています。
山村先生は石川県立中央病院にて、谷先生は金沢医療センターにて後期研修を開始しています。
また松岡先生は石川県立中央病院にて初期研修2年目を開始しています。
現体制は、教官として笠原講師、片山助教、大倉助教、曽根特任准教授と私がそれぞれの役割(病棟診療、外来診療、学生教育、初期研修医教育、後期研修医教育)を担いながら、気道領域(気管支喘息、慢性咳嗽、慢性閉塞性肺疾患)グループ、肺癌グループ、肺胞領域(間質性肺炎、感染性肺炎)グループの研究を遂行・指導し、大倉先生(咳喘息の研究)、徳田先生(アトピー咳嗽の研究)、高戸先生(肺線維症の研究)、酒井先生(肺癌の研究)が学位論文を完成させ、本年度より池田先生(肺癌の研究)が学位研究を開始しました。
病棟は、片山先生(病棟医長)、曽根先生、大倉先生を指導医として、さらに徳田先生、酒井(麻夫)先生、高戸先生が患者さんを受け持ちながら、ローテーションで回ってくる初期研修医を直接指導しています。
阿保先生(加登病院)、早稲田先生、高戸先生、のママさん医師には、主に外来診療、呼吸機能検査、学生の教育を担当してもらっています。
総勢15名の体制で、役割分担をしながら、何とか診療>教育>研究(本年度の研究従事者は池田先生1名のみ)をこの順番でこなしています。
【関連記事】 咳嗽の診断と治療
1)ガイドライン
2)咳嗽の定義 & 性状
3)急性咳嗽
4)遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽
5)咳嗽の発症機序
6)診断フローチャート
7)咳喘息
8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息
9)副鼻腔気管支症候群(SBS)
10) 胃食道逆流症(GERD)
11)慢性咳嗽&ガイドライン
【関連記事】
慢性咳嗽の診療
非小細胞肺癌治療の最前線
肺がんに気づくサイン
【リンク】
金沢大学 血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:11
| 呼吸器内科
金沢大学第三内科「血液・移植研究グループ」紹介(2)
金沢大学第三内科「血液・移植研究グループ」紹介(1)から続く。
研 究
血液・移植研究グループの主な研究テーマは、中尾教授のライフワークである「再生不良性貧血の病態解明」と「造血幹細胞移植による難治性血液疾患の治療」です。
学内在籍メンバーの研究内容を紹介します。
今年度から研究期間に入った大学院生の細川晃平先生は、保健学科博士課程の片桐孝和君とともに、再生不良性貧血における染色体異常の意義やHLA haplotypeのlossに関する研究を開始しました。
ママになった清木ゆう先生は、産休も早めに切り上げて研究生活に復帰しました。細胞表面上に存在する全てのGPIアンカー型蛋白のアンカー部分と特異的に結合するFLARE抗体を用いることによって微少のPNH型血球検出の精度向上を目指しています。
大畑欣也先生は臍帯血移植後のNK細胞による抗腫瘍効果に着目し、「NK細胞に対する免疫抑制剤の影響」というテーマで学位論文を仕上げ、Biol Blood Marrow Transplantation誌にアクセプトされました。
臍帯血移植では移植後早期から回復するNK細胞の抗腫瘍効果が重要と考えられています。しかし、臍帯血ミニ移植時のGVHD予防にしばしば用いられるMMFが、こうしたNK細胞の機能を弱めていることを初めて報告しました。
望月果奈子先生は「巨核球増加を伴わない血小板減少症」症例を対象とした前方視的コホート研究をすすめています。
日常臨床では、骨髄の巨核球が増加していないために特発性血小板減少性紫斑病とは診断できない血小板減少症にしばしば遭遇します。
このような患者の中に、微少のPNH型血球が検出されシクロスポリンが著効した例がありました。
こうした経験から、「巨核球増加を伴わない血小板減少症」患者の中には、PNH型血球陽性のいわば「前」再生不良性貧血といった病態の患者が含まれており、診断後早期にシクロスポリンを投与することによって血小板減少を改善させることができるのではないかと考えています。
高松博幸先生はNTT西日本金沢病院での診療に従事しながら(同門会報執筆時点)、造血におけるモエシンの機能を検討しています。
今回検討したモエシンKOマウスでは野生型マウスと比べて有意に白血球減少、赤血球減少、低体重、脾腫が認められました。
また、モエシン蛋白質を野生型マウスに免役すると、高度の白血球減少と貧血が生じました。
以上からモエシンは造血に何らかの関与があると考えています。
近藤恭夫先生は、白血病細胞で高発現しているGITRL(抑制性補助シグナル分子)がGITRと結合することによって白血病細胞内でのIDO活性を高めて抗白血病免疫を抑制することを解明しました。
山 宏人は「再生不良性における免疫病態マーカーの意義」や「シクロスポリン3時間点滴によるGVHD予防」を検証する臨床試験の治療成績をまとめています。
杉森尚美先生は、PNH型血球陽性骨髄不全患者の臨床的特徴をスコア化し、スコアの高低によってPNH型血球の有無を予想できるかどうかを検討しています。
高見昭良先生は博士研究員のLuis Espinoza先生とともに、NKG2DやIL-17、パーフォリンなどの遺伝子多型が非血液ドナーからの骨髄移植の成績に影響を及ぼすことを明らかにしました。
保健学科修士課程の中田勝也君もLuis Espinoza先生の手ほどきを受けて研究を開始しました。
日本成人白血病研究グループ(JALSG)のコアメンバーである大竹茂樹先生はJALSG AML201の試験成績を解析し、急性骨髄性白血病における寛解導入療法では通常量のイダルビシンと高用量のダウノルビシンでは差がないことをBlood誌に発表しました。
それぞれのテーマに沿った基礎研究・臨床研究を精力的に進める一方、こうした研究に一緒に取り組んでくれる仲間が増えるよう、メンバー一同リクルート活動にも力を入れています。
【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連
造血幹細胞移植入門(インデックス)
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ホームページ
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:58
| 血液内科
金沢大学第三内科「血液・移植研究グループ」紹介(1)
研究室紹介の記事をシリーズでアップしたいと思います。
出典は、金沢大学第三内科同門会報です。
同門会報が発刊されてから、月日が経過していますので、現状と合っていない部分もあるかも知れませんが、お許しいただけれだと思います。
まずは、「血液・移植研究グループ」からです。
異 動
残念ながら本年度はご紹介する新人ドクターがおりません・・・と書き出すつもりだったのですが、この原稿の提出が遅れた「おかげ」でお一人ご紹介できます。
富山大学出身の吉田(旧姓澤本)晶代先生です。この10月から研究室に加わってくれました。大学卒業後、故郷の名古屋地区で研鑽を積んでこられましたが、御結婚を機に金沢に赴任してこられました。また、4月から細胞移植学修士課程の大学院生として佐々木祐美さんが新たに加わってくれました。
今年の春(註:同門会報執筆時点ですので実際は昨年です。以下も同様の箇所がありますが、敢えて注釈をいれずに原文を尊重したいと思います)には大きな異動が2件ありました。まず、血液・移植研究グループの大黒柱であった奥村廣和先生が富山県立中央病院に転任されました。
日常臨床での難題は「奥村先生に伺ってみよう!」が私たちの合言葉でしたが、本年度からはこの手が使えなくなりました。
また、次世代のリーダーとしてベテランからも若手からも熱い期待を受けていた石山謙先生が東京へ帰郷しました。円満退社なので差し詰め東京出張所開設というところでしょうか。
学内には小谷岳春先生が助教として帰学。研修医や学生の指導にあたっています。
富山県立中央病院での研修中に入局し、大学での診療が今回初めてとなる岩城憲子先生も持ち前のバイタイリティを活かして活躍中です。
関連病院では黒川敏郎先生・杉盛千春先生が富山赤十字病院の血液内科を新たにスタートさせました。両先生の活躍ぶりは金沢にも届いています。
臨 床
病棟での血液疾患の診療は血液・移植グループと血栓・止血グループが共同で行っています。
子育て奮闘中の女性医師も病棟診療に参加しています。
時間外や休日の対応は他のスタッフが応援しています。このようなシステムを関連病院でも導入していただけないか思案中です。
金沢大学第三内科「血液・移植研究グループ」紹介(2)へ続く。
【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連
造血幹細胞移植入門(インデックス)
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ホームページ
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:46
| 血液内科
造血幹細胞移植の成績:造血幹細胞移植入門(61)
造血幹細胞移植入門(インデックス)へ
造血幹細胞移植入門:造血幹細胞移植の成績
支持療法や前処置、HLA検査法は毎年改良を重ね、造血幹細胞移植の成績は向上しています。
治療成績は患者や病気の状態により異なります。
日本造血細胞移植学会のウェブページから、最新の情報が誰でも閲覧できます。
日本造血細胞移植学会. http://www.jshct.com/. 2010.
なお、生存率には一定の誤差があり、各移植法の優劣を示すものではありません。
(おわりに)
一般に、造血幹細胞移植を受ければ、通常の化学療法に比べて、その病気が治る可能性は高まります。
しかし、重い合併症が起こり日常生活に支障が生じたり、命を落としたりする人が増える可能性があります。
同種骨髄または末梢血幹細胞移植の場合、ドナーには、造血幹細胞採取に伴う危険性や、会社や学校を休むといった不都合が生じます。
患者や家族、ドナーは、これらを担当医などから十分に説明を受け、納得した上で、治療にのぞむ必要があります。
造血幹細胞移植にたずさわる医療スタッフは、造血幹細胞移植の効果や毒性、管理法を十分理解するとともに、患者・家族の声に耳を傾け、血液難病と果敢に闘っている患者・家族を心身両面で支えられるようにありたいと思います。
【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ホームページ
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:51
| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
HLA半合致移植後再発とHLA欠失:造血幹細胞移植入門(60)
造血幹細胞移植入門(インデックス)へ
造血幹細胞移植入門:HLA半合致移植後再発におけるHLAの欠失
HLA半合致移植後再発例で、ドナー・ホスト間でシェアしていないHLAが白血病細胞から欠失することがあり、同種免疫を逃れる新機序として注目されています。
Vago L, Perna SK, Zanussi M, et al. Loss of mismatched HLA in leukemia after stem-cell transplantation. N Engl J Med. 2009;361:478-488.
Villalobos IB, Takahashi Y, Akatsuka Y, et al. Relapse of leukemia with loss of mismatched HLA due to uniparental disomy following haploidentical hematopoietic stem cell transplantation. Blood. 2010.
もしマイナー抗原に同様の欠失が生じていれば、同じドナーから移植しても同種免疫効果が得られる可能性は低いです。
再移植に初回と異なるドナーを選んでも成績に差はないとされていましたが、この議論が再燃しています。
【関連記事】
・
幼若血小板比率(IPF)/網血小板(10回シリーズ)
【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ホームページ
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:20
| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
移植後再発モニタリングの実際:造血幹細胞移植入門(59)
造血幹細胞移植入門(インデックス)へ
造血幹細胞移植入門:移植後再発モニタリングの実際
移植前に、変異遺伝子や融合遺伝子、WT1など、微小残存病変(minimal residual disease: MRD)の指標となる分子マーカーをあらかじめ決定しておきます。
移植直前のMRD解析は重要です。
特に、急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia:ALL)の場合、移植前MRDの有無は移植後再発や無病生存に影響します。
急性骨髄性白血病(acute myelogenous leukemia:AML)も、移植前WT1量と予後の関連が報告されています。
移植前MRD陽性急性白血病の場合、移植後1年を目安に毎月MRDを評価し、陽性時は免疫療法を考慮します(保険診療外)。
移植前MRD陰性例も同様の対応で良いですが、2-3か月に1回でいいかもしれません。
移植100日時点のMRD有無は、予後を大きく左右します(特にALL)。
慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia:CML)の場合、移植後のMRDモニタリングはチロシンキナーゼ阻害薬使用時に準じて行います。
骨髄腫の移植後完全寛解率は低いですので、再発モニタリングはPCR法よりフローサイトメトリー法や免疫固定法を用いることが多いです。
末梢血より骨髄を用いた方がMRD検出感度は高いですが、繰り返し検査には末梢血が向いています。
どちらが良いか、今のところコンセンサスはありません。
MRDモニタリング法は標準化されておらず、精度・再現性とも不十分です。
特に先制攻撃的免疫療法は毒性の問題があり、1回MRD陽性だけでは適応を躊躇することがあります。その場合、2-4週後の再検査を考慮します。
【関連記事】
・
幼若血小板比率(IPF)/網血小板(10回シリーズ)
【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ホームページ
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:01
| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
高血圧症の線溶能とオルメサルタン(オルメテック)
ARBに属する降圧剤オルメサルタンの、線溶能に対する影響を評価した論文を紹介させていただきます。
ARBは降圧作用のみならず、いろいろな効果が知られていますが、今回は線溶に対する影響が評価されています。
PAI-1とTMが測定されていますが、その他にも種々のマーカーを加えれば、さらに発展性のある仕事になるのではないかと思います。
「高血圧症例の線溶能に対するオルメサルタンの効果 」
著者名:Bulur S, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 22: 29−33, 2011.
<論文の要旨>
本態性高血圧症例では、線溶阻止因子であるプラスミノゲンアクチベータインヒビター(plasminogen activator inhibitor-1:PAI-1)の血中濃度が上昇しており、また血管内皮障害のマーカーである可溶性トロンボモジュリン(thrombomodulin:TM)の血中濃度が上昇しています。
また、その他のデータからも本態性高血圧では血栓形成が生じやすい過凝固状態にあることが明らかになっています。
Olmesartan medoxomil (OLM)(商品名:オルメテック)は、多くの病態動物モデルやヒトで、内皮機能の障害を抑制したり回復することが報告されています。
しかし、OLMが線溶能に及ぼす影響はまだ十分研究されていません。
著者らは、高血圧症例における血中PAI-1およびTM濃度変化を測定し、OLMの止血・線溶状態に対する効果を検討しました。
対象は、未治療の本態性高血圧患者42名(年齢48±8歳;男性25名)です。非投与の対照は設けずに、全員にOLMを6ヶ月間投与しました。
OLMは20mg/dayから開始し、適宜増量した結果、試験を通じた平均投与量は32mg/dayでした。
また、9名についてはOLMに追加してhydrochlorothiazideが併用されました。
投与6ヶ月の前後に血中PAI-1、TM濃度を測定しました。
その結果、血圧は有意に低下しました(収縮期血圧は159.5 ± 10.9から134.6 ± 12.7 mmHg;拡張期血圧は98.0 ± 6.3から83.9 ± 7.0 mmHgに低下)。
血漿中PAI-1およびTM濃度は、それぞれ有意に低下しました。
PAI:59.73 ± 41.91 → 48.60 ± 33.65 ng/mL(P = 0.001)
TM:8.09 ± 2.29 → 6.92 ± 1.42μg/L(P < 0.001)
以上、OLMの6ヶ月間投与により、本態性高血圧患者の血漿中PAI-1およびTM濃度は低下し、線溶抑制状態(および血管内皮障害)が是正されるものと考えられました。
【リンク】
血液凝固検査入門(図解シリーズ)へ
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
金沢大学血液内科・呼吸器内科HPへ
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログへ
研修医・入局者募集へ
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:12
| 血栓性疾患
中村忍先生:金沢大学第三内科の大先輩
先日、全く偶然なことに、金沢大学第三内科の大先輩である中村忍先生にお会いする機会がありました。
大変お元気で、10年間以上も経っても全くお年が止まったかのごとく、お若く拝見しました。
中村忍先生からは、管理人が学生のころに血液内科の講義を受けました。
名講義でとても分かりやすく、管理人が金沢大学第三内科に入局した大きな理由の一つになっています。
金沢の後は、奈良県立医科大学の教授に就任されました。同大学を定年退職された後は、2年間奈良に留まられたそうですが、この度4月に金沢に戻ってこられました。
今後、お会いする機会が多くなるのではないかと嬉しく思っています。
あるいは、ご専門である細胞診で中村先生のサインの入った報告書を拝見する機会が多くなるかも知れません。中村先生、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
中村先生のご許可をいただいていますので、ブログ記事にさせていただきました。
【リンク】
血液凝固検査入門(図解シリーズ)へ
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
金沢大学血液内科・呼吸器内科HPへ
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログへ
研修医・入局者募集へ
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:08
| その他
金沢大学第三内科新人歓迎会:ホテル日航金沢にて
平成23年4月16日(日)に、ホテル日航金沢において、金沢大学第三内科新人歓迎会が行われました。
例年よりも盛り上がったように感じたのは、管理人でけでしょうか。
血液凝固検査入門(図解シリーズ)へ
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
金沢大学血液内科・呼吸器内科HPへ
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログへ
研修医・入局者募集へ
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:47
| その他
兼六園の桜シーズン(番外編)
兼六園の桜シリーズを続けます。
この時期は、やはり桜に目がいってしましますが、桜以外にも興味深く鑑賞できるスポットが、いくつもあります。
番外編的な感じになるかも知れません。
金沢の冬:雪化粧の桜
雪化粧の桜:金沢
謹賀新年:金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)
【リンク】
血液凝固検査入門(図解シリーズ)へ
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
金沢大学血液内科・呼吸器内科HPへ
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログへ
研修医・入局者募集へ
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:59
| その他
金沢城と兼六園の桜のもとで。
兼六園の桜シリーズを続けます。
金沢城と桜は、やはり相性の良い組み合わせだと思います。
さて、その下ではどういうことになっているでしょうか。。。
ブルーシートによる場所の確保が始まっていました。夜にはどういうことになっているのかと想像しますと、なんとなくほのぼのします。
金沢の冬:雪化粧の桜
雪化粧の桜:金沢
謹賀新年:金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)
【リンク】
血液凝固検査入門(図解シリーズ)へ
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
金沢大学血液内科・呼吸器内科HPへ
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログへ
研修医・入局者募集へ
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:27
| その他
兼六園の桜&金沢城:金沢大学病院から歩いて数分
兼六園の桜シリーズです。
金沢城とセットで見る桜は、やはり観光客の皆様にとっても、一番の記念写真撮影スポットになっているようです。
県外からこられた金沢大学病院研修医の皆さんも、桜見はおわられたでしょうか。
大変忙しい毎日ですが、ちょっと一時、レフレッシュされては如何でしょうか。
金沢の冬:雪化粧の桜
雪化粧の桜:金沢
謹賀新年:金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)
【リンク】
血液凝固検査入門(図解シリーズ)へ
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
金沢大学血液内科・呼吸器内科HPへ
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログへ
研修医・入局者募集へ
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:05
| その他
兼六園:金沢大学病院から徒歩数分。
金沢市内の桜の画像をお届けしてまいりました。
最後は、やはり兼六園の桜でしめたいと思います(シリーズで何回かに分けてお届けしたいと思います)。
今回は、池シリーズです。
「徽軫灯籠」(ことじとうろう)はあまりにも有名かも知れません。
金沢の冬:雪化粧の桜
雪化粧の桜:金沢
謹賀新年:金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)
【リンク】
血液凝固検査入門(図解シリーズ)へ
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
金沢大学血液内科・呼吸器内科HPへ
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログへ
研修医・入局者募集へ
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:40
| その他
金沢市内の桜:兼六園以上?
金沢市内の桜と言えば、真っ先に兼六園を思い描くと思います。
しかし、実は兼六園と同等以上にため息がでるような、桜鑑賞のスポットがあります。
知る人ぞ知る、金沢市内の某病院構内の桜です。
背景の桜が満開になった状況を想像してみたいですね。満開になりましたら、是非またアップさせていただきたいと思います。
金沢の冬:雪化粧の桜
雪化粧の桜:金沢
謹賀新年:金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)
【リンク】
血液凝固検査入門(図解シリーズ)へ
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
金沢大学血液内科・呼吸器内科HPへ
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログへ
研修医・入局者募集へ
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:59
| その他
金沢大学附属病院構内の桜
金沢大学附属病院構内の桜も、満開を迎えつつあります。
冬の雪は大変でしたが、どんなに雪が降って、雪が積もっても、春は必ずくるのですね。。。
医局に入る前に、パチリしました。
金沢の冬:雪化粧の桜
雪化粧の桜:金沢
謹賀新年:金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)
【リンク】
血液凝固検査入門(図解シリーズ)へ
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
金沢大学血液内科・呼吸器内科HPへ
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログへ
研修医・入局者募集へ
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 21:01
| その他
移植後再発モニタリングの意義:造血幹細胞移植入門(58)
造血幹細胞移植入門(インデックス)へ
造血幹細胞移植入門:移植後再発モニタリングの意義
移植後再発は予防できない上、一旦再発すると治療は難しいです。
ただし、微小残存病変(minimal residual disease: MRD)で再発を発見すれば、DLIなど免疫療法の効果が得られやすいです。
MRD解析は、原則として、腫瘍細胞が有する分子マーカーのPCR法で行います(下表)。
MRDモニタリング法
方 法 |
検 出 感 度 |
染色体(細胞遺伝学的)検査 |
5% |
FISH法 |
1% |
フローサイトメトリー法 |
1% |
フローサイトメトリー法(マルチパラメーター) |
0.1% |
PCR法(キメリズム解析) |
1% |
PCR法(変異遺伝子) |
1% |
PCR法(WT1) |
0.1% |
PCR法(融合遺伝子) |
0.01% |
PCR法(VDJ・TCR塩基配列特異的) |
0.01% |
さらに、染色体検査やフローサイトメトリー法なども組み合わせて評価します。
MRD検出感度を高めるため、腫瘍細胞分画(例えばCD34陽性)に濃縮してPCR解析しても良いです。
ただし、AML1-ETO融合遺伝子など一部の遺伝子解析は、感度が高まると疑陽性が増える恐れがあるので注意します。
適切な分子マーカーがなければ、MRDモニタリングはキメリズム解析で代用しますが、再発とホスト正常血液細胞回復を区別できないのが難点です。
しかし、混合キメラでは移植片対白血病効果が弱まり再発しやすくなるので、いずれにせよその時点で再発後治療の適応が考慮されます。
ただし、再発低リスクでは、免疫療法の毒性を考慮し、ドナーキメリズムの推移を見守ることもあります。
【関連記事】
・
幼若血小板比率(IPF)/網血小板(10回シリーズ)
【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ホームページ
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:33
| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
自家造血幹細胞移植後再発:造血幹細胞移植入門(57)
造血幹細胞移植入門(インデックス)へ
造血幹細胞移植入門:再発後治療の効果3/自家造血幹細胞移植後再発
心のケア・緩和ケア
患者は、初めて病気を告知されたときより再発時のほうがより強い心理的ストレスを受けます。
したがって、患者に再発を伝える際には、家族やパートナーの同席を求める、専門家に心のケアを依頼する、段階的に伝えるなどの配慮が望ましいです。
長期生存が期待できない場合や患者の希望によっては、緩和ケアも重要な選択肢の1つです。
自家造血幹細胞移植後再発
悪性リンパ腫やMMが主な対象です。
同種移植や免疫療法(抗体療法・サイトカイン療法・養子免疫療法)、分子標的療法などが考慮されます。
今のところエビデンスは十分に蓄積されていません。
【関連記事】
・
幼若血小板比率(IPF)/網血小板(10回シリーズ)
【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ホームページ
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 22:11
| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
再発後治療の効果2:造血幹細胞移植入門(56)
造血幹細胞移植入門(インデックス)へ
造血幹細胞移植入門:再発後治療の効果2
免疫療法
DLIと
再移植のどちらを第一選択にすべきかについては、エビデンスに乏しいです。
ただし、化学療法直後にG-CSFで動員して採取した末梢血白血球を輸注するDLIと、緩和的前処置後再移植に本質的な差は少ないです。
DLI・再移植の予後良好因子は、初回移植から再発までの期間4-12か月以上、免疫療法時完全寛解・患者年齢20歳未満など、共通することが多いです。
Bosi A, Laszlo D, Labopin M, et al. Second allogeneic bone marrow transplantation in acute leukemia: results of a survey by the European Cooperative Group for Blood and Marrow Transplantation. J Clin Oncol. 2001;19:3675-3684.
Eapen M, Giralt SA, Horowitz MM, et al. Second transplant for acute and chronic leukemia relapsing after first HLA-identical sibling transplant. Bone Marrow Transplant. 2004;34:721-727.
Schmid C, Labopin M, Nagler A, et al. Donor lymphocyte infusion in the treatment of first hematological relapse after allogeneic stem-cell transplantation in adults with acute myeloid leukemia: a retrospective risk factors analysis and comparison with other strategies by the EBMT Acute Leukemia Working Party. J Clin Oncol. 2007;25:4938-4945.
Michallet M, Tanguy ML, Socie G, et al. Second allogeneic haematopoietic stem cell transplantation in relapsed acute and chronic leukaemias for patients who underwent a first allogeneic bone marrow transplantation: a survey of the Societe Francaise de Greffe de moelle (SFGM). Br J Haematol. 2000;108:400-407.
Arellano ML, Langston A, Winton E, Flowers CR, Waller EK. Treatment of relapsed acute leukemia after allogeneic transplantation: a single center experience. Biol Blood Marrow Transplant. 2007;13:116-123.
DLIは、再発時ドナー型キメリズム50%超も予後良好因子です。
Bosi A, Laszlo D, Labopin M, et al. Second allogeneic bone marrow transplantation in acute leukemia: results of a survey by the European Cooperative Group for Blood and Marrow Transplantation. J Clin Oncol. 2001;19:3675-3684.
DLIの予後良好因子を持つAMLには、DLIが妥当と思われます。
欧州血液骨髄移植グループ(European Blood Marrow Transplantation Group: EBMT)の報告によりますと、DLI時寛解または予後良好染色体の場合、2年生存率は56%と良好でした。
Schmid C, Labopin M, Nagler A, et al. Donor lymphocyte infusion in the treatment of first hematological relapse after allogeneic stem-cell transplantation in adults with acute myeloid leukemia: a retrospective risk factors analysis and comparison with other strategies by the EBMT Acute Leukemia Working Party. J Clin Oncol. 2007;25:4938-4945.
緩和的前処置を用いれば、骨髄破壊的前処置移植で懸念される高い治療関連死亡率は改善します。
Bosi A, Laszlo D, Labopin M, et al. Second allogeneic bone marrow transplantation in acute leukemia: results of a survey by the European Cooperative Group for Blood and Marrow Transplantation. J Clin Oncol. 2001;19:3675-3684.
Eapen M, Giralt SA, Horowitz MM, et al. Second transplant for acute and chronic leukemia relapsing after first HLA-identical sibling transplant. Bone Marrow Transplant. 2004;34:721-727.
Michallet M, Tanguy ML, Socie G, et al. Second allogeneic haematopoietic stem cell transplantation in relapsed acute and chronic leukaemias for patients who underwent a first allogeneic bone marrow transplantation: a survey of the Societe Francaise de Greffe de moelle (SFGM). Br J Haematol. 2000;108:400-407.
しかし、再発率の増加により相殺される可能性が高いです。
AML再発の場合、HCT-CI16が再移植の予後に影響する可能性があります。
Bornhauser M, Illmer T, Oelschlaegel U, et al. Gemtuzumab ozogamicin as part of reduced-intensity conditioning for allogeneic hematopoietic cell transplantation in patients with relapsed acute myeloid leukemia. Clin Cancer Res. 2008;14:5585-5593.
予後因子からDLIの効果が期待できず、HCT-CIが2点以下のAML再発に関しては、GOを前処置に組み入れた緩和的前処置再移植を第一選択とすべきかもしれません。
Schmid C, Labopin M, Nagler A, et al. Donor lymphocyte infusion in the treatment of first hematological relapse after allogeneic stem-cell transplantation in adults with acute myeloid leukemia: a retrospective risk factors analysis and comparison with other strategies by the EBMT Acute Leukemia Working Party. J Clin Oncol. 2007;25:4938-4945.
Bornhauser M, Illmer T, Oelschlaegel U, et al. Gemtuzumab ozogamicin as part of reduced-intensity conditioning for allogeneic hematopoietic cell transplantation in patients with relapsed acute myeloid leukemia. Clin Cancer Res. 2008;14:5585-5593.
あるいは、DLIとGOの組み合わせも有望と思われます。
Owonikoko T, Agha M, Balassanian R, Smith R, Raptis A. Gemtuzumab therapy for isolated extramedullary AML relapse following allogeneic stem-cell transplant. Nat Clin Pract Oncol. 2007;4:491-495.
なお、初回移植と異なるドナーを選んでも成績に差はみられませんでした。
Eapen M, Giralt SA, Horowitz MM, et al. Second transplant for acute and chronic leukemia relapsing after first HLA-identical sibling transplant. Bone Marrow Transplant. 2004;34:721-727.
逆に、さい帯血移植など初回移植のドナーから再移植ができない場合、別のドナーを選ぶことは可能と考えられます。
初回移植後4-5か月以内の急性白血病再発には、DLI・再移植単独の効果はほとんど期待できません。
また、再発時期を問わず、ALL血液再発にDLIはほぼ無効です。
DLI・再移植の効果が期待できない場合、サイトカイン療法や養子免疫療法・抗体療法など、より実験的な治療を検討すべきかもしれません。
Arellano ML, Langston A, Winton E, Flowers CR, Waller EK. Treatment of relapsed acute leukemia after allogeneic transplantation: a single center experience. Biol Blood Marrow Transplant. 2007;13:116-123.
Introna M, Borleri G, Conti E, et al. Repeated infusions of donor-derived cytokine-induced killer cells in patients relapsing after allogeneic stem cell transplantation: a phase I study. Haematologica. 2007;92:952-959.
Bashey A, Medina B, Corringham S, et al. CTLA4 blockade with ipilimumab to treat relapse of malignancy after allogeneic hematopoietic cell transplantation. Blood. 2008.
【関連記事】
・
幼若血小板比率(IPF)/網血小板(10回シリーズ)
【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ホームページ
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:54
| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
再発後治療の効果1:造血幹細胞移植入門(55)
造血幹細胞移植入門(インデックス)へ
造血幹細胞移植入門:再発後治療の効果1
免疫抑制療法中止
CML慢性期再発は免疫抑制療法中止のみで約50%の奏功率が期待できます。
Elmaagacli AH, Beelen DW, Schaefer UW. A retrospective single centre study of the outcome of five different therapy approaches in 48 patients with relapse of chronic myelogenous leukemia after allogeneic bone marrow transplantation. Bone Marrow Transplant. 1997;20:1045-1055.
しかし、他血液腫瘍への効果は不明です。なお、活動性GVHDを有しながら再発した場合、免疫抑制療法をすぐに中止できないことも多いです。
化学療法・放射線治療
免疫療法の有用性を最大限に引き出すため、免疫療法時に完全寛解を達成していることが望ましいです。
Bosi A, Laszlo D, Labopin M, et al. Second allogeneic bone marrow transplantation in acute leukemia: results of a survey by the European Cooperative Group for Blood and Marrow Transplantation. J Clin Oncol. 2001;19:3675-3684.
Eapen M, Giralt SA, Horowitz MM, et al. Second transplant for acute and chronic leukemia relapsing after first HLA-identical sibling transplant. Bone Marrow Transplant. 2004;34:721-727.
Schmid C, Labopin M, Nagler A, et al. Donor lymphocyte infusion in the treatment of first hematological relapse after allogeneic stem-cell transplantation in adults with acute myeloid leukemia: a retrospective risk factors analysis and comparison with other strategies by the EBMT Acute Leukemia Working Party. J Clin Oncol. 2007;25:4938-4945.
急性白血病やCML急性転化再発は、病勢が急速に進行しやすいため、早急に化学療法を行います。
Mortimer J, Blinder MA, Schulman S, et al. Relapse of acute leukemia after marrow transplantation: natural history and results of subsequent therapy. J Clin Oncol. 1989;7:50-57.
CD33陽性AML・Ph陽性ALLの場合、髄外病変に対する効果を期待して、gemtuzumab ozogamicin (GO)・dasatinibの適応を考慮します。
Bornhauser M, Illmer T, Oelschlaegel U, et al. Gemtuzumab ozogamicin as part of reduced-intensity conditioning for allogeneic hematopoietic cell transplantation in patients with relapsed acute myeloid leukemia. Clin Cancer Res. 2008;14:5585-5593.
Owonikoko T, Agha M, Balassanian R, Smith R, Raptis A. Gemtuzumab therapy for isolated extramedullary AML relapse following allogeneic stem-cell transplant. Nat Clin Pract Oncol. 2007;4:491-495.
初回移植後の髄外再発率(10-20%)を減らすため、髄外病変の既往など髄外再発の危険性が高い場合は、初回移植の前処置に組み入れるべきかもしれません。
孤立性髄外再発には放射線治療が推奨されます。
反応性は一般に良好ですが、全身性再発が続発しやすいので、化学療法の併用を考慮します。
Lee JH, Choi SJ, Lee JH, et al. Anti-leukemic effect of graft-versus-host disease on bone marrow and extramedullary relapses in acute leukemia. Haematologica. 2005;90:1380-1388.
【関連記事】
・
幼若血小板比率(IPF)/網血小板(10回シリーズ)
【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ホームページ
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:23
| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
移植後白血病再発の特徴:造血幹細胞移植入門(54)
造血幹細胞移植入門(インデックス)へ
造血幹細胞移植入門:移植後白血病再発の特徴
移植後白血病再発の特徴は3つあります。
・まず、再発時の白血病細胞は増殖能が高いです。
Lapidot T, Sirard C, Vormoor J, et al. A cell initiating human acute myeloid leukaemia after transplantation into SCID mice. Nature. 1994;367:645-648.
そのため、一定のGVL効果がみられても、それを上回る速度で進行するために無効に終わることが多いです。
・次に、移植後再発の危険因子が移植時非寛解(抗がん剤治療を繰り返している可能性が高い)・緩和的前処置(骨髄破壊的前処置が困難であった)・高齢であることが示すように、再発時の臓器予備能が低く、再発治療後重篤な臓器障害が起こりやすいです。
・さらに、再発後治療により骨髄寛解が得られても、髄外再発しやすいという特徴があります。
DLI後髄外再発は骨髄再発の約2倍起こり、髄外再発にGVM効果は期待できません。
Lee JH, Choi SJ, Lee JH, et al. Anti-leukemic effect of graft-versus-host disease on bone marrow and extramedullary relapses in acute leukemia. Haematologica. 2005;90:1380-1388.
【関連記事】
・
幼若血小板比率(IPF)/網血小板(10回シリーズ)
【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ホームページ
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:26
| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
移植後再発治療の評価:造血幹細胞移植入門(53)
造血幹細胞移植入門(インデックス)へ
造血幹細胞移植入門:移植後再発治療の評価
再発後治療成績を評価する場合、以下は念頭におく必要があります。
(1)初回移植以上の成績は期待できないこと。
(2)免疫療法を行わない場合の治療成績が極めて不良であること。
初回移植後の5年生存率 は以下の通りです。
・急性骨髄性白血病(AML)45%
・急性リンパ性白血病(ALL)45%
・成人T細胞性白血病リンパ腫(ATL)27%
・慢性骨髄性白血病(CML)58%
・非ホジキンリンパ腫(NHL)5%
・ホジキンリンパ腫(HL)64%
・骨髄異形成症候群(MDS)48%
・多発性骨髄腫(MM)50%
(日本造血細胞移植学会平成20年度全国調査報告書より)
再発後治療の成績はこれが上限となります。
免疫療法を行わない場合、移植後急性白血病再発の5年生存率は5%程度、長期生存率はほぼ0%です。
Mortimer J, Blinder MA, Schulman S, et al. Relapse of acute leukemia after marrow transplantation: natural history and results of subsequent therapy. J Clin Oncol. 1989;7:50-57.
CML慢性期再発は、DLIで初回移植と同等の治療成績が期待できます。
ただし、imatinibにより、移植適応のCMLは激減しています。
低悪性度非ホジキンリンパ腫も、CML慢性期に匹敵する成績が報告されています。
これらを除くと、免疫療法の奏功率は10-30%程度、長期生存率は10-20%です。
【関連記事】
・
幼若血小板比率(IPF)/網血小板(10回シリーズ)
【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ホームページ
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:09
| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
北陸ヘモフィリア懇話会の御案内(血友病)
第4回北陸ヘモフィリア懇話会
日時:2011年6月11日(土)14時00分〜17時00分
会場:金沢都ホテル 5F「兼六の間」
参考記事:第VIII因子インヒビター、血友病、後天性血友病
<プログラム>
14:00-14:15 製品紹介 バクスター株式会社
開会のことば
富山大学医学部 小児科 講師 金兼弘和 先生
【特別講演1】14:15-15:15
座長:富山市民病院 小児科部長 三浦正義 先生
『患者会の役割(仮)』
演者:三重大学医学部附属病院 輸血部 助教 松本剛史 先生
15:15-15:45 Coffee Break
【特別講演2】15:45-16:45
座長:金沢大学医学部附属病院 高密度無菌治療部 准教授 朝倉英策
『血友病性関節症〜在宅治療における留意点〜(仮)』
演者:東京大学医科学研究所附属病院 関節外科 講師 竹谷英之 先生
主催: バクスター株式会社 バイオサイエンス事業部
【リンク】
血液凝固検査入門(図解シリーズ)へ
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
金沢大学血液内科・呼吸器内科HPへ
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログへ
研修医・入局者募集へ
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:29
| 研究会・セミナー案内
移植後再発治療の種類:造血幹細胞移植入門(52)
造血幹細胞移植入門(インデックス)へ
造血幹細胞移植入門:移植後再発治療の種類
同種造血幹細胞移植は同種抗腫瘍効果を期待して行われますが、一定の割合で再発し、今のところ再発を防ぐ有効な方法はありません。
しかも、過去20年間再発死亡率は減っていません。
Gratwohl A, Brand R, Frassoni F, et al. Cause of death after allogeneic haematopoietic stem cell transplantation (HSCT) in early leukaemias: an EBMT analysis of lethal infectious complications and changes over calendar time. Bone Marrow Transplant. 2005;36:757-769.
したがって、再発対策は再発後治療が中心となります。
再発治療は、(1)免疫療法、(2)化学療法・放射線治療、(3)緩和ケアに大別されます(以下の表)。
再発後治療の種類と効果(長期寛解率)
1 免疫療法
・免疫抑制療法中止(0%)
・DLI(CML慢性期)(50-80%)
・DLI(AML/MDS)(10-20%)
・DLI(ALL)(0-10%)
・DLI(骨髄腫) (40-50%)
・DLI(悪性リンパ腫)(10-60%)
・再移植(5-30%)
・サイトカイン療法(0-10%)
・養子免疫療法(10-20%)
・抗体療法(0-5%)
2 化学療法・放射線治療(0-5%)
3 緩和ケア(0%)
これらを組み合わせて治療することが多いです。
チロシンキナーゼ阻害薬の効果が期待できるCML慢性期再発を除き、移植後再発の長期生存にGVL効果誘導は不可欠です。
長期生存を期待するには免疫療法は不可欠ですが、ランダム化試験で確認されたエビデンスはありません。
【関連記事】
・
幼若血小板比率(IPF)/網血小板(10回シリーズ)
【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ホームページ
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:18
| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
非血縁骨髄ドナー・HLA・重症急性GVHD:造血幹細胞移植入門(51)
造血幹細胞移植入門(インデックス)へ
造血幹細胞移植入門:HLA型が一部異なった非血縁骨髄ドナーからの移植と重症急性GVHD
日本骨髄バンクを介してHLAが一部異なったドナーから移植を受ける場合、患者とドナーのHLAの組み合わせにより、重い急性GVHDが起こりやすくなるものとそうでないものがあります。
Kawase T, Morishima Y, Matsuo K, et al. High-risk HLA allele mismatch combinations responsible for severe acute graft-versus-host disease and implication for its molecular mechanism. Blood. 2007;110:2235-2241.
重い急性GVHDが起こりやすくなるHLAの組み合わせは
「重症急性GVHDハイリスクなHLAの組み合わせ」と呼ばれます(上の表)。
【関連記事】
・
幼若血小板比率(IPF)/網血小板(10回シリーズ)
【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ホームページ
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:43
| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
地震災害とエコノミークラス症候群(肺塞栓)
関連記事;深部静脈血栓症/肺塞栓(エコノミークラス症候群):整形外科手術、地震災害
日本は、大変は地震災害にあってしまいました。
マスコミ報道や、内科専門医メーリングリストへの多数の投稿内容をみますと、医療現場でも大変なご苦労があることが分かり、ただただ事態の改善を祈るのみです。
特に、ご自身や家族の方が被災にあわれ、あるいは自分の家族の安否が分からない状態であるにもかかわらず、医療活動を懸命になさっておられる方がたくさんおられることを思う時、涙が出るとともに、心から敬服する思いです。
さて、今後は避難所においていわゆるエコノミークラス症候群(深部静脈血栓症/肺塞栓)が問題になってくることが予想されます。十分な配慮とともに、その予防がとても重要だと思います。
中越大震災の時にも、地震災害そのものではなく、エコノミークラス症候群で命をおとされた方がおられたことが大きな社会問題になりました(特に車中泊の方)。能登半島地震では、車中泊の方はほとんどおられませんでしたが、それでも1割の方で深部静脈血栓症が見つかったと聞いています。
<エコノミークラス症候群の予防のポイント>
1)下肢の運動を心掛ける。歩行できない方の場合でも、足関節の底背屈運動をこころがける。
2)脱水状態にならないように、十分に水分をとる。
3)弾性ストッキングを装着する。
4)車中泊をしない。
日本血栓止血学会の HPからも、記事をご覧いただけます。pdfファイルがあります。
被災地における肺塞栓症の予防について
【リンク】
血液凝固検査入門(図解シリーズ)へ
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
金沢大学血液内科・呼吸器内科HPへ
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログへ
研修医・入局者募集へ
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:35
| 血栓性疾患